第3話 ブランニュー玲子
玲子が、その態度を一変させたのは、高校に入って2か月が過ぎた頃だった。急に背が伸び、薄っすらと化粧をしたら、長いまつげがバチバチと音を立て、白い肌が陶器のような艶を放ち、くちびるはぷるんと男がキスしたいくちびるNO.1に違いないようなアヒル口になった。
「丹羽、かわいー!!俺、めっちゃタイプ!!」
「だよなー!!あんな美人が彼女だったら、毎日街中引き連れ歩きたいぜ!!」
「……」
俺は、そんな男子たちの会話に、何だか自分のものを盗まれているようで、宝物を汚されているようで、いたたまれない想いを抱いていた。
しかし、そんな俺と、玲子の関係が一変する出来事が起こる…。
俺は、屋上の出入り口の上の天井で、昼飯を頬張っていた。その時―――…。
ガチャリと、屋上の扉が開く音がした。
そこに現れたのは、何となく見覚えのある、同じ学年の男子と…、
(れ!玲子!?)
俺は、思わず口に含んでいた牛乳を吹き出しそうになった。これは、まさに、告白の瞬間!?と、俺は焦った。何に焦ったのかも解らなかったが…。
「丹羽さん、俺、君のことがすきなんだ。出来れば…彼女になって欲しいんだけど…」
(ど!どうすんだよ!玲子!!)
俺は、ドギマギした。
「ごめんね。私、来月からモデルの仕事が決まってるの。今はそっちの方が大切だから、お付き合いとかは出来ないかな…」
(モ!モデル!!??聞いてねぇぞ!!)
「モ!モデル!!??丹羽さん、モデルになるの?」
「うん。この間スカウトされたの。学校にも許可は取ってあるし、勉強も私、得意だから、問題ないって、先生にも言われたよ」
「そ…そうなんだ…」
「じゃあ。行くね」
そう言うと、玲子は、さっさと屋上から出て行こうとした。―――――…その時。
「それと、そこの人!盗み聞きとはサイテーね!あなたにサイコーな天罰が下ることを祈ってるわ!!」
「はぁ!?なんだよそれ!!むごっ!!」
言い返して、思わず口をつぐんだ。
「…やっぱりいたんんだ…凪…」
「な!凪!?いつから呼び捨てだよ!!」
「今からよ!!悪い!?もう私は凪の後ろをついて回って、いつも笑顔で、何でも許してあげる丹羽玲子じゃないから!!」
「なんだよそれ!!」
「そのうち解るわよ。あなたと私は、もう反対だってね…」
そう言うと、屋上の扉を強く閉めると、玲子は出て行った。
「なんだよ…あいつ…。凪…って、いきなり呼び捨てにしやがって…。俺のおっかけのくせに…」
と、その時の俺は、本当にそう思っていた。これから、この高校の男子のほとんどが、玲子の追っかけになること、玲子が言った、『あなたと私は、もう反対と言う言葉の意味を全く、理解していなかったのだ。
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