おまけ②【男の友情】






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おまけ②【男の友情】


 おまけ②【男の友情】




























 「はー・・・気持ち良い・・・」


 ソルティが1人で湯に浸かっていると、そこにジンナーが入ってきた。


 髪の毛が短くなっているジンナーをじっと見ていると、身体などを洗い終えて湯に浸かろうとしていたジンナーと目が合った。


 数秒見つめあった後、ジンナーは縁の方に背中を向けて湯に浸かり、縁に腕を乗せて息を吐く。


 しばらく2人は何も喋らなかったが、意外なことにジンナーが先に口を開いた。


 「お前誰だ」


 「・・・それが第一声?」


 「見覚えあんだけどな。思い出せねえ」


 「ソルティ。髪切ったしね」


 「ああ・・・ああ!あれだ!俺らがここ襲撃したとき流風と戦ってた奴だ!だから見覚えあったのかー、あー、そうかー」


 「あの2人、君のこととても心配していたよ」


 「・・・お前さあ、あれわざとか?」


 「?何がだい?」


 ジンナーの言葉にソルティが首を傾げると、ジンナーはやれやれと言った具合に肩で笑いながら笑う。


 本当に何を言っているのか分からないようで、ソルティは苦笑いで返す。


 手で湯を掬って顔にばしゃっとかけると、そのまま前髪をかきあげて話す。


 「あのシェリアっていう女とか、流風に対する態度だよ。女に甘いのは結構だが、単に甘やかすのと可愛がるのは別だろ?」


 「甘やかしてる心算はないんだけどな」


 「励ましてると思ってかけた言葉が、相手にとっては好意の言葉と捉えられることもある。お前の場合、あのシェリアって女が良い例じゃねえか」


 「シェリアちゃん?」


 「そもそもそれだ。なんでちゃん付けなんだ?空也の野郎はたらしだから別として、わざわざちゃん付けって。子供じゃねえんだから」


 「そうかな?女の子ならちゃん付けでいいんじゃないのかな?ちゃん付けじゃない方が勘違いされると思うんだけど」


 「・・・なんつーかな。空也がちゃんを付けるのと、お前が付けるのとじゃなんか違うんだよ。空也は適当にあしらえるちゃん付けだけど、お前のは勘違いさせるちゃん付けなんだよ。現にあのシェリアって女、お前に惚れてるじゃねえか」


 「シェリアちゃんが俺に?それはないじゃないかな?俺のことお兄ちゃんくらいにしか思ってないと思うけど」


 「なんだ、この空也よりも扱い難い感じのタイプ。初めてだわ」


 「そんなこと言うなら、流風ちゃんだって君のこと好きだと思うけどな」


 「流風が?ねえだろ」


 「俺が見た限り、そういう感情があると思うね。前に君たちと会った時は無かったかもしれないけど、今回会って確信したよ。絶対あるね」


 「自分のこと棚に上げてよく言うな」


 「君の方こそ、流風ちゃんが抱きついてきたときに頭撫でてたじゃない」


 「あ?デュラにもしてただろうが。それに頭撫でるだけでなんでそうなるんだよ」


 「わかってないね。女の子はそういうの好きだからね。俺もたまに癖でやっちゃうけど、空也に注意されたから気を付けてるところ」


 「あいつにその資格はねえ。つか、癖でやるような奴に言われたくねえから」


 「君も自然にやってたよね」


 「うるせえな。デュラもいたんだからいいだろ別に」


 「君に弄ばれてる流風ちゃんが可哀そうだよ」


 「お前何目線なわけ?だからな、シェリアってやつは本気でお前のこと好きだけど、流風はねえって。あいつはそういうのねぇって」


 「わかってないな」


 「いやお前だから。なに、この空也より面倒臭い感じ。あいつは自覚あるけどお前ねえもんな」


 「じゃあ君どんな子がタイプ?」


 「いきなりだな。考えたことねぇよ」


 「なら、シェリアちゃんと流風ちゃんならどっち?」


 「なんでその2択なんだよ。究極すぎるわ。お前のタイプ先に言えよ」


 「俺?・・・・・うーん・・・タイプかあ難しいなぁ・・・」


 「お前それを俺に聞いたんだからな。さっきお前が聞いてきた究極の2択から答えりゃいいだろ」


 「難しいよ。シェリアちゃんにはシェリアちゃんの良さがあるし、流風ちゃんには流風ちゃんの良さがあるからね」


 「とんだたらし野郎だ」


 するとそこへ、空也が入ってきた。


 「おー!!珍しい組み合わせだな!!なんだ?男同士の話でもしてたのか!?女の子の話でもしてたのか!?」


 手前にいるジンナーに頭を叩こうと勢いよく近づいてきた空也だが、ジンナーがひょいっと避けてしまったため、そのまま湯に落ちた。


 ぶは、と顔を出す頃にはすでにジンナーは脱衣所に到着するところだった。


 その時、思い出したように言う。


 「空也、女口説きたいならそいつに教わった方がいいぞ」


 そう言ってジンナーが去って行くと、ぽかんとしていたソルティのすぐ横に、恐ろしい顔をした空也がいた。


 普段の空也からは想像も出来ないほどおぞましいもので、ソルティは笑みを引き攣らせていた。


 「ソルティ、お前誰か口説いたの?どうやって口説いたの?勝算は?勝率は?どんな子を口説いたの?なんで口説いたの?そもそもソルティって口説くの?俺が女の子大好きなの知ってて口説いてるの?」


 「く、空也落ち着いて・・・」


 「ねえねえソルティ、教えてよ」


 「空也、怖い・・・」


 その後、なんとか逃げ切ったソルティは、しばらく女の子と話さないようにしたとか。


 空也はソルティにつきっきりになり、ジンナーはその様子を見て、特に笑うでもなく憐れむでもなく、大きな欠伸をした。


 「なんでこんなことに・・・」


 「ソルティ!どうやって口説くんだよ!」




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