第5話 戦いの準備
雨戸の隙間からうっすらと優しい日が差し込み、室内の埃が光の帯の中をふわふわ漂っている。川の流れる音と鳥の
ゆっくりと
「
昨夜
何とも律儀だ。
夜中は、
―― まさかっ!?
しかし、それは昨夜と同じ場所に立て掛けられていた。何も変わったところはない。
―― 私は
自己嫌悪に落ち込みながらも、
板張りの床がキシキシ軋む音が懐かしく、足の裏がひんやりしていて気持ちがいい。
囲炉裏には昨日の味噌汁が暖められていた。
だが……ここにも
「
もちろん、
ふと
―― 部屋の中に石?
「なんだ? 汚い字だな……」
紙切れには汚い文字でこう書かれていた。
『でかけてくる。おとなしくまってろ』
米くらい炊く方法は知っている。でも人ん家の物をいろいろあさるのはどうかと思う。
「暇だな」
「もうすぐ、あの人が帰って来ますよ」
急に後ろから話しかけられて、
続いて、小さな子どもの、パタパタパタパタっと言う足音が聞こえてきた。
「
「さ、
「ほ~ら。
「
手を止めて、エプロンのような腰巻きで手を拭きながら
「あ……。えっと……」
「クスっ。良いのですよ。私たちも何故未だにあの人が戻ってくるのを待ていられるのか、わからないのです。でも、戻ってくるあの人を迎えることができて……私は本当に幸せ」
「ここに戻って来るまでは、どこで何をしてるの?」
「難しい質問だわ。あの人にも聞かれたことがあったけれど……、基本的には眠っているような感覚に近いと思うんですよ。暗闇の中で水の中を漂っているような。そして、目が覚めると……ここであの人の帰りを待っている。そんな感じ」
そんなことを考えていると、少し遠くから大きな声が聞こえてきた。
「帰ったぞ」
「とーたんっ!」
「お帰りなさい。あなた」
「
「うん!」
元気な
でも一つだけ言える。
「お、
「えっ?」
「お前も、その……。年頃の娘だしな。あ~深い意味はないぞ」
そこには真っ白な木綿の薄手の布が包まれていた。
「これは……?」
「それはだな……」
「これは、”さらし” ですね」
「さらし?」
「何度も言うようだがな~、深い意味はないからな。これから鍛えていく上で胸はやっぱり固定されていた方がいいだろうと。そう……、そう! 親心だ!」
「あははは。
「あなた。笑わせないでくださいませ。あ~お腹が痛い」
「い、いや。な~
「
「
「おーそうしてやれ」
こうして
しかし……
それは
「
「あ~これか? これは
「ふ~ん」
「ほら、これをお前にやる」
ガシャガシャと音を立てながら、
「鍛えているうちは、必要ないがな。実践になった時少しは防御できるものがあった方が安心だ。そんな裸同然の着物一枚で
「
「そんな目で見るな。照れるじゃねーか」
「ま、そのうちお前が気に入った防具に出会うだろう。それまでそれで我慢しろや」
「あ、ありがとう」
じゃ~そろそろ寝るか。などと話をしていた矢先、戸を叩く音が聞こえた。
咄嗟に刀を構え、部屋の中に緊張が走る。
ドンドン。ドンドン。
「
若そうな女の声が聞こえてきた。どうやら
「今開ける」
戸が開くと、そこには遊女のような恰好をした女性が立っていた。
「中に入っても?」
「あぁ。どうした? こんな時間に」
女は
「あ、あんた……。とうとう
「
「でも……。どう見たって」
「こいつは俺の相棒の
「わかった、わかったわよ。そんなに怒らないでよ」
この部屋に不釣り合いの
そして
「仕事だよ」
その一言で、
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