第10話 ライバルの中で
「
(へー…マネージャーとか、まじいんだな…)
と訳の分からないところで感心する凪。
「凪、挨拶して」
「あ、あ、ははは初めまして!す!菅原凪です!!れ!玲子の幼馴染です!!よろしくお願いします!!」
⦅凪…そんなにどもらないで…。恥ずかしすぎる…⦆
⦅わ、わりぃ…。緊張して…。なんか、見たことある女の人がいっぱいいる…から…⦆
「玲子ちゃん、今日は彼氏同伴?」
「あ、
(誰だ…レイジ…気安く玲子をちゃん付けで呼びやがって…)
「ちょっと来て。凪」
「あ?」
「良いから。済みません。礼司さん、凪がお手洗い生きたいらしくて…。でも、スタジオ、入り組んでるんで…案内してきます」
「おう。構わない」
「すみません。行くよ。凪」
「おう…」
パーティー会場を出て、凪は言った。
「玲子、俺、別に便所行きたくないけど…」
「解ってるわよ。どうせ礼司さんによくないこと思ってたんでしょ?そのやきもきした気持ちを和らげてあげる為に連れ出してあげたの」
「あ、レイジ。確かに。何だよ、あいつ。玲子ちゃんて…。セクハラおやじか?」
「アホ。あの人はカメラマンよ!」
「カメラマン?」
「私たちを撮る時に、可愛い、素敵、良いね、素晴らしい、まぁ、時には格好いい、も言うかな?」
「は?」
「だから、カメラマンはみんな、モデルをリラックスさせたり、その魅力を引き出す為に、言葉で色々誘導する物なの。いちいち、そのレベルのことでヤキモチ焼かないで」
「ヤキモチなんて焼いてねぇ!!」
「声がでかい…。ヤキモチ…焼いてたのね…。分かりやす…。ふふ」
(やっぱ、俺、尻に敷かれてるわ…)
ちょっとからかわれて、自分だけヤキモチ焼かされて、俺はなんだか、無性に苛立った。
「じゃあ、今度のラストページ、飾るのは、玲子ちゃんで」
「え、本当ですか?」
玲子は、本当に嬉しそうな顔をしている。声のトーンは余りいつもと変わらないが…。
周りを、ちょっと見渡すと、他の女の子たちは少しこわばった表情をしている。これがいわゆる、女のライバル心なのだろう。15人くらいの敗者がいる。この中で、玲子は、この1年ちょっと、闘って来たんだ。それは、俺が想像するより、ずっと、厳しい世界なんだろう。俺が、尻に敷かれているんじゃない。俺が、ただ単に、情けなかっただけなんだ…。
そう…、俺はこの日、思い知ったんだ。
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