ラグナロク参

maria159357

第1話絶望イルミネーション







ラグナロク参

絶望イルミネーション



    登場人物


       鳳如


       帝斗


       煙桜


       琉峯


       麗翔


       清蘭


       ぬらりひょん


       天狗


       おろち


       座敷わらし


       丱椥 蓮歩 かんなぎれんと


       茅杞 ちっき


       憐華 れんげ


       芭光 ばこう


       芭氷 ばひょう


       芭陰 ばいん






















 恐れを抱いた心では、何と小さいことしかできないことでしょう。


      フローレンス・ナイチンゲール






































 第一昇【絶望イルミネーション】


























 落ちてくる空、巻き戻された刻、命乞いをする神、飼い慣らされた自由、水の無い海、意識の無い殺意。


 この世の中には、有り得もしない世界が存在しているのかもしれない。


 ある世界では、鬼から鬼門を守ろうと、日々戦っている者達がいた。


 彼らは自らの意思をもって戦い、そしてまた、時代を紡いで行くのだ。








 その日も、普段通り過ごしていた。


 「麗翔。お前は飯作るなって言っただろ。作るとしたら、誰かと一緒に作れって言ったじゃねえか」


 「何よ帝斗。私の作った料理が食べられないとでも?」


 「ああ、その通りだ」


 顔面にパンチを食らった帝斗は、鼻頭を押さえながら、近くにいた煙桜のもとへと行く。


 「あいつ容赦ねえぞ」


 「容赦がねえのは、料理の方だ」


 「ああ、確かにな」


 謎の不審物を、笑みを浮かべて作っている麗翔は、まるで魔女だ。


 麗翔の試作品実験体となってしまった、たまたま通りかかっただけの帝斗と煙桜は、どうやってここから逃げ出そうかと考えていた。


 「さー!出来たわよ!」


 これほどまでに、この時間がこなければ良いと思ったことはないだろう。


 しかし、だからといって逃げることも出来ずにいると、珍しく息を切らせてやってきた琉峯がいた。


 「あら琉峯、あなたも食べる?」


 「それどころじゃない」


 頬杖をつきながら、唇を尖らせていた帝斗は、琉峯の口から出てきた言葉には目を丸くした。


 それは帝斗だけでなく、煙桜も麗翔もだ。


 「鳳如さんが、倒れた!」


 バタバタと四人は慌てて鳳如の部屋へと向かうと、そこにはベッドに横になっている鳳如がいた。


 寝ているのか、名前を呼んでも返事はない。


 「死んだのか!?」


 「馬鹿ね。息してるじゃない」


 「先程、部屋に来たところ、血を吐いて倒れているのを確認しました。今は落ち着いて寝ていますが、いつ頃目覚めるかもわからない状態です」


 「血って・・・。どうしたのかしら?」


 「・・・・・・」


 渋い顔をして鳳如を見ていた煙桜は、煙草を吸うと言って部屋から出て行った。


 「ま、死んだわけじゃねえなら、獅子に頼んどきゃ大丈夫だろ」


 「ええ、そうですね」


 それぞれ守っている方位には、守護する生物がいる。


 琉峯のいる東には青龍、麗翔のいる南にはフェニックス、煙桜のいる西には虎、そして帝斗のいる北には亀である。


 中央を担っている鳳如には、ライオンこと獅子が存在している。


 帝斗たちがそんな話をしていると、当たり前だと言わんばかりに、獅子が現れた。


 そして寝ている鳳如の横に身体を丸めると、眠ってしまった。


 「それにしても、血を吐いたって、吐血ってことだろ?鳳如ってなんか病気とか持ってたっけか?」


 「私は知らないわよ」


 「俺も・・・」


 うーん、と顎に手を当てて考えていた帝斗だが、考えても答えなど見つからず、諦めて結界を張っている部下たちのもとへ向かった。


 鳳如が倒れたことを伝えると、部下たちもみな驚いていた。


 日頃、あんなに元気というか、弱い部分など微塵も感じなかった鳳如が、まさか倒れてしまったとは。


 しかし、だからといって仕事を怠ることは出来ない。


 「しっかし。手ごわい敵が来なけりゃいいがな」








 とある深い森の奥。そこはとても霧が濃く、人は入っていかないような場所だ。


 そこに、三人の男たちがいた。


 1人は黒く長い髪をしており、1人は長い金髪で、手には大きな扇子を持っている。


 そして最後の1人は、白と黒の短い髪の毛をしている。


 そんな男たちのもとに、1人の男が近づいていた。


 その気配に気づいていた男が、霧の向こう側にいる男に声をかける。


 「ワシらに何か用か?」


 「あ、あの、すみません・・・」


 ぼう、っと霧の中から現れたのは、白い前髪に黒い後ろ髪を持っている男で、パーカーの中にワイシャツを着ていた。


 おどおどしながら男たちに近づくと、男は自らをこう名載った。


 「丱椥、蓮歩と申します。実は」


 丱椥、と名載ったこの男は、自分の名前しか思い出せないという。


 自分が何処から来たのか、そして親は、歳は、何処へ行こうとしていたのか、何も思い出せないらしい。


 すると、扇子を持った男が言った。


 「記憶喪失、ということじゃな」


 「へー、これが記憶喪失ってやつなんだー。俺様初めて見た」


 「・・・・・・」


 これからどうしようと思っていると、丱椥は男たちの着物が珍しいのか、次々に触って見てきた。


 それに抵抗もしないでいると、何やら違和感を覚えた。


 くらっとしたような、脳内に砂嵐が現れたような、なんとも言えない不思議な感覚に陥ってしまった。


 それからすぐ、男たちはふと立ち上がり、何処かへと向かってしまった。


 その頃、いつものようにだらだらと過ごしていた四神たちも、何かの気配を感じた。


 いつもであれば、鳳如が招集をかけるのだが、今は鳳如が倒れてしまっているため、四人はそれぞれ会議室へと足を運んでいた。


 「なんかすげー嫌な気配が来るんだけど」


 「でも、鬼門の方に来る感じはないわよね。どういう心算かしら?」


 「俺達を潰した方が早ぇって思ってるのかもな」


 「とにかく、向かいますか」


 気配が感じた場所へと、四人は向かった。


 外に出て空を眺めていると、何やら見慣れた姿が三つ、こちらに向かってくるではないか。


 声をかけようとした帝斗だったが、それらはまるで声など聞こえていないかのように、物凄い勢いで突っ込んできた。


 「・・・!?」


 中枢とも言える、清蘭がいるその建物へと迷わずに突っ込んで行くと、四人は急いでそこへと走る。


 清蘭の周りにはしっかりと結界が張られているため、怪我をしていることはなかったが、帝斗は思わず声を荒げる。


 「おい!お前等、なんでこんなことを!?ぬらりひょん!!!」


 見慣れた姿、それは、鬼にも関わらず、この鬼門を守る四神たちに手を貸してくれていた、ぬらりひょん、天狗、おろちの三人だった。


 帝斗の叫びに答えたのは、目を鋭くこちらに向けてきた、ぬらりひょんだった。


 「何を言うておる?ワシらは鬼。貴様等を潰すのは当然のことじゃろう」


 「はあ!?お前、何言ってんだ!?」


 「帝斗待て。様子がおかしい」


 グッと、帝斗の肩を掴んだ煙桜だが、その表情はいつも以上に曇っている。


 スッ、と視線を戻したぬらりひょんの先には、清蘭と、清蘭の後ろに隠れている座敷わらしがいた。


 「主、ここで何をしておる」


 「お、お主こそ何をしておるのじゃ!こ奴らのことを忘れてしもうたのか!?」


 「先代には世話になった。出来ることなら、主には怪我をしてほしくないのじゃ」


 「なっ、何を言うておる?」


 「・・・天狗」


 そうぬらりひょんが呟けば、後ろにいた天狗が扇子を大きく動かす。


 すると、どこからともなく風が吹き荒れてきて、清蘭は思わず目を瞑り、腕で顔を覆う様にした。


 「!!」


 はっと気付いたときには、もうすでに座敷わらしはぬらりひょんの腕の中にいた。


 いつもなら、それでようやく泣きやむはずの座敷わらしだが、今日は違った。


 自分を抱えているぬらりひょんを、怯えた目で見ており、そこから抜け出そうとバタバタ暴れ出したのだ。


 「・・・いた仕方あるまい」


 そう言うと、ぬらりひょんは座敷わらしの後頭部付近を軽く叩き、座敷わらしを気絶させてしまった。


 「!!!てめえっ!!」


 明らかにいつもとは違うぬらりひょんたちに、帝斗たちは武器を手にする。


 「麗翔は清蘭様を頼む!」


 「おっけー!」


 琉峯は、カッタ―のように切れる風を操る天狗と向かい、煙桜は酒飲み仲間でもあったおろちと向かう。


 そして帝斗は、きっと実力では敵わないと分かっているが、ぬらりひょんと対峙する。


 琉峯が植物を操り、天狗を捕えようとしても、天狗はその太く丈夫な植物を簡単に斬って行ってしまい、剣を使って戦おうにも、天狗は距離を縮めさせてくれない。


 煙草を吸ってふー、と煙を吐いた煙桜は、大蛇へと姿を変えているおろちを見ている。


 針を投げようと考えたが、きっとあの身体の大きさの前では無力だろう。


 触れて身体を錆びれさせることは可能かもしれないが、そこまでするのはどうなのかとも考えてしまう。


 帝斗はと言えば、ぬらりひょんを前に、正直、恐怖心が溢れていた。


 幾度となく敵を相手にしてきたが、これほどまでに手も足も、震えていたことはないだろう。


 だが、実力の差は歴然としていた。


 どれほど帝斗が攻撃をしても、ぬらりひょんは見極めてそれを避ける。


 一瞬の隙をつき、帝斗の両手両足を縛りつけると、掌を帝斗の腹に当ててきた。


 何をされるのだろうと思っていると、ただ優しく、ぽん、と叩かれただけだった。


 「?」


 しかし、衝撃は時間をずらしてやってきた。


 「・・・!!!!!!」


 胃が圧迫されるような、いや、胃だけではない。


 骨も軋み、身体中のあちこちから、悲鳴という悲鳴が聞こえてくるようだ。


 前のめりになって、身体中から血を流して倒れて行く帝斗を見て、煙桜は舌打ちをしながら帝斗をキャッチする。


 ぬらりひょんたちは、こちらを見ることもなく、そこから立ち去って行った。


 「琉峯、帝斗を運ぶぞ」


 「はい」


 「麗翔、お前は獅子以外の青龍たちと清蘭様を連れて部下達のところに行け。清蘭様にはしばらく、部下と一緒にいてもらって、青龍、鳥、虎、亀に結界の手伝いと清蘭様の警護を頼んでおけ。そしたらお前もこっちに来い」


 「わかった!」


 煙桜の指示通り、麗翔は清蘭を連れて部下たちのところへ向かった。


 事情を説明して、青龍たちにもそこに留まってもらうように頼む。


 それからすぐに、帝斗を連れて行った医務室へと向かうと、丁度煙桜たちがそこから出てくるところだった。


 「帝斗は?」


 「大丈夫だ。琉峯の治癒もあってか、回復は思ったより早く・・・」


 「っだー!!!くそ!!!なんなんだったんだよ!!!あの野郎!覚えとけよ!」


 「早すぎね」


 ついさっきまで死にそうな顔をしていたというのに、帝斗は身体中包帯だらけになって医務室から出てきた。


 その後ろから琉峯も出てくると、四人は先程の部屋に向かう。


 「ねえ、どういうこと?なんであいつら、私達のこと忘れたわけ?」


 「もう歳だからな」


 「そういうんじゃねえだろ」


 「急に忘れるなんてこと、有り得ないでしょうね」


 いや、問題はそれだけではないのだ。


 「あいつらが本当に敵に回ったとしたら、やべぇだろ」


 鳳如も倒れてしまっている今、ぬらりひょんたちに太刀打ち出来るわけがない。


 ダンダン、と強く床に足を踏みつけている帝斗は、きっとぬらりひょんに、あれほどの差で負けたのが悔しいのだろう。


 まるで獣のように、歯を見せて喰いしばっていると、そこに男が現れた。


 「あら、どちら様?」


 麗翔が気付き、声をかけると、男は名前だけを名載った。


 「じゃあ、その丱椥、蓮歩?って名前以外は、何も思い出せないってことか?」


 「ええ・・・」


 琉峯が一度丱椥を医務室に連れて行き、脳の検査をしてみることにした。


 すると、やはり記憶の部分に何か支障があることが分かった。


 「確かに記憶喪失のようですね。どうします?」


 「どうするったって、まあ、しばらくなら面倒見てもいいんじゃね?」


 入ってはいけない部屋もあるため、基本的には空いている、何もない部屋に置くことにした。


 一方で、そんなことより、と四人は心配していた。


 「あいつら、また来るんだろうな」


 「はっきり言って、勝てないわよね」


 「今の俺たちじゃぁ、無理だろうな」


 「・・・・・・」


 鳳如はいつ目を覚ますか分からない。


 いや、目を覚ましたとしても、戦わせてはいけないだろう。


 なんとか自分達だけで、せめて足止めだけでも出来ればと、四人は模索し続けるのであった。








 「なんだ、お前等は」


 ぬらりひょんたちの前に、男女が現れた。


 「はじめましてー!わらわはー、茅杞。こっちは憐華。で、こっちは真ん中が芭光、右が芭氷、左が芭陰よ!」


 「・・・何用じゃ」


 三人の前に現れたのは、独特な姿形をした三人だった。


 1人は、黄色の長い髪の毛をして、耳が生えている茅杞という女だ。


 茅杞は通称、ドクキツネと呼ばれている妖狐で、毒や炎を操ると言われている。


 1人は、紫の長い髪の毛をしている女で、憐華という。


 憐華は耳にピアスをしていて、舌は長く、身体は蛇のようになっているが、両手だけはついていて、天候を操る。


 そして1人、というか3人というのか、最後は芭光、芭氷、芭陰だ。


 1つの身体に3つの顔を持っている、いわゆるケルベロスというやつだろうか。


 初めて見るからよく分からないが、みんな黒髪をしている。


 真ん中は芭光といって、光を操る男らしく、前髪が分かれていて、そこには何か模様が書かれている。


 右側は芭氷といって、氷を発生させられる男で、長く一つに縛った髪をしていて、何より俺様口調だ。


 左側は芭陰といって、陰を操ることが出来る男で、無愛想な感じで髪も短い。


 「あなたたちも、あの四神たちを倒したいんでしょー?なら、わらわたちと手を組むっていうのはどうかしら?絶対に損はないわよ?ねえ?」


 「俺様がいれば、簡単に殺せる」


 「俺達だろ。まったく、お前は本当に自分のことしか考えてないな」


 「ねーえ?悪い話じゃあ、ないでしょ?」


 グイッと顔を近づけてきた茅杞だが、ぬらりひょんは腰に下げてあった、ひょうたん型の酒をぐいっと飲む。


 そして茅杞たちに背を向けると、興味無さそうに寝そべった。


 「主らと手を組む気はない。ワシらだけで潰す」


 「あらー、それは残念だわ。きっと良いチームになれると思ってたのに」


 クスクスと笑っていた茅杞だが、ぬらりひょんがちらっと軽くこちらを睨んできただけで、思わず背筋が伸びる。


 「主らには関係ないじゃろう」


 「・・・まぁねぇ。わらわ達は鬼ではないものね。けど、忌み嫌われる者として、やっぱり邪魔なのよね、ああいうのは」


 「ワシは五月蠅い女は嫌いじゃ。さっさと消えろ」


 ぬらりひょんがそう言うと、芭光が何かしようと一歩前に出たのだが、それを茅杞が止めた。


 「今日のところは帰るわ。また会えるのを楽しみにしてるわね」


 ざざっと消えていった茅杞たちの気配が消えると、ぬらりひょんは酒の追加を頼もうと、ひょうたん型のそれをおろちに渡した。


 おろちはそこに酒を注ぐと、またぬらりひょんに戻す。


 「それにしても、あ奴らはワシらのこと知っておるみたいじゃったのう」


 「確かに、何か喚いておったのう。ぬらりひょん、知り合いでもおったのか?」


 「いや、知らん」








 「ぜーーーーったいにおかしいと思うの!」


 麗翔は、熱弁していた。


 あの後、四人はどうにかしなければと、とにかく集まって話しあいをしていた。


 麗翔以外は、鍛錬の一つでもしておきたかったのかもしれないが、麗翔に駄々をこねられ、鍛錬を邪魔されても仕方ないと、ここに集まっている。


 「おかしいと思わないの!?」


 「そりゃ思ってるって。けど、どうしようもねえだろ?それより、あいつらが相手となると、こんな話しあいなんかしてる場合じゃねえだろうが」


 「分かってるわよ!けどなんか話さずにはいられないのよ!!」


 「知らねえよ」


 呆れたようにため息を吐いていた帝斗の横で、煙桜は煙草を吸い始めた。


 ここは禁煙だったはずだが、一応叱るのは鳳如だけだったためか、気にせずに吸っている。


 まだ帝斗の包帯を取れておらず、琉峯は瞑想をしているのか寝ているのか、とにかく目を瞑ってじっとしていた。


 「鳳如なら何か知ってるかもしれねぇけど、全然意識戻らねえしなぁ」


 「鳳如の部屋に行って、私、何かないか調べてみたのよ」


 「勝手に入ったのか」


 「何よ」


 「お前な、そういうところ直さねえと、一生男なんて出来ねえぞ」


 「なんでよ。入られて困るような部屋なら、いっそ無くていいじゃない」


 「恐ろしいことを言うな」


 それは良いとして、鳳如の部屋に入った麗翔だったが、結局は何も見つからなかったようだ。


 ああ、うう、と何かを言っている麗翔を無視して、帝斗たちはその部屋からそっと出て行こうとする。


 しかし見つかってしまい、再び席に戻されるのだった。


 「ちょっと!事の重大さがわかってるの!?」


 「わーってるよ。俺が一番大けがしたんだからな。死ぬかと思ったんだからな」


 「麗翔、話し合いよりも、今は各々の力を伸ばすことが大事だ」


 「そうだ」


 頬を思い切り膨らませて抗議を示した麗翔だが、頬が痛くなったのか、それとも諦めたのか、ふうーと息を吐いた。


 そして四人はようやく鍛錬場に足を運び、いよいよ鍛錬を始めようとしたのだが、そうはいかなかった。


 ぴた、と足を止めると、四人は同じ方向を見ていた。


 「・・・まさか、また戻ってきた?」


 「いや、違うな」


 またぬらりひょんが来たのかと身構えたが、どうやらその気配は違うものだ。


 そのとき、本日二度目の大きな音がした。


 ガラガラ・・・と音がしたあと、もくもくと煙がたつ。


 その中から現れた3人、というか5人というか・・・。


 「どうもー!茅杞といいまーす!」


 「憐華よ」


 「「「芭光、芭氷、芭陰」」」


 すぐに琉峯が非常警報ベルを鳴らすと、危険がおとずれたことを部下たちも、清蘭も知った。


 三人と向かい合うと、帝斗はこそっと煙桜は話しかけた。


 「おい」


 「なんだ」


 「誰が芭光で誰が芭氷で誰が芭陰だ」


 「知るか」


 一気に挨拶をされたため、誰が誰だか分からなくなった帝斗だが、誰が誰でも構わないと、煙桜に一蹴される。


 茅杞は煙桜の前に立ち、憐華は琉峯の前へ、そして芭光たちは帝斗の目に立ちはだかった。


 「私は?」


 「お前は援護でもしてろ」


 「何よそれ」


 茅杞と向かいあった煙桜は、ふーと煙草を一本吸った。


 茅杞は服の裾で鼻元を覆いながらも、じーっとその瞳孔が開いたような目で、煙桜をじーっと見ていた。


 そして靴の裏を使って煙草の火を消していると、茅杞のお尻あたりからはしゅるる、と白く大きな尻尾が出てきた。


 一回りも二回りも大きくなると、煙桜を見下ろしてこう言った。


 「わらわを倒せるの?人間ごときが、わらわ達に刃向かうなど失笑だわ」


 「・・・狐がでかくなったところで、何が出来るってんだ」


 「言ってくれるわ」


 大きさの割に、というか、大きさは関係なく機敏に動きだす茅杞。


 煙桜はタイミングを見計らって針を投げるが、獣とは思えないほど丈夫な肌に針が刺さっても、茅杞はビクともしない。


 「!!!」


 右に左に上に下に、動き回る茅杞を捕えようと集中していた煙桜だが、ニヤリと茅杞が笑う。


 バランスを取る役目でもある尻尾で、煙桜は激しく飛ばされてしまった。


 ふわふわそうに見える尻尾は、まるで鉄の塊の弾丸のような強固さがあった。


 「・・・ちっ」


 軽く舌打ちしながらも、身体を起こそうとした煙桜だが、茅杞が間髪いれずに目の前に現れ、前足を使って煙桜を踏みつぶす。


 何度も何度も踏みつぶしたあと、茅杞はゆっくりとその前足をあげ、倒れている煙桜を見て微笑もうとした。


 しかし、そこに煙桜はいなかった。


 「?」


 何処へ行ったのかと思っていると、声が聞こえてきたのは、自分の手からだった。


 「ここだよ、化け狐」


 ふと、前足の掌を自分に向けてみると、血だらけになった煙桜はそこにいた。


 それを見て、茅杞はまたクスクスと笑う。


 「随分と小汚くなったわね」


 「お陰さまでな」


 そういうと、煙桜は札を出して茅杞に張り付ける。


 そしてすぐに茅杞から離れると、茅杞の身体はどんどん錆びが出来始めた。


 「?どういうこと?」


 何が起こっているか分からない茅杞は、錆びて行くその足をブンブンと振ってみるが、どうにもならない。


 そこに、煙桜は前蹴りをしようと飛びかかった。


 「フフ・・・」


 「!!!」


 煙桜の足元が、ぐらついた。


 地面が揺れたとか、茅杞に叩かれたとか、そういうことではない。


 「わらわの身体には、常に毒が回っているの。唾液、体液、血液、それに爪や牙を通して、相手に毒を回すことが出来ますの」


 「ぐっ・・・!」


 「ついでに言うと、わらわ、炎を出すことも出来ますの」


 にっこりと笑うと、茅杞は煙桜に向かって口を開けると、そこから炎を出した。


 ぼお、と勢いよく出てきた炎だが、それは煙桜に届くことはなかった。


 「・・・あら、てっきり観戦しているのかと思ってたわ」


 「五月蠅いわね!あんたみたいな女、大っ嫌いなのよ!!!」


 炎を纏った弓を茅杞に向かって射た麗翔のお陰で、炎同士が仲裁されたようだ。


 「ちょっと煙桜!しっかりしなさいよ!毒なんてなんか中和出来ないの!?」


 「お前、毒をなんだと思ってんだ・・・」


 とは言いつつも、毒にはちょっとした対抗を持っている煙桜は、それほど毒が回ることはなかった。


 だからといって、万全かと言われれば、決してそうではない。


 「邪魔されたけど、毒は残っているでしょう?」


 「狐のくせに、随分となまっちょろい攻撃してくるもんだな」


 「・・・・・・」


 煙桜の言葉に、ピクリと眉を潜ませた茅杞は、狐から人の形に戻ると、煙桜の傍に寄って行き、蹴飛ばした。


 まだ耳としっぽは残ったままだが、その姿のままでも、茅杞の蹴りの威力は思っていたよりも強いものだった。


 「人間のくせに、随分と頑丈な身体をしているのね?なら、もっと楽しませてもらおうかしら?」


 ペッ、と口の中の血を吐き出すと、茅杞は狐の時のようなスピードのまま、煙桜の周りをぐるぐると回り始めた。


 回り始めたというのは正確ではないかもしれない。


 規則正しく回っているわけではなく、四方八方を駆け回っている。


 顔面血だらけのまま、煙桜はポケットから煙草を取り出すと、一本をそのまま口に運び、マッチで火をつけた。


 「人間の肉体なんて、わらわの攻撃の前ではもたないわ!!!」


 「・・・・・・」


 一気に煙桜に飛びかかった茅杞だが、決まったと思ったのも束の間、その足は煙桜にがっしりと掴まれてしまった。


 しかし、茅杞は身軽に身体を捻ると、逆の方の足を煙桜に向けていく。


 だが、この足も煙桜に捕まってしまい、茅杞の目はまるでネコ目のように鋭くなると、両手で煙桜の足を掴み、そこに噛みついた。


 一瞬手を緩ませてしまった煙桜に気付くと、茅杞はすぐさま足の膝を曲げて、そのまま煙桜の顔面を蹴飛ばした。


 「・・・・・・」


 茅杞の身体には、いつの間にか煙桜から攻撃されていた針がくっついていたが、それを茅杞はひょいひょい抜いて行く。


 「わらわの身体を錆びれさすことは無理よ。わらわは鬼同様、何千年と生きている妖弧。これきしの攻撃なら、すぐに回復させることが出来るのよ?」


 「・・・らしいな」


 「本当に頑丈ね。ふふふ」








 「あたしの相手は、この坊やで良いのかしら?」


 「・・・・・・」


 琉峯の前にいる憐華は、身体が蛇の形をしている。


 地面に這うようにしているが、動きとしては腕を使ってスピードアップしてくるため、ホラーを見ているようだ。


 琉峯は憐華の周りを植物で取り囲み、捉えようとしていた。


 「あたしを捕まえようっていうの?面白いじゃない!!!」


 「!!!?」


 そう叫びながら、憐華は腕を動かして琉峯のもとへと来ようとする。


 琉峯は急いで前に植物を出現させるが、憐華の身体は、まるでその隙間隙間を上手く縫ってくるようにして向かってくる。


 それでも、更に植物を出して動きを少しでも遅くしようとした琉峯だったが、憐華が何かをした。


 次の瞬間、急に琉峯たちのところだけ雷が発生し、植物に落ちて燃え広がってしまったのだ。


 「!?」


 そう簡単には燃え広がらないはずの琉峯の植物だったが、こんなに燃えてしまったのには理由があった。


 植物の間を縫って現れた憐華は、琉峯に絡みつくと首筋に噛みつこうとした。


 「あたしの身体にはね、常に油が分泌しているのよ?覚えておいてね、坊や」


 「・・・!」


 しかしその時、援護に回っていた麗翔の弓が、憐華の足にささったため、噛まれずに済んだ。


 ギロリ、と麗翔を睨んだ憐華は、麗翔を狙いに行こうと、琉峯から身体を離してそちらに向かって行く。


 その憐華の手に細い植物を巻きつけると、憐華は再び琉峯を見る。


 「お前の相手は俺だ」


 「・・・そう。なら坊や、すぐに楽に逝かせてあげるわ!!!」


 琉峯はまた植物を成長させると、そこに自分の身体を乗せた。


 憐華は上にどんどん行ってしまう琉峯を眺めていたが、植物に手をおくと、蛇とは思えないほどの速さで登ってくる。


 するすると隙間を見つけては向かってくる憐華を見ながら、琉峯は一定の距離を取りながら、次々に植物を生やしては移動していく。


 「坊や!怖くて逃げるくらいなら、一撃で仕留めてあげるわよ!!!」


 「・・・・・・」


 琉峯は、思っていたのだ。


 あんな気持ち悪い動きをする生物を相手にするなんて、自分はなんてついていないのだと・・・。


 ふう、と小さくため息を吐いたとき、憐華の姿が見えなくなってしまった。


 何処へ行ったのかと思って探していると、後ろから何か気配を感じた。


 「!!!」


 「あら、惜しい」


 いつの間にか近づいていた憐華は、またしても自分たちの周りだけ天候を変える。


 「・・・?雹?」


 「そうよ。それもただの雹じゃないわ」


 憐華の言った通り、それはただ雹ではなくて、巨大サイズの雹だった。


 それらは琉峯が出した植物に巨大な穴を開けて行き、その中を憐華はまるで通り道のようにして移動することが出来る。


 「こうしておけば、坊やが作ってくれた植物のお陰で、あたしは移動し放題。坊やをすぐに捕まえられるわ」


 「・・・・・・」


 すると、琉峯はすうっと剣を抜いた。


 「あら、あたしを斬れるの?」


 「・・・・・・」


 剣を構えると、琉峯は憐華を斬ろうと剣を振るうが、嘲笑うかのようにして憐華はすいすいと移動してしまう。


 しかし、琉峯もひょいひょいっと植物の幹を通って移動して行くが、速さでは全く敵わない。


 ふと、憐華に気を取られていると、雹で空いた穴の部分に足が入ってしまった。


 琉峯はそこから早く抜けようとしたが、その時、憐華が穴の下から琉峯の足に巻きつき、幹に身体を巻きつけながら、琉峯の前に現れた。


 「・・・!」


 動けなくなってしまった琉峯に、憐華はニヤリと笑って琉峯の心臓に手を当てる。


 「・・・?」


 「ふふ」


 何だろうと思っていると、急に、琉峯の心臓に電撃が走った。


 それは雷のような衝撃で、しかしそれを直接受けてしまった琉峯は、その場に倒れてしまった。


 捕まえていた琉峯の足をそのまま引っ張ると、憐華は勢いよく琉峯を適当な場所に叩きつけた。


 「がはっ・・・!!」


 ズルズルとそのまま落ちて行く琉峯の前に、琉峯の剣を持った憐華が近づいてきた。


 「ふふふ。どう?坊やにはちょっと刺激的だったかしらね?」


 「・・・ぐっ」


 すうっと剣を琉峯の首にあてがうと、憐華は苦しそうにしている琉峯を見て、クツクツと笑いだした。


 そして剣を琉峯の顔の横スレスレの場所に突き刺すと、もう一度心臓に手を当てた。


 「最後に止めを刺してあげるわね」


 「・・・・・・」


 ビリビリビリ、と強い衝撃が琉峯を襲った。


 笑いながら琉峯から遠ざかって行く憐華だったが、ピタリと足を止める。


 そしてゆっくりと後ろを振り返ると、そこには心臓が止まっているはずの琉峯が立っていて、手には剣を握っていた。


 「・・・どういうことかしら?それとも、心臓が何個かあるっていうの?」


 「・・・・・・」


 琉峯が、自分の心臓あたりから取り出したのは、小さな種だった。


 「?」


 「これは、雷を吸収して育つものだ。これが、お前の攻撃を吸収してくれた」


 「・・・あらそう。けど不思議ね。あなたはとても苦しそうに見えるわ。てことは、全ての攻撃を吸収してもらった、というわけではなさそうね」


 ゆっくりと剣を構えるが、琉峯は眉間にシワを寄せて呼吸を荒げていた。


 それを見て、また憐華は楽しそうに笑い、琉峯を向かい合う。








 「くそっ!!!」


 ぬらりひょんに大きなダメージを与えられていた帝斗は、芭光、芭氷、芭陰の3人に一方的に攻撃をされていた。


 帝斗の肩腕はほとんど使えない状態で、肩腕だけで体術をするのも、それまた体力のいることだった。


 しかし、それでもなんとか攻撃を凌いでいた帝斗だったが、芭氷によって足元を凍らされてしまった。


 麗翔が弓で炎を纏って射たのだが、氷を溶かすには少し時間がかかる。


 その間に、芭光によって、帝斗は物凄く強い光を浴びてしまった。


 ただ浴びただけではそれほど問題はなさそうだが、目の前から、近い場所で、強い光を急激に浴びてしまったら、ただ事ではない。


 太陽を直接、長時間見ていたかのように、一瞬にして視界が眩む。


 いや、眩むというよりも、もっと確実な言い方をすれば、見えなくなる。


 「ぐあっ!!!」


 急いで目を閉じても、もう手遅れだ。


 芭光からの強い光を見て、視力を奪われてしまった帝斗に次に襲ってきたのは、見えないことによる闇だった。


 芭陰の力なのか、それさえ分からないほど真っ暗闇に包まれた感じだ。


 だが、足元はしっかりと固定されているのが分かる。


 「くそっ!!!」


 「おいおい、まだやる気か?」


 「俺様に勝てると思っているのか?」


 「お前の視力は奪った。お前はもう、逃げることも出来ない」


 耳だけを頼りにすると、きっと芭光たちはまだ目の前にいる。


 じりじりと自分に近づいてきているのも分かっているが、帝斗の目には何も映ってはいない。


 確かに、逃げることも出来ないだろう。


 サングラスでも作っておけば良かったな、なんて、そんな呑気なことを考えていた帝斗だが、芭光か芭氷か芭陰か、誰かは分からないが、誰かに思い切り殴られた。


 何度も何度も。抵抗しようと腕を動かせば、芭氷に腕も拘束されてしまい、動かすことが出来なくなってしまった。


 「はあっ・・!ああ・・・」


 口の中が切れて、瞼からも額からも血が出ているのが分かる。


 「へへ。まだまだ遊ばせてもらおうかな」


 「芭氷、それよりも息の音を止めることが重要だ」


 「芭陰、もうこいつはへろへろだ。あと少し遊べば死ぬだろうさ」


 ハスキーな声に、地を這うような声、それに調子良い声。


 誰がどの声が徐々に分かってくると、見えていないはずの帝斗の目には、ぼんやりと形が見えるような気がしてくる。


 芭光たちの隙をついて、倒れた振りをして地面に札を押しあてれば、芭光たちがいる地面に重力がかかる。


 そして一気に数メートルが落ちて行くと、芭光たちの気配がしばらくなかった。


 帝斗はなんとかして視界さえ戻ればと思って身を捩っていると、ふと、そこに芭光たちが戻ってきた気配があった。


 いや、あれだけ深い場所から、そうそうすぐに上がって来られるはずがない。


 「よくもやってくれたな」


 「お前、俺様のこと忘れた?俺は氷を何処からでも出せるんだぜ?勿論、階段の形にして出すこともな」


 「・・・・・・」


 心の中で舌打ちをした帝斗だが、氷が徐々に解けてきた感覚があった。


 ここは勝負をしかけようと、力任せに氷を壊すと、見えないまま芭光たちに攻撃をしかける。


 「ほうら、こっちだ」


 「こっちだよ」


 「こっちこっち!!」


 馬鹿にされたように、帝斗はフラフラしながら、まるでスイカ割りのように動いていた。


 しかし、3人のうち誰かに、というか身体は一つなのだが、誰かの意思によって腹を蹴飛ばされた。


 するとその時、誰かの声が聞こえた。


 「結界が壊れないわ。今日のところは引き上げるわよ」


 「ちぇっ。もうちょっとだったのにな」


 遠ざかって行く声が聞こえる一方で、近づいてくる聞き慣れた声。


 「帝斗!しっかりしろ!」


 「だめだ。さっきので目が見えてないんだ」


 琉峯と煙桜によって、帝斗はまた医務室に運ばれた。


 失明にはなっていないようで、きっと時間が経てば戻るのだろうが、それもいつ頃になるかはさっぱりだ。


 「包帯巻く必要ある?」


 「さあ?冷やした方が良いの?」


 「さあな。まあ、安静にしておいて、様子を見るしかないだろ。帝斗、聞こえるよな」


 「ああ」


 「しばらくはここでじっとしてろ。いいな。絶対に動くなよ」


 「わかったよ」


 まあ、動きたくても動けないというのが、正直なところではある。


 こんなにも、見えないことに恐怖を感じるとは思っていなかった。


 結局、壊れたところを直しながらも、鳳如と帝斗の回復を待つしかなかった。


 先程の茅杞たちが来たとしても、ぬらりひょんたちが来たとしても、今の戦力では到底戦えない。


 「飯食うか?」


 「麗翔のじゃなきゃな」


 「だとよ、麗翔」


 「まったく、失礼な男ね。安心しなさい。私じゃなくて、琉峯が作ったから」


 それから時間が経つにつれて、帝斗は、自分の視力が戻ってくるのが見えた。


 1日も経てば、視力は完全に戻った。


 「うんうん。見える」


 「私のことも見える?」


 「ああ。化粧乗りが良くない麗翔が見える」


 麗翔の一発をもらった帝斗だが、あの時の感覚が忘れられないでいるのか、目元を押さえてしばらく蹲っていた。


 「・・・・・・」


 もしももっと強い光を受けていたとして、視力を完全に失っていたら。


 もしも目が見えていないときに、死ぬほどの攻撃を受けていたら。


 もしももしも、そう考えてしまう度、ここにまだ自分がいることに、帝斗は恐怖と安堵を織り交ぜながらため息を吐いた。


 「ゆっくり休め。敵はあいつらだけじゃないんだ」


 「・・・ああ」








 その頃、1人別の部屋にいた男、丱椥。


 丱椥は鳳如の部屋に入り込むと、結界のこと、青龍たちのこと、色々と調べていた。


 丱椥には、記憶がない。それは確かだ。


 「ここは、何処だ」




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