第46話

 翌週の月曜日。 今はお昼休み中だ。


「矢内君ー」

「うん?」


 俺は自販機に飲み物を買いに行こうと廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。 俺は一旦立ち止まって後ろを振り返ってみた。 するとそこにいたのは……三年の小山内先輩だった。


「あ、小山内先輩。 お疲れさまです」

「うん、お疲れ様ー」


 俺は小山内先輩に向かってそう挨拶をすると、先輩もいつも通りの朗らかな笑顔で俺に挨拶をし返してくれた。


「矢内君は今から何処に向かう予定だったの?」

「飲み物を買いに自販機に行こうとしてる途中でした」

「あ、そうなんだね。 実は私もちょうど飲み物を買いに行こうとしてたんだ。 だからもし良かったら一緒に付いていってもいいかな?」

「はい、もちろん良いですよ」

「うん、ありがとう!」


 そんな感じでひょんな事から俺は小山内先輩と一緒に自販機を目指す事となった。


(それにしても、先輩と会うのは久々だなぁ)


 三年生は既に自由登校となっているので、学校内で小山内先輩と会うのは本当に久々だった。


 という事で改めて、俺の目の前に立っている生徒の名前は小山内明日香という女子生徒だ。 この学校に通う高校三年生で、身長は155センチくらいで全体的にスレンダーな体型をしている。


 髪型は少しだけ明るい茶髪のセミロングヘアをサイドテールにしており、見た目は綺麗系ではなく可愛い系に分類される感じだ。


 そしてそんな小山内先輩は俺と同じく文芸部に所属しており、性格はとても明るくて優しい女子の先輩だ。


 まぁでも、以前にも言ったように文芸部は俺と小山内先輩の二人しかいないため、このままだと来年の文芸部員は俺1人だけとなってしまう。


(うーん、でも流石にこんな大事な時期にそんな相談するのは申し訳ないよなぁ……)


 それに先輩に変な心配もかけさせたくはないので、文芸部の問題についてはしばらくの間は黙っておく事にした。


「ふふ、それにしても矢内君と会うのって何だか久々な気がするね」

「……えっ!? あ、あぁ、はい、そうですね。 先輩は受験対策とかはどんな感じですか? もうバッチリな感じですか?」

「うーん、まぁぼちぼちかなぁ。 出来る事は全部やってきたつもりだけど……まぁでも結果が出るかどうかまでは本番の日にならないとわからないよね」

「あぁ、なるほどー。 まぁでも小山内先輩なら大丈夫ですよ! 俺も全力で先輩が志望校に受かるように全力で祈っていますし!」

「あはは、それは心強いなー。 うん、ありがとね、矢内君」


 そんな感じで俺は先輩に向けてエールを送ると、先輩は嬉しそうな顔をしながらそう言ってきた。


「……あ、そうだ。 そういえば先輩に渡そうと思ってた物があるんですけど」

「え、私に? 一体何かな?」

「いや実は少し前に初詣に行ったんですけど、その時に先輩用に合格祈願のお守りを買っておいたんですよ。 そのお守りを先輩にお渡ししたいんですけど、今日の放課後とかって時間空いてますか?」

「え、本当!? うわぁ、それは嬉しいなぁ。 うんうん、もちろん時間あるよー!」

「それなら良かったです。 それじゃあ放課後に部室に来てもらえますか?」

「うん、了解だよ。 ……って、うん? 何で部室なの? 矢内君の教室まで全然取りに行くよ?」

「あぁ、いや先輩にいつ会えるかわからなかったんで、とりあえず買ってきたお守りは部室に置いといてたんですよ」

「あ、そっかそっか。 確かに自由登校になってるから最近私あんまり学校に来てなかったもんね」

「ですよね。 だから先輩が受験本番になる前にお守りを渡せそうで良かったですよ」

「あはは、確かにね! せっかく矢内君が合格祈願のお守りを買ってきてくれたのに、受験が終わった後に渡す事になったら残念だもんね。 うん、わかった、それじゃあ放課後は部室に行くね!」

「はい、わかりました」

「あ、それじゃあせっかくだしさ、今日はそのお守りのお礼に私が飲み物奢ってあげるよー!」

「え、本当ですか? ありがとうございます!」


 という事で今日のお昼休みは小山内先輩にジュースを奢って貰った。 そして今日の放課後はお守りを渡すために部室に集合する約束もした。


(……あ、水瀬さんに連絡しとかなきゃだな)


 いつも放課後は水瀬さんと一緒に帰っているので、今日は先に帰って貰うようにラインでメッセージを送る事にした。

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