第13話 俺の彼女は、人気者になりすぎている

「ぬぬ~…これは…何とかせねば…」


凪が、何やら悩んでいる。その手には、一冊のファッション雑誌が握られていた。そのカバーを飾っていたのが、玲子だった。


―――…のは、まだいい。まだによかったのだ。良からぬことは…。


その隣で、頬が玲子の頬に当たりそうなくらい、近くに顔をへばりつけている、男性モデルの方だった。


(ぬわんだよこいつ!!玲子に近づきすぎだろ!!なんなんだよ!!モデルってことをうまいこと使いって玲子に…!!)


凪は、1人、イライラして、玲子がクラスに登校してくるのを待った。


「おはよー」


「あ、玲子ちゃん!おはよー。見たよ!!今日発売の“ルンルン”!!蒼汰そうたくんとツーショットなんて、チョー羨ましいんだけど!!しかも、こんな近距離!!」


「あはは!!確かに、カメラマンさんに『もっと近づいて―』とかめっちゃ言われたもん」


「あーいいなぁ…。憧れちゃう♡」


「あんたが憧れないでよ。玲子ちゃんとスタイルと顔が違すぎる」


「なにぃ!?瞳だって身長155㎝しかないじゃん!!」


「うっさいなぁ!!」


「あはは!もう二人ともやめなって!!玲子ちゃんは特別なの!!」





女子のワイワイ話を耳をでかくして、聞き言っている男、凪。




(ソウタ…この近すぎ顔男…ソウタって言うのか…。人気…あんだな…。大丈夫かなぁ…)




高校3年生になって、モデルとして、ものすごい人気者になった玲子は、雑誌専属から、フリーモデルへと転身し、仕事との幅を広げていた。そうなってくると、もう、凪は気が気ではない。


最近、凪は玲子の出ている雑誌を買いあさっている。それを見たら、イラつくか、悔しくなるか、へこむか、いかるか、落ち込むか…。と、分っているのに、どうしても買ってしまう。正直言って、売れていく玲子を素直に応援できない自分がいた。小さい男だと、情けない男だと、つまらない男だと、分ってはいる。だが、どうしても独り占めしたい…と言う欲求が溜まるばかりだった。




「菅原くん」


「れ!………た、丹羽…なに?なんか用?」


「その手に持ってるのは、ルンルンね?」


「あ、はい」


「あなたは、女性雑誌を買う趣味があるの?」


玲子の眼光が鋭い。


(あ―…普通…買わね―よな―…)


凪は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。


⦅馬鹿!!そんなもの買ってたら、なんか疑われるかもしれないでしょ!?なんでそんなことも解らないの!?アホ凪!!この1週間、デートなし!!⦆


「え―――!!??」


「「「?なに?菅原くん…」」」


「「「なんだ?菅原、狂ったか?」」」


教室中のクラスメイトが、凪に視線を向ける。


「あ、いや、その…、何でもない」


はぁ…と小さく、みんなに聴こえないように玲子が溜息を吐いて、もう一度、


⦅アホ凪!!⦆


と、残し、教室から出て行ってしまった。

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