おまけ②【最期】
おまけ②【最期】
それは、斎御司と眞戸部の最後の時間である。
「眞戸部、ちょっといいか」
「はい、なんでしょう」
「念の為、言っておくが」
「なんです?」
「もし私の身に何かあった場合なんだが」
「どうしたんです?何かあるんですか?」
「いいから聞きなさい」
「はいはい」
「もし何かあったときは、私が信頼している人のもとへ異動願いを出しなさい」
「そしたら将烈さんのとこでも行きますよ」
「将烈にも何かあったときだ」
「え、もしかして、休暇とかいいつつ、やっぱりどっか調査しに行ってるんですか?なんとなくわかってましたけど。戻って来ない心算です?」
「将烈はしばらく連絡が取れないと思いなさい」
「斎御司さんまで何かあるって・・・。もしかして、これから何か起こります?」
「わからん。だからもしもの時だ」
「・・・これ、どちら様です?」
「古い友人だ。一時は、何処かの城で騎士をやっていたそうだ」
「警察の方・・・ってわけじゃなさそうですね?」
「まあな。もしくはこっちにするか?」
「こちらは?」
「一応お医者様だ」
「・・・・・・お二人とも、すぐに連絡取れるんですか?」
「すぐには取れないかもな」
「意味無いじゃないですか」
「だが、ここにいる年寄り連中より信頼できるぞ」
「鬧影さんたちがいますよ」
「奴らとて危険に晒されるかもしれんだろう」
「へー」
「ちゃんと聞きなさい」
「はーい」
「いいか。警察だけが全てじゃない。もしも生死の危険性を感じれば、こんな組織さっさと辞めて、そいつらに連絡を取りなさい」
「生死の危険性?」
「あとは、お前の判断でいい」
「・・・・・・」
「眞戸部」
「はい」
「頼んだぞ」
「はい?」
鬧影に連れられ鬧影の部屋で呆然とする眞戸部。
鬧影はお茶を淹れてテーブルに置くが、眞戸部の顔は涙でボロボロだ。
「眞戸部」
何度も呼んだが、眞戸部は返事をしない。
何処を見ているのかもわからない視線の先には、先程の映像が映し出されているのかもしれない。
しばらくそのままにしておいた鬧影だが、数日経っても眞戸部に変化はなかった。
しまいには、ブツブツと何か言いだした眞戸部に、鬧影は前髪をかきあげて近づいて行く。
パシンッ
「いい加減にしろ」
「・・・・・・」
「眞戸部、お前は斎御司さんの最後の部下だ。お前が動かなくてどうする」
「・・・・・・」
「斎御司さんの最後の姿を知っているのはお前だけなんだ。思い出せ」
「・・・・・・っ」
「大丈夫だ。俺達もいる。斎御司さんに着せられた汚名は晴らす」
「・・・・・・」
「斎御司さんのことだから、前以て何か伝えてたんじゃないか?」
「・・・・・・あ」
思い出したように、斎御司に渡された友人の連絡先が書かれた紙を取り出す。
「お前はお前の好きに動け。こっちは俺達でなんとかする」
「けど・・・」
「いいか。人にはそれぞれ出来ることとやるべきことがある。今はそれを、やるしかないんだ」
「・・・・・・」
鬧影の言葉に、眞戸部は決意する。
休暇届けを出し、斎御司からもらった連絡先へとかける。
これからどうなるかは分からないが、それでも、進むしかないと背中を押され。
何日かかけ続けると、ようやく、その人物へと繋がる。
第一声は、なんとも言えないほど不機嫌であったのは確かだ。
『・・・誰だ?』
一心~残夢編~ maria159357 @maria159753
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