第4話おまけ【和樹のこと】
剣導水
おまけ①【和樹のこと】
「なあなあ、信」
「なんだよ、亜緋人」
「和樹って、なんであんなクールなわけ?もっとテンション高い時があっても良いと思うんだけど」
「それは和樹の自由だろ」
「けどさー」
とある街に着き、信達は三人同じ部屋に泊まっていた。
信と亜緋人はすで風呂に入ってきて、テレビを見ながらだらだらしていた。
面白いのがないと、チャンネルを次々回していた信のもとに寄ってきた亜緋人が、和樹のことを話し出した。
亜緋人が言うように、和樹はあまり感情を表には出さない。
無口だし、一々突っかかるようなこともしない。
「それに、なんで一緒に風呂に入ってくれないんだ?なんで裸の付き合いが出来ないんだ?」
「知らないよ。別にいいだろ。和樹が嫌だって言うんだから、無理に一緒に入る必要なんかないだろ」
「もしかして、お腹が出てるとか」
「ないだろ」
「じゃあ、・・・小さい?」
「お前なァ、どうでもいいだろ、そんなこと。和樹の好きなようにさせてやれよ」
「えー?信は気にならないのか?」
信からしてみれば、和樹も亜緋人も変わっているのだ。
和樹は一人が好きなのだろうし、亜緋人はワイワイやるのが好きなのだと思う。
だからといって、無理矢理同じ空間にいるというのはどうなのだろうか。
そこは放任主義の信にとって、そこまで土足で入る必要はないと思っている。
だが、亜緋人は気になるようで。
「でもよー、俺見たことあんだ」
「何が」
「和樹が、村の女の子から手紙貰ってるとこ」
「ぶっ!!!」
亜緋人の言葉に、信は飲もうとしていたお茶を吐きだしてしまった。
「きったねー」
「お前のせいだろ!」
手ぬぐいで口元を拭っていると、亜緋人がニヤニヤしながら近づいてきた。
「興味ない?」
「あ?」
「手紙の内容だよ。もしかして、ラブレターかもしれないだろ?」
「そうだとしても、和樹なら捨てたんじゃないのか?」
「実はさ」
亜緋人が言うには、手紙を貰った和樹を見つけ、手紙を奪い取ったのだそうだ。
どこまで最悪な性格をしているんだ、なんて言う気力はないが。
それでも和樹は眉のひとつも動かさず、亜緋人のことなど見なかったかのように、その場を去って行ったようだ。
「どんだけ嫌われてんだ、お前・・・」
「で、その手紙がこれなんだけど」
信の話など気にせず、亜緋人は和樹から奪った手紙をひらりと出した。
「おいおい、勝手に見るつもりか?」
「なら信は見なくて良いよ。俺が勝手に一人で見るから」
そう言って、ぴりっと手紙の封を破った亜緋人は、躊躇なく手紙を読む。
「・・・・・・」
「亜緋人?どうした?」
茶化したりするのかと思っていた信だが、亜緋人が動かなくなってしまったことを不思議に思い、声をかけてみる。
その時、がらっと部屋のドアが開いて、和樹が入ってきた。
思わず信はびくっと身体を震わせてしまうが、亜緋人はまだ硬着状態だ。
「(おい亜緋人!亜緋人!)」
必死になって、亜緋人の肩を掴み、ブンブンと揺すり続けている。
無言で二人を見ている和樹の視線に、余計に居心地が悪くなったとき、亜緋人が急に立ち上がった。
ようやくいつもの亜緋人になったかと思っていると、手紙をビリビリ破いて、雄叫びをあげながら部屋を出て行った。
「?」
その様子を、和樹はただ見ていた。
「くっそ!くっそ!あんな情熱的な手紙をもらえるなんて!くっそーーーー!」
剣導水 maria159357 @maria159753
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