第7話 秘密の関係は、難しい

「よ!はよ!玲子!!」


ぎゅっ!!


思いっきり頬っぺたをつねられた。


「いってーーーーーー!!何すんだよ!!玲子!!」


⦅凪!私たちの関係は秘密。ひ・み・つ!!静かにして!!!⦆


耳元で、力強く玲子は激怒した。


「しゅ…しゅみましぇん…きよちゅけましゅ…」


「ったく!凪は!これからも、校内でも必要以上は話しかけないでよね!!」


「…わーったよ…」





付き合ってる…んだよな…?と、凪は、少し不安になった。しかし、学校中のアイドル、イヤ、芸能界のアイドル、丹羽玲子の彼氏、なんて、少し信じられない。態度を豹変されてからは、本当に別人で、きっともう自分のことなど、すきでもなんでもない…、いないも同然の存在になってしまったのだと、凪は思っていた。



「なーぎくん!」


「んあ?」


「幼馴染っていいよなぁ…」


「なんだよ、いきなり」


「昨日、見た奴がいるんだよ、お前と玲子ちゃんが2人で歩いてたって…。マ!ジ!?」


「…あれは、本当に幼馴染だから、出来た行動です」


「あ?」


「事務所が、幼馴染の俺なら、外歩くの許してくれたんだと」


「あ~…な~んだ!幼馴染だからなんだね~!!つまりは、交際に発展することは無いってことね!?」


「…あぁ…。だな…」


(へっ。俺は、玲子の彼氏だよ!…尻に敷かれてるけど…)


言いたくても言えないことがある…。それが、嬉しいことならなおさら、言いたくなる。それが人の心情だ。


「でも…一つ…!!!!!」


ギラリッッッ!!!!!!!


とんでもない視線が突き刺さって来た。


顔を、教室の扉の方に向けると、そこには、クラス委員の仕事でたまたま来ていた玲子が、恐ろしい形相で、凪を睨んでいた。


(すすすすすすすみません!!!!)


アイコンタクト送ると、慌てて、


「でも一つ言う!丹羽は、今誰のこともすきじゃないらしい!!」


「あ…………そ…………」


その様子を見届けるように、玲子は、フイッとスカートを翻して、教室を出て行った。


(あーーーーー…つかれる…)


それでも、訳も分からず、無愛想になられ、無視され、冷たくされ、呼び捨てにされ、もうどうしようもないほど、幼馴染のプライドを傷つけられた。それを想えば、こんな秘密守っていれば、守り続けているならば、玲子と最低限、事務所公認の彼氏ではいられる。それだけで、まぁ、良しとしよう。と、思う凪だった。




「凪!」


「ん?れ…丹羽…なんだよ…」


(小笠原さん、どうするの?)


こそっと、玲子が耳打ちした。


「え?誰だっけ?」


「凪…あんたサイテーね」


「んだと?」


⦅凪に辞書貸してくれって言われて、素直に貸してくれた女の子!凪が優しい言葉かけたり、態度取ったりするから、惚れちゃってるよ?⦆


「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!????」


⦅どうすんのよ!?⦆


⦅玲子、どうにかしてくれよ⦆


⦅馬鹿!そう言うのは、一番女の子を傷つけるの!!自分でちゃんと処理しな!じゃなきゃ、もう私の彼氏、降格ね!!⦆


「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!????」


「いちいちうるさい!!じゃあね!」




(やっぱ俺…尻に敷かれてるわ…)

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