第16話 面倒くさい連中

「おっはよー!玲子ちゃん!!」


「…あ、蒼汰さん。おはようございます」


「今日もよろしくね」


「はい。こちらこそ」


「蒼汰さん、私に挨拶してくれてませんよ?」


「あぁ、優姫那ゆきなちゃん。おっはー」


「うわー…ふるっ…。みんなに嫌われちゃいますよー。蒼汰さん。ね?玲子さん」


「優姫那ちゃん、私たち、おないどしなんだから、さんは要らないよ。ちゃんか、呼び捨てで…」


「ふーん。じゃ、俺、玲子って呼んで良いの?」


「それは駄目です」


「えーなんでー?」


「犬が蒼汰さんに嚙みつきますんで…」


「蒼汰さん、玲子さんのことはそんなに気にするのに、私になんで食事とか誘ってくれないんですかぁ?」


「あー…忘れてただけー。今度誘うよーん。ねー。玲子ちゃん♡」


「…私は遠慮しておきます。本当に、うちの犬、狂暴なんで」


「「…」」


優姫那は、キッと玲子を睨む。その視線を、敏感な玲子が感じ取らないはずもない。自分が惚れられ、いい気になってる蒼汰にも、気付かないはずもない。厄介なことに、優姫那は、変なライバル心を玲子に抱いている。そして、もう、モデルとしては十分な経験を積んでいる玲子に、ちょっと芝居は先輩だからって、ここぞと突いてくる蒼汰にも、玲子はかなりイラついていた。


(どうしたもんかなぁ…あの二人…)



優姫那は、蒼汰がすき。蒼汰は、玲子を気に入っている。まぁ、恋とは違うということは確かだろう。ただ単に、ドラマ素人で、右も左もわからない玲子を、取り込もうとしているだけだ。まぁ、単純に、はべらかして置きたいだけ。


“俺、モテルだろ?”的に。


その被害に遭っているのが、今現在、玲子、ということになっている。


(ったく…優姫那ちゃんで良いじゃん…十分可愛いんだから!)


イライラして、今日の撮影を終えた玲子に、マネージャーが話しかけて来た。


「玲子、明日、玲子の撮りないから、久々、⦅凪くんと⦆出かけてきたらどうだ?」


「いいんですか?ありがとうございます!!」


(ふぅ…久しぶりにあの二人から解放される…)


胸を撫でおろした瞬間のことだった。


「へー、玲子ちゃん、明日、撮りないんだ」


「え?あ、まぁ。でも、蒼汰さんはありますよね?」


「うん。あるよ」


「…あ、じゃあ、お疲れさまでした」


何だか、嫌な予感を抱えたまま、玲子は家に帰った。そして…。






「マージかー!!!すっげ嬉しい!!もうドラマ撮影始まってから、学校もこねぇしよぉ!!電話しても留守電だし、でも、あんま夜中じゃ玲子疲れてるだろうし、もういつ連絡していいもんか、訳解らん子ちゃんだったんだよ!!」


「…訳解らん子ちゃんは凪だよ…。まぁ、私も、こうして久しぶりに凪の声聞けて良かったよ。で、明日、凪は大丈夫なの?」


「どぅわいじょうぶ!!何時にする!?何処で待ち合わせする!?行きたいところはあるか!?そうだな、俺はとりあえず…!!」


「待て待て…なぎ」


「?なんだ」


「実は…厄介なんだよ…これが…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る