第25話(由美視点)
(由美視点)
『うん、わかった。 じゃ、じゃあおやすみー』
「うん、おやすみー」
―― ぴろんっ♪
夜12時前。 矢内君との通話を終えた私は足の指をぱかぱかと開きながら先ほど塗ったペディキュアを眺めてみた。 通話が終わった頃にはちょうどペディキュアも乾いてくれていた。
「うん、良い出来じゃないかな?」
今日は少し前に買ってきた新色を試しに縫ってみたんだけど、思っていたよりもだいぶ綺麗に仕上がってくれたので私としては大満足だ。
「ん、ん-……ふぅ」
私は一旦立ち上がって背伸びを始めた。 一時間近くも座りながら作業をしていたので、流石に体が凝ってしまった。 うーん、それにしても今日はよく喋ったなぁ。 普段は矢内君の方が積極的に話しかけてきてくれるから、アタシは聞き手に回る事が多かったんだけど、今日の矢内君はアタシに色々と話しかけてきてくれたので、何だかいつもよりは沢山話した気がするなー。
「それにしても……矢内君って不思議な男の子だよね」
私はそう呟きながらこの数週間の出来事を思い出してみた。 もちろんその出来事とは矢内君とのお付き合いについてだ。 ……いや、まぁお付き合いと言ってもそれは嘘なんだけどさ。
アタシは友達との罰ゲームで矢内君に嘘の告白をしてお付き合いをする事になった。 そしてもちろんこれは嘘のカップルなので、近い内にアタシの方から振る事は確定している。 まぁだけど、アタシは嘘を付いているという自覚はあるし負い目もあるから、付き合っている間は矢内君がしてほしい事はなるべく聞いてあげようとは思っていた。
だけどもし……矢内君がエッチな事を要求してきたら、アタシは即座に別れようと思っていた。 理由はエッチな事は本当の彼氏以外とは決してしたくないからだ。 だから申し訳ないけど、本当の彼氏ではない矢内君にエッチな事を要求されてもアタシは応じるつもりは全くないし、そういう事を要求してきたらアタシはすぐに別れる気でいた。
でも矢内君はアタシと付き合ってから今の今まで、アタシにエッチな事を一切要求してこなかった。 アタシはその事にとても驚いてしまっていた。
だって今まで付き合ってきた彼氏は何というか……例えば付き合って二日目でもうエッチがしたいと言ってきてラブホか自宅に連れて行こうとするのが当たり前だった。 あとは今まで付き合ってきた元カレの話を執拗に聞いてきては勝手に嫉妬してきて、かなり乱暴なエッチをしてくる奴とかもいた。
だから矢内君も今までの元カレ達と同じで、付き合い始めたらすぐにエッチをしたがるんだろうなぁと正直思っていた。
まぁでも今までの元カレ達と比べると矢内君はかなり大人しい子だから、付き合ってすぐにエッチな事を誘ってはこないかもしれないけど……それでも1週間も経てば必ずエッチに誘ってくると思っていた。
それで、矢内君からエッチをしたいと誘われたら、アタシはそういうのは好きじゃないからと言ってそのまま矢内君と別れるつもりでいたんだけど……でも1週間経っても2週経っても、一向に私にエッチな事を要求してくる気配がなかった。 アタシはこの事に対して内心とてもビックリとしてしまった。 だってアタシが今まで付き合ってきた元カレたちの中で、こんなにも長い期間エッチを誘わないような男は一人もいなかったんだから。
(うーん、なんで誘ってこないんだろうなぁ……?)
その当時、アタシは何で矢内君がエッチに誘わないのかの理由を考えてみたんだけど、でもその理由をアタシはすぐに思いついた。 そういえば私達って大人しい男子グループから陰で結構酷い事言われてたっけ。 “ギャルはビッチで汚らわしい”とか“処女以外に価値はない”とか“中古女とセックスする男はバカ”とかとか。 そういう事を陰でコソコソ言ってる男子グループがあって、それを聞いたアタシの友達とかはかなりブチギレていたっけ。
だからきっと矢内君もそういうグループの子なんだろうなと思った。 女の私からしたら全然理解出来ないんだけど、でもきっと矢内君もいわゆる処女厨(?)ってやつなんだろうな。
それで矢内君はギャルなアタシの事をもしかしたら非処女の汚らわしい女なんじゃないのか? と、疑っているからアタシに手を一切出してこないんだろうなという結論に至った。
(もしそう思われてるのだとしたら悲しいけど……まぁでも処女じゃないのは本当だししょうがないか)
それなら矢内君の意思というか思想を尊重して、いつかキリの良いタイミングを見計らってアタシは処女じゃない事を伝えて、矢内君から別れたいと思ってもらうようにしてあげようと考えた。
しかしそれから一週間後、最悪のタイミングでアタシが処女じゃないという事が矢内君にバレてしまった。 全てはあのカス(元カレ)のせいだ。 不運にもアタシは矢内君と一緒に帰宅している時に史上最低の元カレとバッタリと遭遇してしまったんだ……
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