第12話 それもいいかも…

「え――――!!TGKに出る―――――――!!!???」


「うん!3回くらい、着替えるよ」


「すごい!玲子ちゃん!絶対見たい!!」


「うん。みんなの分くらいはチケット取れると思う。前の方は難しいかもしれないけど…」


「良いよ良いよ!!絶対応援するー!!」


「ありがとう」


同じクラスになって、玲子の仕事の話を聞くことが多くなった。頑張っているのだな…と思いつつ、全然相手にされていないような、寂しさを俺は感じている。


「ねぇ、玲子ちゃんてどんな人がタイプなの?だって、男子モデルとかと共演したりしてるじゃん!!」


(なにぃ!?初耳だぞ!!そう言えば、玲子の出てる雑誌、一度も買ったことなかった…!!これはミス!!ミステイク!!)


「私なら京真きょうまくんかな~」


「えー、私、響泰平ひびきたいへいくんだな!!」


(誰だ!?キョウマ!!誰だ!?ヒビキタイヘイ!?誰一人知らんぞ!!)


「私は特にいないかな?恋人って言うより、仕事仲間って割り切っちゃう方だから」


「へー…そんなもんなの?なんかもったいない」


「そんなもんだよ。ちょっとお手洗い」


「「「行ってらっしゃーい」」」


玲子が席を立つと、自然と凪は玲子を目で追ってしまった。その目を見て、


⦅ばーか⦆


と玲子が口をパクパクした。


(!あいつ!舐めやがって!!…ってマジ、俺尻に敷かれてる?)





≪ピコーン!≫


(main?あ、玲子からだ…)


『明日の土曜、久々仕事休み。遊びに付き合ってあげてもいいよ』


(マジ!?めっちゃ久しぶりのデートじゃん!もう2か月はしてなかったかも…。でも、まぁ、きっとまた荷物持ちだな…。まぁ、いっか。外で会えるの、滅多にないし…)


(分った…、おっとっと…)


『解りました。荷物持ちでも、なんでもします。喜んで』


≪ピコーン!≫


(ほほぉ…、なにやら、をしてるね…ま、いっか)


『じゃあ、10時に噴水の前で』





―次の日―


「お待たせ」


「おう。本当に30分遅れてくる女がいるんだな…驚いたぞ…」


「帰ろ…」


「待ってください!!待ってる時間、とても楽しかったです!!」


「じゃ、いこ」


「何処に?」


「まぁ、良いから」




待ち合わせ場所から、10分ほどの街のファッションビルの中に入ると、玲子は迷わず、紳士用の腕時計売り場へ向かった。


「どれがいい?」


「へ?誰かに贈るの?」


「うん。どれがいいと思う?」


「さー…俺、時計とかって詳しくないからなぁ…」


「…だと思ったよ…。期待しないで良かった。ネットで調べといた!」


「へー…じゃあ、最初から聞くなよ…傷つくだけじゃん…」


「まぁ、いいから」


玲子は、スマホの画面を見せながら、念入りに時計を選ぶ。


「ねぇ、これは?」


「あ、良いかも!!」


「え?気に入った?」


「え?あぁ…俺が気に入っても仕方ねぇか…わりぃ」


「ふふふ」


「なんだよ…」


「いいの。すみません。この腕時計、プレゼント用に包んでください」


「はい。かしこまりました」





「♪🎵♬」


「ご機嫌だな…」


「まっあねぇ♡」


「こわ…」


「は?」


また、玲子は、どす低い声を出した。


「はいよ!!これ!!」


「ん?だってこれさっき買ったやつでしょ?」


「だから、凪にあげる」


「は!?」


俺は、我が耳を疑った。


「なんで!?俺、なんか悪いことした!?」


「凪の思想はどうなってるの?今日は、凪の誕生日でしょ!!そのお祝い!!」


「あ…あぁあ!!全く忘れてた!!」


「凪はそれなりに支えてくれてるからね。このくらいは…ね」




玲子の思わぬ誕生日プレゼントに、凪は、尻に敷かれるのも悪くない…と思い始めていた。

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