8話:小さな蕾

 梓の学校復帰は結果として一週間後となった。先生たちもサポートをすることとなりながらの投稿で徐々に学校生活に慣れさせていく感じで高校に登校する方針となった。


「兄さん。大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だよ。ただ、久しぶりに外に出たからちょっと疲れただけだよ。」


「そっか。それと、私はもう授業に戻るから兄さんは気を付けて帰ってね。」


「おう。ありがとな。かなめ。」


軽い挨拶を交わしながら梓とかなめはそれぞれ別れた。




「う~ん、どうしよう。このまま学校にいるのも少しなぁ~。」


梓はうろうろと廊下を歩きながら学校を出るように足を進めていた。しかし、あまりのも怪しい動き過ぎて突如後ろから声をかけられた。


「あのっ!ちょっといいでしょうか?」


「………へっ?」


「あの、私服でウロチョロしてるんですが不審者?・・・でしょうか?」


「誰が不審者だ!!俺は、急遽学校に呼ばれただけなんだって!!」


「はぁ?そんなこと、誰が信じると思いますか?」


そこから話を聞いてもらうこともなく梓は首根っこ掴まれながらずるずると引き摺られていったのだった。




「………いや、だから。俺は大谷先生に呼ばれてここに来たまでであって。」


「でも、そんな話は聞きませんでしたよ?確かに最近休学になった竹中梓さんと面談した………みたいなことは言ってましたけど。」


 大谷先生…もとい、大谷盛夏おおたにせいか先生と梓は面談をした。しかし、ここで気づこう、梓は今女の子になっている。かつて180㎝くらいあった背も今じゃ156㎝しかないのだ。


 だからこそ、梓の目の前にいる少女、氏家わためは梓に会った先生に対して現れた少女は何者なのかに戸惑いが隠せなかった。


「あの、もしかしてですが竹中梓さんとはどこか関係がありますか?」


「………(う~ん、これはどういうべきなんだろう。本人です!!って言って通用するのか?)」


「返答はしないのですか?」


「あ、あぁ。すいません。少し考え事にふけってしまいました。」


梓は思考をしながらもわために遮られて少し戸惑った声色が生まれてしまった。それを勘づいたのかわためは首をこくりとかしげて頭に?マークを何個か浮かべていた。


「う~ん、何か少し引っかかるんですよね~。」


「っ!?」


「どこか、竹中梓さんに似た口調だしどことなく顔も似ているんですよねぇ~。」


「い、イヤ…違うんじゃないですかねぇ~?」


梓は冷や汗を垂らしながら、生徒会室から逃走を試みた。しかし、上手くいくことはなく不発に終わるどころかさらに状況を自ら悪化させる後手に回ってしまった。


追い詰められた上にソファーの上で梓はわためによって押し倒されてしまった。


「「…………………///」」


気まずい雰囲気になりながら瞳の輝きは失われずむしろ興味や好奇心が刺激されているようにも見えた。


「失礼します。かいちょ・・・う?」


「「っ!?!?!?!?」」


「え、えっと~なんて言えばいいですかね?お、お幸せに~。」


「「ちょっと待って!!誤解!!誤解だから!!!」」


学校に嘆願するような涙声の悲鳴が鳴り響いた。




 結局、梓は誤魔化しながら帰宅することに成功した後のこと。


「はぁ~。何処に行っちゃったんだろう?」


わためは放課後の生徒会室で一人、頬杖をつきながらため息を吐いた。


「梓くん~。会いたいよぉ~。」


彼女は少し涙目になりながら首にかけていたロケットペンダントを開いた。そこには幼く長い青黒髪を靡かせた少年と短髪のブロンドヘアをぼさぼさにして鼻に絆創膏をしている少女がツーショットしている写真がそこには色褪せながらも写っていた。

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