第3話 左文字との出会い
「ここにいたか。
男の声が聞こえた。
月明かりを背にしているので、声の主の顔や表情は見て取れない。殺される……。
男は一歩、また一歩
ギギギギ……。
―― 何の音?
シュッ。
あっという間の出来事だった。シュッという音と共に
「ギャァーーーーーーーーーっ」
男が放った矢は
餓鬼は勢い余って後ろに転がりぶっとばされ、岩にたたきつけられた。まだ息はあるらしく、手足がピクピクしている。
「ちっ。外れたか」
この男が
「大丈夫か?」
男は
男の手はとても暖かかく、緊張していた
祖父
だから、
「ほぉ〜。これはまた不思議な
「なっ」
「おっと、やめときな。その刀は売り物だろ? 一度血を吸わせた代物は、そのままでは売れなくなるぜ。刃こぼれなんかしたら、尚更だ。それより……、お前もあれが見えるんだな?」
男は先ほどの餓鬼を顎でさし、
「あれは何だ?」
「あれはな。餓鬼っていう
「ってか、お前そんなことも知らないのか?」
「あのまま放っておいていいのか?」
「あぁ〜、そのうち力尽きるさ」
餓鬼は痛みに苦しんでいるように見えた。
「あ、おい」
男は弓に手をかける。もし、
瞬殺だった。
シュッと刀が空を切ったかと思った瞬間、餓鬼の頭が吹っ飛んだのだ。
餓鬼は悲鳴もあげず
後には男が放った矢だけが残されていた。そして
「無駄に苦しめるのはお互いのためにならない」
「そうだな。お前……。名前は?」
「……」
男には、鍛上げられた体に無数の傷がある。きっと多くの修羅場を経験してきたのだろう。腰に刀、背に矢筒を背負い、今は左手で大弓を握りしめている。よほど弓には自信がありそうだ。
「名前、ないのか?」
「
「
「お前は……誰だ?」
「俺か? 俺は
「
「どうかな? お前が人間に害をなすものだと分かったら、その時は狩らしてもらうよ」
そんなことを思いつつ、
里に下りてきて、初めて信じても良さそうな人間に出会えたのだ。何より
月明かりの中、二人が出会った里から川の上流付近に
大人と、そしてまだ幼さの残る少女。月明かりに二人の影が長く伸びていた。
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