第2話知ってることは、知らないこと
ラグナロク参
知ってることは、知らないこと
経験はただで手に入らないものだ。
オスカー・ワイルド
第二昇【知ってることは、知らないこと】
「ほれおろち、そろそろ行くぞ」
「またー?」
「鬼達の為じゃ」
「はいはい」
鬼の為とは言いながらも、ぬらりひょんは自分の行動に少し違和感もあった。
鬼門など、今まで気にかけていた記憶などないからだ。
いや、しかしそんなことはこの際どうでも良いと、ぬらりひょんは、天狗やおろち、そして座敷わらしを連れて行くのだ。
ぬらりひょんたちが四神たちの元へ襲いかかる頃、それは彼らにも伝わっていた。
「おいおい、まじかよ」
「はっきり言って、勝てる気はしないけど、戦わなきゃダメよね」
「鳳如が起きたとき、負けましたー、じゃ済まねえだろうな」
四人は武器を手に持ち、ぬらりひょんたちを迎える準備をする。
空は黒く染まり、今にも雨が降りそうだ。
そんな中、奴らはやってきた。
「お出迎え、御苦労じゃのう」
「はっ。迎える心算はねえんだよ。お前ぇら、ここで喰いとめねぇといけねぇんでな」
「死にかけていた奴がよう言うのう」
ぬらりひょんがそう言うと、後ろにいた天狗が高い下駄でひょいっと前に出る。
そして大きなその扇子を一振りすれば、風とは言い難い、打撃のような風圧が四人に襲いかかる。
そのまま風に乗り、天狗がフッと消えたかと思うと、帝斗の前にいきなり現れ、高い下駄で蹴飛ばした。
飛ばされてしまった帝斗は、なんとか踏みとどまりながら叫ぶ。
「なんで俺なんだよ!?俺に恨みでもあんのかあの野郎!!!!」
「帝斗、早く立って戦闘準備を」
「わーってるよ、琉峯」
天狗が戦う姿なんて、この前初めて見たくらいで、実際にどんな攻撃をしてくるのかなんて知らなかった。
今の風圧でもなかなか強かったが、きっと自在に操れるのだから、もっと強い風を巻き起こすことも出来るのだろう。
こうなると、天狗相手に接近戦は難しい。
琉峯も帝斗もだが、札を使わずに戦おうとすると、どうしても接近戦が必要となる。
近づくのは難しいとしても、きっとどこかで近づくチャンスくらいあるだろうと、琉峯が植物の種を蒔いて行く。
一方、風に乗ってやってきたのは天狗だけではない。
煙桜と麗翔の前には、すでに大蛇の姿をしているおろちがいた。
煙桜はおろちの姿に慣れているからか、いつものように煙草を吸っているが、麗翔はおろちの姿を見て嫌そうにしている。
とはいっても、憐華とかいう女は、きっとおろちよりも見た目は気持ち悪かったような気がするが。
「あー、おろちって、そういえば大蛇だったもんね。この前もこんな姿してたわよね。あーあ。なんか見たくない」
「気にするな。ただの蛇だ」
「蛇にしてはでかすぎよ。だって、煙桜の針はきっと身体貫けないでしょ?」
「無理だろうな。お前の短剣だって折れるだろうな」
「弓使ったとしても、折れちゃいそうだけど、ま、やってみるしかないわね」
しかし、大蛇とは言っても動きは素早い。
一瞬でも気を抜こうものなら、顎を外して2人を丸のみ出来るだろう。
それだけはなんとしても避けたいし、消化されるなんて御免だ。
天狗とおろちの相手をしている間に、ぬらりひょんは一人、結界を作っている場所へと向かっていた。
そこは、四神たちの部下がいる場所でもあり、今は清蘭もいて、その清蘭を守るために、守護している生物たちもいる。
「・・・・・・」
ふわっと結界の近くに降り立ったぬらりひょんの前に、青龍、フェニックス、虎、亀が現れた。
―まさか、敵がお前とはな。
「・・・ワシは貴様等のことなど知らん。そこをどけ」
―それは出来ないわ。
―我等は四方を司る者だ。
「まあいい。どかぬというなら、ワシは本気で行くぞ」
ぽうっとぬらりひょんの手に光が現れると、それを青龍たちに向かって投げる。
すると、それらは分裂し、光りの也となってそれらに向かって飛んで行く。
周りの建物は次々に壊れて行くが、青龍の身体から出てきた青白い光によって包まれると、みな無事だった。
「さすがは、再生を司る怪物だな」
―・・・・・・。
「ワシの前に立ちはだかるな」
「くっそ!全然近づけねえよ!どうすんだよ琉峯!!」
「・・・・・・植物の幹を斬るほどの風となると、迂闊に近づかない方が良いんじゃ」
「・・・ああ、そうだな」
一向に天狗に近づけないでいた帝斗と琉峯は、天狗の扇子をどうにか出来ないかと思っていた。
そこで、帝斗がいきなり物影から出て行き、天狗の背後に回った。
それを見逃す天狗ではなく、琉峯の植物を移動しながら、帝斗に向けて扇子を振りかざして行く。
その時、琉峯がひょいっと指を動かすと、天狗がいるとこの植物から別の蔓が出てきて、その蔓は天狗の足に絡ませた。
それから手も固定すると、帝斗がジャンプをして扇子を持っている手を蹴飛ばした。
「よっしゃあ!!!!」
そのまま地面に向かって落ちて行った扇子を、天狗は抵抗もせずただ見ていた。
「よし!これで風は起こらねえ!!接近戦も出来るぞ!」
ここぞとばかりに、帝斗と琉峯は、蔓に捕まっている天狗のところへ一気に詰め寄った。
そして天狗に向かって攻撃をしようとしたとき、2人の後ろから何かが飛んできた。
「!!!?」
強い衝撃が襲ってきたかと思うと、それは扇子ではなく、天狗が履いていた下駄だった。
あれだけ身軽に動いていたから、軽いものかと思っていたが、今攻撃を受けて分かった。
相当思い、まるで鉛のような重さなのだと。
「ぐっ・・・」
2人は後頭部を押さえていると、今、天狗が履いていないのにも係わらず、下駄が一人でに動いている。
そして天狗の方に向かって飛んで行くと、天狗を縛っている蔓を次々に切っていった。
動けるようになった天狗の手には、再びあの扇子が戻って行ってしまった。
「天狗って、もっと弱いと思ってたの、俺だけか?琉峯」
「・・・弱いというか、強いイメージはあまり」
「だよな」
いつもは、ぬらりひょんという、絶対的な強さの影に隠れていた天狗だが、こうして戦ってみると、こうも強いとは思っていなかった。
天狗はまた扇子を振るうと、四方八方から、かまいたちのような強い風が吹き乱れ、それらは帝斗と琉峯の身体に傷をつけていく。
両腕で風避けとしようとも、それはあまりに無力だ。
「・・・!!」
しかし、この状況をなんとか打開しなければと、帝斗は琉峯に言った。
「琉峯!」
「はい」
「天狗の動きを止められるかやってみるから、その間にお前、なんとか一撃でも攻撃喰らわしてくれ!!」
「・・・わかった」
風など重力でなんとかなるものなのか。
しかし、ここはやってみなければわからないと、帝斗は札を取り出して、天狗が巻き起こしている風に直接札を貼る。
そして次々に貼って行くと、天狗がいる付近の植物にも札を貼る。
「行くぞ!!」
そして一気に効力を発揮すると、天狗の足元の植物たちは、地面へと引きずり込まれていき、無理だと思っていた風さえも、徐々に同じように地面に向かって行く。
その隙に、琉峯が回りの植物を伝って天狗に近づくと、バランスを崩した天狗の背中を狙って剣を振るう。
「!!!!」
何が起こったのかは、分からない。
ただ一つ言えることは、琉峯の攻撃は天狗には届かず、逆に琉峯が天狗に踵落としされたということだ。
「琉峯!!!」
地面に向かって叩き落とされた琉峯に近づこうとすると、その帝斗の前に、ふわっと天狗が現れた。
そして、帝斗は折り畳んだ扇子で、壁へと吹き飛ばされてしまった。
「・・・・・・」
みんなが戦っている最中、コソコソと動いている小さな影があった。
その影は、ある部屋に入って行くと、静かに扉を閉めた・・・。
「煙桜!!」
「・・・っ!」
煙桜と麗翔もまた、おろちに苦戦していた。
その巨大さだけでも不利だというのに、煙桜の武術も、麗翔の弓もなにも効かない。
さて、どうしよう。
壁に背中を凭れながら、顔から血を出している煙桜は煙草を一本口に咥えた。
火をつけてふー、と煙を吐きながらおろちを見ている。
「煙桜!」
「・・・麗翔、頼みがある」
「え?」
麗翔は、おろちの前に立っていた。
弓を準備すると、弓に自らの炎を纏い、おろちに向けて射る。
きっとまたおろちの肌の分厚さの前では無力だろうと思ったが、おろちの身体にはなぜか麗翔の弓についていた炎が引火した。
「ったく。世話の焼ける」
それは、煙桜が持っていた、マッチではなくライターに入っている油。
それをおろちの身体に塗っていたのだ。
だからといって、それほどの量ではないし、こんなもので倒せるとも思っていない。
しかし、おろちは髪を大事にしているため、きっと大蛇から一瞬でももとの姿に戻る時があると考えた。
そして、それは的中した。
「あちちちち」
バタバタと火を消していたおろちの前に、煙桜が煙草を吸いながら立つ。
もとの姿になってしまえば、武術が効く。
遠慮なしに、顔面や腕、足、脇腹などを狙って攻撃をすれば、おろちはよろよろと後ろに歩く。
今のうちに少しでも弱らせておこうとした煙桜が再びおろちに近づいたが、これがいけなかった。
「!!!!」
「煙桜!?」
急に大蛇に姿を戻したおろちに、足を尾で掴まれてしまい逆さづりになった。
このまま頭から落とされたら危険だ。
だからといって、麗翔にはそれを止めるだけの攻撃力はない。
「煩わしい攻撃ばかりしおって」
「!!!」
煙桜は、勢いよく地面に叩き落とされてしまった。
「煙桜――――!!!!」
首が折れただろうか、それとも背骨が折れただろうか。
どちらにせよ、煙桜は無事ではないだろうと思っていた。
「・・・ん?」
「はあっ・・・ちっ。お前にやられるなんざ、俺もまだまだってことだな・・・。っ、はあっ」
煙桜が落ちた場所をよく見てみると、そこは煙桜の札によってボロボロに錆びており、だから煙桜は衝撃を和らげることが出来たのだ。
麗翔も安堵したが、すぐに弓をセットしておろちを狙う。
弓を射ると、炎の鎖が現れ、それらがおろちの身体をぐるぐると巻いて行く。
しかし、それを力付くで解くと、おろちは麗翔目掛けて身を捩る。
「自分より弱い女を狙うたぁ、お前も随分と腐ったな」
「弱い奴から始末するのは鉄則じゃ」
「そうかい。だがまずは、俺との決着をつけてからにしてもらおうか」
麗翔の前に立ちはだかった煙桜は、短くなった煙草をポイッと捨てると、おろちは尾でその煙草を潰す。
一方、四神の生物たちと戦っていたぬらりひょん。
さすがの青龍たちとはいえども、ぬらりひょん相手には苦戦を強いられていた。
「これも効かぬか。頑丈な生物じゃ」
何千、もしくはもっと生きている彼らでも、ぬらりひょんの相手は容易くない。
蹴りひとつ、視線ひとつでさえ、それは明らかに敵を圧倒する力を持っている。
腕ひとつ動かせば地盤さえ動き、呼吸ひとつすれば嵐が起こり、ただそこに存在するだけで酸素さえ奪うほど。
青龍たちだからこそ、ここまで持ちこたえられているといっても過言ではない。
空からは青龍とフェニックス、地には虎と亀がぬらりひょんの動き一つ見逃すまいといるが、ぬらりひょんはふと、何かを感じ取ったかのように視線を動かしていた。
「・・・?」
天狗とおろちと戦っていた四神たちにも、異変が起こっていた。
ほんの一瞬の間に起こったのだ。
「あれ?俺、なんでこんなところに?」
「・・・・・・」
「私、あれ?ここ何処?え?なんでこんな格好してるの?」
「・・・俺ぁ、一体」
先程まで普通だったのに、急に一斉に動きを止めてしまった。
そして、なぜ此処にいるのか、目の前の男女は一体誰なのか、そしてなぜこんな格好をしているのか。
全てが分からなくなってしまっていた。
しかし、そんなこと天狗たちには関係ない。
「ちょっと待ってよ!」
「おいおい、どうなってんだ?」
「ちっ。なんだってんだよ、こりゃ」
「・・・・・・」
自分と似たような格好をしている人たちのことさえ分からない。
しかし、きっと味方なのだろうと、そんな推測だけがあった。
だからといって、先程までと同じように動けるわけでも、攻撃が出来るわけでもなかった。
「いってぇ!!なんだこれ!」
「・・・・・・」
「お前誰だ」
「私の台詞よ!!」
こんな具合に、もう戦いどころではなくなっていた。
しかし、追いうちをかけるようにして、またあいつらもやってきた。
「あらー、なんか面白いことになってるわね!!」
「あいつの仕業か?まあ、そうだろうな」
「クスクス・・・面白い」
別の3人組、というのか5人というのか、それがやってきて、もう4人は何がなんだかわからない。
とにかく逃げて逃げて逃げた。
なにしろ、なぜ自分がこんな危険な場所にいるかさえ、覚えていないのだから。
「なに、あれ・・・?」
麗翔が指を指した方向には、なにやら光る影が複数あった。
それらが近づいてくると、それはかぼちゃのお化けのようなもの、つまりはランタンカボチャだと分かった。
しかし、それが分かったところで、4人は何も出来ないのだが。
「あららー、本当に何も覚えていないのねー。可哀そうに」
「それより、今のうちに殺しておいた方がいいんじゃない?」
「そうだな。その方が手っ取り早い」
淡々と4人を殺す計画を立てている不思議な男女ら。
「憐華は誰を仕留めたいの?」
「あたしは・・・そうねぇ・・・。やっぱりこの前殺し損ねた、あの坊やかしら」
「芭光たちは?」
「俺達は・・どうする?あの男か?それとも別の奴にしておくか?」
「俺様はあの長い髪の奴が良い」
「じゃあ、わらわはあの女の子で良いのかしら?それともダンディなあの男で良いのかしら?」
「好きにしたら?余ったのは、早いもの勝ちってことにして」
「それもそうね」
勝手にどんどん話しが進んでいく中、なぜこうも狙われているのか理解出来ていない4人は、とにかくここから逃げるにはどうすれば良いのかを考えていた。
琉峯は持っている剣を、麗翔も弓を構え、煙桜は武術の格好をし、帝斗もトンファーを持って体勢だけは整えた。
それは本能なのか、それとも得意だからなのか。
何にせよ、戦わなければいけない状況に陥っていることだけは理解出来た。
勝てるかどうかも分からない相手に、4人はなんとか時間を稼いだ。
誰かが助けてくれるわけでもない、それでもやれねばならない。
「お前等、誰か知らねえが、とにかくなんとか喰いとめるぞ」
「わーってるよ。やらねぇとやられそうだからな」
「もう!なんなのよ一体!!」
「・・・・・・」
互いに背中を託し、彼らは戦う。
しかしその時、ランタンたちが悲鳴を上げながら、というか断末魔の叫びをあげながら、次々に倒れて行った。
「?誰?」
ランタンとはいえ、人間相手には巨大化して大口を開けて捕食、消化してしまうというのに。
ランタンたちによって明るくなっていたが、徐々に徐々に暗くなっていった。
それはぬらりひょんたちも気付いていて、自分達とは違う何かの存在が近くにいることを示していた。
天狗とおろちは、その姿を確認したが、誰かは知らなかった。
しかし、茅杞たちが知っているようで、驚いたように口を開けていた。
「な、なんであんたがこんなところに・・・?」
「・・・・・・」
茅杞たちの前に現れた姿は、黒い姿をしていた。
黒い服に黒いマントに黒い靴、髪の毛は輝くような銀色をしており、牙が生えている。
そして何よりも目立つのが、目が燃えるように真っ赤だということだ。
男の肩には蝙蝠がいて、茅杞たちのことをじーっと見ている。
「あんたには関係ないことよ。人間の肩を持つなんて、あんたそれでもわらわたちと同じ存在なの!?」
「・・・・・・」
「まあいいわ。邪魔だけはしないでもらえるかしら?今、良いところなの」
男は茅杞たちを一通り見たあと、その後ろにいる4人をちらっと見た。
当然、男のことなど知らない4人は、まだ敵が増えるのかと、無意識のうちに数歩後ろに下がっていた。
しかし、男は鼻で笑うと、茅杞にこう言った。
「相も変わらず、貴様等はくだらんことをしているのだな」
「な、なんですって!?」
男と茅杞たちの会話に、なんとなくだが、それほど仲良くないことを感じた4人は、ただただ自分達に攻撃がこないことを願うのだった。
男はすうっと茅杞たちの前に下りてくるのかと思うと、地面よりも少し高い場所でふわふわと浮いていた。
「あんたに何がわかるのよ!!」
「・・・要領を得んな」
「わらわたちがしていることを咎めるなんて、あんたにはそんな資格ないわ!あんたの力をもってすれば、人間なんて簡単にいなくなるのに・・・!!どうして人間の味方をするのよ!?」
茅杞の言葉に、男は呆れたようにため息を吐く。
小指で耳を軽くいじっていると、そこにぬらりひょんまでもがやってきた。
面識があるのかは知らないが、男はぬらりよんを見ても平然としていた。
「ふん。揃いも揃って、大層な顔ぶれだな。だが、ここは俺の顔に免じて、互いに引いてもらおうか」
「・・・あんた、何言ってるの?」
「聞こえなかったのか。貴様は昔からおつむが弱いな」
「なんですって・・・!?」
「落ち着いて、茅杞」
男に襲いかかろうとしていた茅杞を憐華が止めると、それと同時に、芭光が男に向かって強烈な光を出した。
芭光の光りは主に正面にしか届かないため、後ろにいれば、眩しいがそれほどではない。
正面からその強い光を受けてしまった男だったが、芭光が光を止めて様子を見てみると、男はマントで顔を覆っていた。
漆黒に包まれたそのマントの向こうから覗いた赤い目に、芭光は思わず怯む。
しかし、そこで芭氷が男の周りに氷を纏わせ、男を逃がさないようにする。
そして芭陰が男の身体を闇で包む。
「しばらくは出て来られないだろう。茅杞、今のうちにあれを炎で・・・」
ピシピシ、と芭陰の作った闇に罅が入ると、氷は次々に蒸気をあげながら溶けて行き、次の瞬間には男が芭光たちの前にいた。
「!!!」
「その程度で、俺に勝てると思うな」
男は芭光の顔に自分の掌を置いて鷲掴みすると、その横で芭氷が男の腕を凍らせる。
しかし、男はその氷さえ割ってしまうと、腕を大きく振りかぶって、芭光たちを投げつけた。
ガラガラと音を立てて吹き飛ばされた芭光たちを見て、茅杞が妖弧の姿になると、男の周りを見えない速さで動いて威嚇する。
「・・・・・・」
男はその中心で一度目を瞑ると、しばらくしてゆっくり開ける。
茅杞が男に向かって口を開けると、そこからまず毒の霧が出てくる。
その毒の霧が男の周りを取り囲むと、続いて毒の代わりに炎が出てきて、毒で逃げ場を失った男の身体を焼こうとする。
「ふふ・・・ふふふふふ。毒ならあんたも動けないでしょう?」
クスクスと笑いながら、男の亡きがらでも拾おうかと歩みよった茅杞。
その時、ぐわっと毒と炎の中から伸びてきた腕に首を思い切り掴まれてしまい、そのまま宙に浮いた。
なぜ宙に浮いたかと言うと、それは男が浮いているからだろう。
「なっ・・・なんで!?」
「・・・貴様等は無能だな。確かに、俺は毒に対してあまり強くない体質だったかもしれないが、貴様くらいの毒ならば、なんの心配もない」
「うっ・・・裏切り者おおおお!!!」
「好きなようにほざいてろ」
そのまま男が茅杞を上に向けて放り投げ、それと同時に男も上昇して茅杞の身体を地面に叩き落とそうとしたのだが、その時、憐華が茅杞をキャッチした。
芭光たちも尾に巻きつけると、憐華は悔しそうな顔を男に見せる。
「覚えておけ!」
「・・・覚えておくだけの価値があればな」
そのまま去って行った茅杞たちを見送ると、男はぬらりひょんたちへと視線を向けた。
またここで戦うのかと思っていると、まずさきに動いたのは意外にも天狗だった。
身軽に動きながら風を起こすが、男はそこに立ったまま、ゆっくりと片腕を空に向かって伸ばす。
すると、天狗の起こした風に反するようにして、別の風が起こり、天狗の風が相殺された。
それに乗っかるようにして、おろちも男に攻撃をしようとするが、ぬらりひょんに止められてしまった。
きっと彼らが本気で戦えば、ここはあっという間に戦場と化すのだろうが、しばらく男と対峙していたぬらりひょんたちは、静かに去って行った。
4人はふうと息を吐き、麗翔に至っては腰を抜かしてしまった。
男は4人のもとに来ると、ぽいっと何かを放り投げてきた。
「あ?」
「誰だ・・・?」
そこには、身体を縛られた状態の、4人の記憶からは消えてしまてっている1人の男がいた。
いつの間に捕まえたのかは分からないが、とにかく、そこに縛られていた。
4人は互いの顔を見合わせていると、男はその捕まっている男の後頭部をがしっと捉えると、1人1人の額と男の額をくっつけていった。
すると不思議なことに、今まで忘れてしまっていた記憶が蘇ってきた。
「あれ・・・?」
「どうなってるの?なんで忘れてたの?」
「なんか、変な感じだな」
「・・・・・・」
男が連れていた男は、記憶がないはずの丱椥だった。
その丱椥の目に目隠しの布を巻くと、男はどこか部屋に案内しろと言ってきた。
初めて会うその男は、ズカズカと部屋に入ると、丱椥を放り投げた。
「えっと、何がどうなってるのか」
「てか、あんた誰だ?」
誰も使っていないその部屋に入ると、男は何の躊躇もなくベッドに腰を下ろすと、足を組んだ。
「ワインはないのか」
「ワイン・・・?酒しかねぇけど」
「なら、トマトジュースはないのか」
「それこそねぇよ」
「まったく。客人をもてなす準備もしていないとはな」
「あんた客人じゃねえよな。客人ってのはな、もっとこう、遠慮するものなんだよ」
それは良いとして、とにかく、状況を飲みこもうと思っても、どうして自分達の記憶が無くなってしまっていたのか、それが分からない。
目の前の男は知っているようだが、そもそも何者なのか。
すると、琉峯が男に問いかけた。
「どちら様ですか?」
琉峯のその質問に、男はこう答えた。
「俺はグラドム・シャルル四世だ」
「えっと、じゃあ、丱椥とはどういう関係?何か知ってるのか?」
続いて帝斗が聞いてみると、シャルルは欠伸をしながら答えた。
「この男は、記憶を操れるんだ。まあ、それによって自分の記憶さえ曖昧になってしまっているのだがな」
「ああ、それでか。でも、どうやって俺達の記憶なんか・・・?」
「この男が人の記憶を奪う時、合計10秒以上目を合わせること、それから、身体の一部に触れることが絶対条件だ。会話をしているときにふと目を合わせる、ソレを繰り返せば簡単なことだ」
「でも、身体の一部に触れるなんて」
「洋服ないし髪の毛一本であっても可能だ。おおかた、記憶が無いからといって、大丈夫かと声をかけながらでも触れてしまったんだろうな」
思い当たることがあるのか、麗翔や琉峯は黙ってしまった。
帝斗にしても煙桜にしても、きっと気付かないうちに触れられてしまったのだろう。
それで記憶が操作されてしまっていたなんて、恐ろしいことだ。
「あいつらも、同じだ」
「あいつらって・・・ぬらりひょんたちか!?やっぱり、あいつらもか!?突然おかしくなったもんな!!!」
丱椥によって、4人のことだけじゃなく、きっと鳳如や清蘭とも会ったことさえ忘れてしまっているのだろう。
人間を憎み、鬼門を狙っている鬼たち同様、その頃の記憶で留まっていると考えた方が良いだろう。
「でも、さっきみたいにおでこくっつければ、みんな戻るってことでしょ?」
「まあな」
「なら、なんとかなるんじゃない!?」
「一度記憶を取り戻せば、また記憶を操作するには、さっきの条件をまた満たさねばならない。だから、目隠しさえしておけばとりあえずは大丈夫だ」
なるほどなー、と納得していた4人だが、ふと、煙草を吸い始めた煙桜がシャルルに尋ねた。
「あんたも相当強いようだが、あんたは一体何者だ?」
「・・・・・・」
茅杞たちのことも簡単に片づけていたし、ぬらりひょんは分からないが、天狗の攻撃を粉砕するなど、そう易々と出来るとは思えない。
なにより、ふと現れたその男がなぜ自分たちを守ってくれたのか。
「天狗が本気でかかってくれば、俺とてどうなっていたかは分からない。まあ、俺も強いことに変わりないがな」
すごい自信家なんだな、ということは分かった。
「東洋のぬらりひょん、西洋の吸血鬼。まあ、そう言われていた時代もあったがな」
「吸血鬼・・・。あんた、吸血鬼か。だからそんな恰好なのか。初めて見た」
「吸血鬼って目赤いの?」
「知らない」
この辺りではあまり見ることのないその姿に、麗翔は興味津津だった。
名前は知っていたが、もっと怖い顔をしていると思っていたからか、こんなに普通なというか、男前だとは。
「東洋ではかつてより、ぬらりひょんが総大将として名を馳せてきた。しかし、牛鬼や鵺、色んな者が世代交代を求めてきたのもまた事実」
「そうなのか・・・」
「西洋でも、吸血鬼は最強と言われてきたが、弱点もまたあった」
「ニンニクとかだろ?陽の光に十字架、それからなんだっけ」
どんなものにも弱点は存在しているが、その弱点をついて、倒そうとするものも少なくはなかった。
「まあ、俺の場合はどれも平気だがな」
「それじゃ吸血鬼って言わねえよ。なんか思ってたのと違う」
まあそんなわけで、ぬらりひょんとは代々名を連ねてきた仲がだそうだ。
それを今のぬらりひょんは覚えているかは不明だが、記憶が戻ればきっとこのシャルルという男のことも分かるのだろう。
「あ。そういや、なんでここに来たんだ?何か用があって来たのか?」
シャルルがなぜこのタイミングで現れたのか、それが気になった帝斗が聞くと、シャルルはダルそうに首の後ろを摩った。
その時蝙蝠が来て、シャルルの膝の上に乗ると、シャルルは少し笑った。
はっきりいって、可愛いとは言い難いが、シャルルからしてみれば可愛いらしい。
「俺達の記憶を戻したのにも、何か意味があるのか?」
「・・・意味などない」
「?」
シャルルは足を組みかえると、蝙蝠を自分の指に乗せて遊んだ。
「何か理由をつけるとすれば、まあ、鳳如には借りがあってな」
「鳳如に?借り?」
2本目の煙草に入った煙桜は、マッチで火をつける。
少し窓を開けて換気をすると、外からの冷たい風が髪を揺らし、頬を撫でて行く。
「鬼が鬼門を狙うのは、人間の世界に入り込んで悪さをする為。まあ、それは鬼だけではない。人間のことを快く思わない者たちは、大勢いるんだ」
「・・・それは、さっきの変な狐とか蛇とか顔3個ある奴等のこと?」
変な狐などという表現を使った琉峯に対し、シャルルは頷いた。
「ケルベロス、芭光、芭氷、芭陰。奴らは一時期地獄の門番をしていたんだが、どうにも手に負えなくなって追放された。芭光によって目を奪われ、芭氷によって体温を奪われ、芭陰によって永遠の闇に葬られる。それが自然の摂理でもあったが、あまりに身勝手で自分本位に動いたのがいけなかった」
「あの気持ち悪い蛇女は?」
「虹蛇、通称オニヘビの憐華。あいつはあの姿だからな。好いた男に近づこうにも近づけず、他の女に男を取られてきた。天候を操れるが、直接的な攻撃としては弱い。一度動きを止めることが出来れば、簡単に倒せるだろう」
確かに、スピードはあったが、攻撃という攻撃はあまりなかったように感じる。
しかし、蛇だから顎が外れるし、あの身体に巻きつかれてしまったら大変だ。
そんなことを琉峯が考えていると、シャルルはこんなことをつけたしていた。
「まあ、動く紐だけどな」
そして最後に、あの中ではリーダーのようにも感じた女。
「最後に、妖狐、通称ドクキツネの茅杞。一時期は女狐とも言われていたらしいがな」
男たちを誑かし、自由自在に動かしていたとされている、影の首謀者。
しかし、その実態を掴もうとした者は次々に死刑にされ、茅杞の正体を掴むことも出来ず、追い出すことも出来ないまま、滅んだ時代も少なくない。
だがシャルルに言わせれば、茅杞のどこに魅力を感じるのかは分からないらしい。
きっと女性にもてない男たちばかり狙って、さほど顔もスタイルも良くなくても、笑顔と言葉だけで上手く唆したのだろうとか、結構酷いことを言っていた。
「ドクキツネと言われるだけあって、毒に対しては気をつけた方が良い。普通の人間であれば、毒霧を浴びただけで命の保証はない。もしも毒霧を浴びてしまった場合は、すぐにこれを飲め」
そう言ってシャルルに渡されたのは、小さな入れ物に入った液体だった。
「解毒剤だ。知り合いに作ってもらった毒霧用の特注品だ。失くすなよ」
「「「「はい」」」」
4人仲良く御礼を言うと、シャルルはさらに続ける。
「茅杞の炎に関しては、業火とまでは言えない火力だ。気をつけるのは炎よりも毒だ。それに、狐の姿になるのは知ってるな」
「ああ。なんかでかい狐になった」
「まあ、でかくなっても狐だ。尻尾と足の動きは良く見ておいた方が良いな。それか、どっちも使えないようにしておくか、だな」
「弱点とかないのか」
「ダメージを与え続ければ、必ずそれは蓄積される。所詮は大型の動物だからな」
そんな話をしていると、シャルルがベッドから立ち上がった。
「鳳如は何処だ」
「ああ、この先の部屋にいるが、今意識がないぞ」
「・・・構わん。少し顔を見てから帰るぞ」
戦友だか旧友だかは知らないが、顔を見てから帰るなんて、そんな優しさがあるようには正直見えないが。
シャルルは鳳如の部屋を教えると、シャルルは部屋の中に入って行った。
「・・・さて、私達はみんなのところに行きましょ。怪我してるかもしれないし」
「そうだな」
4人は、丱椥が動けないように固定すると、部下や清蘭たちのいる場所に向かった。
「麗翔様!御無事で何よりです!!」
「平気よ。それより、そっちの方が大丈夫?」
「琉峯様!お怪我ありませんか!?」
「見ての通りだ」
「帝斗様!生きておられましたか!」
「勝手に殺すな」
「煙桜様!(師匠!)煙草を吸うお元気がありましたか!」
「・・・一発殴って良いか?」
4人が部下達のもとへ向かうと、そこは建物がボロボロになっていた。
部下たちに怪我はほとんどないようだが、結界を守っていた4神の生物たちは、少し怪我をしていた。
「見せてくれ」
琉峯がそれぞれの怪我を見てから札を貼れば、そこはぽうっと優しい光りに包まれ、怪我が治って行く。
「あまり無理はせず、安静に」
怪我を見終わると、1人、ただじっと空を見つめている清蘭がいた。
結界を清蘭が守り、その清蘭を守るために部下たちが動く。
「清蘭様、お怪我はありませんか」
麗翔が声をかけると、清蘭は空を見つめたまま「大丈夫じゃ」と答えた。
清蘭には、分かっていた。
まだぬらりひょんたちが本気など出していないことを。
もしも本気で攻められてしまえば、青龍たちと互角、自分にはどうすることも出来なくなってしまう。
しかし、結界の力は決して屈してはならない。
清蘭は、4人の方を向くと口を開いた。
「そなたらに、四神の真髄を伝えよう」
「真髄・・・?」
鳳如の部屋に入ったシャルルは、横になったまま動かない鳳如をただ見ていた。
「・・・・・・」
コツコツ、と近づいて行くと、寝ている鳳如の肩に自分の手を置いた。
特に何をするわけでもなく、そこに手を置いたまま、じっとしていた。
それから少しすると手を離し、そのまま部屋を出て行こうとしたのだが、その時、何かの気配を感じた。
「・・・・・・」
ちらっと後ろを見てみるが、そこには何もいない。
しかし確実にそこにある気配に、シャルルは気付かないフリをして出て行く。
元来た場所へと戻るシャルルの横で、蝙蝠たちが話しをしていた。
《ご主人様のお友達?》
《うーん・・・。多分そうかな?けど、僕たちは会ったことないよね》
《うん。でも御主人様、なんだか嬉しそうな顔してたね》
《してたしてた。ちょっとだけ笑ってたもんね》
《良かったね》
《うん。良かったね》
「真髄って、なんです?」
「実は、鳳如にはもう少し黙っておくように言われておったのじゃが、代々四神を継ぐ者には、受け継ぐものがあるのじゃ」
「受け継ぐ・・・?」
清蘭は着物の裾から何かを取り出すと、それを四人に見せた。
清蘭の手の中にあったのは、鮮やかに輝く石のようなものだった。
琉峯には青、麗翔には赤、煙桜には白、帝斗には黒。
「・・なんか俺の色だけ地味」
「そう言うな。それが受け継ぐべき色なのじゃ」
「これは一体何です?」
石を空に透かしてみると、なんとも言えない綺麗な色をしているのが分かる。
「それは本来、もっと早く渡すものなのじゃがな。それを、描かれている蓮のところに持って行ってみよ」
言われた通り、着ている服に描かれた蓮のところへ近づけると、石が反応して強く光り出し、蓮と同化した。
桃色で統一されていた蓮はそれぞれの石の色に変わる。
「四神を辞めるとき、石はまた新しくなって出てくるのじゃ」
「これで、何か変わるんですか?」
「本来の力が出る、と言った方が良いのかのう。鳳如としてはきっと、そなたらを信じて、もう少し後で渡す心算じゃった」
清蘭の話によると、今まで授けられた力というのは、お試し、くらいだったようだ。
もっと早く欲しかった気もする四人だが、それでもこうしてやってこれた。
琉峯には東の、麗翔には南の、煙桜には西の、帝斗には北の本来の力。
「でも、なんで鳳如はこれを出し惜しんでたんだ?」
「・・・それはきっと、そなたらの為じゃ」
「?」
「四神になってそれを受け継いでしまえば、逃げ出したいと思ったとき、もう逃げ出すことが出来ない、枷となってしまう。しかし、まだそれを受け継ぐ前であれば、鳳如の力で辞めさせることが出来る」
以前、四神としていた者が、やはり死ぬことが怖くなり、戦う事を拒んだそうだ。
しかし、もうその時には石を受け継いでしまっていたため、戦うしかなかった。
つまりは、死ぬまで、もしくは新しい四神候補が見つかって交代するまでは、戦い続けるという意思表示でもあるのだ。
「逃げ道を用意してくれたってことかよ。ったく。似合わねえことしやがって」
「本当ね。私達、逃げも隠れもする心算なんてないのに」
「・・・・・・」
「ふー・・・」
煙草が短くなった煙桜は、吸い殻を持っている指に意識を持っていくだけで、吸い殻はサラサラと砂になった。
「鳳如がそなたらのことを守ってきたというのに、申し訳ない」
「何を言います。俺達ァ、全員、ここを墓場を決めてるんですよ。それまでは、何があってもここを守ります」
「他に行くところも無いんですよ」
そんな帝斗と麗翔の言葉に、清蘭はふっと微笑んだ。
「感謝する」
そこで他愛もなく笑ったところで、ふと、建物を直さないとと思った四人。
しかし、修復は思ったよりも簡単だった。
古びた個所は全て煙桜が灰にしてしまい、そこに重たいものは帝斗が重力の力を逆に利用して持ち上げる。
琉峯が繋ぎとして植物を生やし、麗翔が良いところで炎を出して切る。
そんなことを繰り返していると、とりあえず修復は出来た。
「おー。重力ってこんなことも出来たのか」
「すごーい!!意識したところに炎が出せる!!!」
琉峯も煙桜も、触れなくても力が出ることも驚いていた。
まるで自分の手足のように動くそれらに、四人は最初愉しんでいたが、その内、いつでも自在に動かせるようにと鍛錬を始めた。
それを見て、清蘭は安心して結界を守るのだ。
「麗翔、燃えてっけど熱くねえの?」
「帝斗こそ、なんか黒ずんでるわ・・」
「琉峯なんか植物から出てきたぞ。なんだありゃ。煙桜錆びてるし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます