第14話 ドラマ進出

「え――!!」


「うるさい!!凪!!」


「す…すまん。てか、マジ!?」


「マジよ。私、ドラマ出れることになったの!!すごくない!?」


玲子は、フリーモデルになった時から、少しずつ考え始めていたらしい。


『女優にも、挑戦したい』と。


そして、少しずつ、事務所と話し合いながら、オーディションを受け始め、それがトントン拍子に話が進み、3つ目のオーディションで見事、ヒロインのライバル役として、出演することに決まったのだ。


「それって…ら…ら…」


「ららら?大〇摩季の曲は懐かしすぎるわね。多分、この小説を読んでくれてる人は解らないと思う」


「いや、だから、ラブシーンとか!!あったり…無かったり…?」


「アホ!ヒロイン役の子はあるけど、私は無いよ。安心しろ。このアホ凪」


「なんだよ!!それくらい心配してもいいだろう?」


「ま、その心配も現実になるのはそう遠くないね」


「な、何だって!?」


「…いちいちリアクションが大きいよ。仕方ないでしょ?仕事なんだから!!」


「で…でも…。俺は…一応彼氏な訳で…」


「じゃあ、私は仕事をしちゃいけないの?これ以上売れちゃいけないの?やりたいこと我慢して凪の為だけにこの可能性を、この才能を、眠らせなくちゃいけないの?」


いつになく、強い口調で、玲子は凪を責める。


「…そう言う…訳じゃ…ないんだけどさ」


「大事なのは、心でしょ?別にすきである事実が事実なら、それで良いじゃない」


ニコッと、玲子が久々笑った。


(…俺のこと…きっと安心させようとして、笑ってるんだろうな…。そんな風に気を使わせて…俺の我儘に付き合わせて、仕事奪うのは…やっぱ、違うんだろうな…)


「凪!来月、ルンルン買うの我慢したら、事務所に言ってデート、許してもらうけど?」


「マジ!?絶対我慢する!!」


「ふ。さすが、犬!!」


「はぁあ!?なんだそれ!!」


「従順な、愛犬のようだよ、凪くん」


そう言うと、玲子は、屋上から姿を消した。






「尻に敷かれてるどころか、ペット扱いか…。馬鹿にしやがって…」


そう言う言葉に似つかず、顔はにやついている。デートが嬉しいらしかった。





*****





「お疲れ様。玲子ちゃん、今日2人で飯でもどう?」


「あ、蒼汰さん、お疲れ様です。すみません。2人はちょっと…」


「なに?彼氏でもいるの?」


「あぁ…なんか、犬みたいのが一人…」


「いぬ…ははは!可愛い彼氏なんだね」


蒼汰は、玲子の3個上。モデルとしても、先輩だ。そして、役者としても。玲子が言っていた、ヒロインのライバル役をやるドラマの、ヒロインの相手役が、蒼汰なのだ。だから、これから、雑誌だけでなく、ドラマの現場でもしょっちゅう顔合わせることになる。



そんな、蒼汰が巻き起こす嵐を、まだ、玲子も、そして、凪だって知る由もないのだ。

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