第3話 プロ意識


「色々含めて、私は瑞稀くんと居るのが居心地いいんだよね~」


「色々って、俺はごくごく普通の男子高校生なんだが?」


 顔もとびきりイケメンではないし、成績もあまりよくない。スポーツもボチボチ。

 天野が俺といるメリットなんてどこにもないと思うんだが。


「学校の男子はさ、みんな私の事好きなわけじゃん?」


「じゃん? って言われても困るんですけど」


「実際そうでしょ?」


「まぁ、俺の周りにいる人はみんなお前のこと好きだな」


「でしょ! 私に好かれようと優しくしてきたり、DMでしつこく話掛けてきたり。あと下心丸出しの奴とかね? そうゆうの相手してるだけで疲れる」


「でも、ファンもめんどくさい人いるだろ? あれとそう変わりないんじゃないか?」


「それは仕事だからに決まってるじゃん。普段からあんなニコニコで『今日もありがとう! また来てくれると嬉しいなぁ~』なんて握手会の時に一人一人するわけないでしょ」


「ゆうてめんどくさいとか言っても、学校の人とかと話してあげてるじゃん」


「それはさ~、敵を作らない方が高校生活を円満に過ごせるし、あと、国民的アイドルが学校で素っ気なくて冷たいなんて取り上げられたら人気下がるからね」


「そんな事になったら炎上だな」


「大炎上だよ。私燃え尽きちゃう」


「考え方というか、行動が流石プロ」


「プロ意識だけは高いからね~。だからいつも気が抜けないのさ」


 自慢げな表情で腕を組む。

 やはり有名人は凄い。いつどのような時にも人に見られているという意識を絶やさず過ごしている。


 しかも、今はネット社会。

 裏の部分を盗撮され、それを拡散されたりしたら炎上どころの騒ぎでは済まなくなりそうだ。


「こうゆう色々なところを含めて、私は瑞稀くんと一緒にいるってことよ」


 服を着ながら、先程の事を繰り返す。


「俺がお前に好意を示さなかったからか?」


「好意どころか、興味すら示さかったよ? 瑞稀くん」


「興味ないというか、別に関わりがなかったからな」


「普通入学した時になにかしら話掛けてくるでしょ」


「それはお前にお近づきになりたい男子だろ?」


「学校に国民的アイドル入学したら話し掛けにいかない方がおかしいって」


「そうゆうもんなんかな」


 天井を見ながら考え込むと、


「私は瑞稀くんのそうゆう所が気に入ったの」


 天野ははにかみながらちょんと人差し指で俺の鼻をつつく。

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