第8話
「これで……よしっ!」
翌日の早朝。 俺は学校に持っていくお弁当の準備をしていた。 いつもは学食を利用しているんだけど、今日は久々にお弁当を持っていく事にした。 その理由はもちろん水瀬さんと初めて一緒にお昼ご飯を食べる事になったからだ。
(いやまさか水瀬さんがオッケーを出してくれるなんてね!)
ダメ元でラインを送ったんだけど、まさか了承してくれるなんて本当にビックリだよ。俺が想像していた水瀬さんって、俺達みたいな陰寄りの人間にはかなり厳しい女子なんだろうなって思ってたんだけど全然そんな事ないんだよな。 いやでも俺の見てない所ではボロクソに俺の事を言ってるのかもしれないけどね?
それに噓告白をする前日に言ってたけどさ、俺の事をバチクソに振るまでの間に良い夢見させてあげなって周りのギャル達が言ってたから、今の水瀬さんはそれを実行してくれてるだけなんだろうな。 ……って、えっ? そ、それってつまりさ……
(つまりもう少し踏み込んだお願いも聞いてくれる……ってコト!?)
いや嘘だよ嘘! そんな踏み込んだお願いなんてするつもりは一切ないからねっ! だって調子乗って水瀬さんに嫌われたら一瞬で振られる事になるだろうしさ。 どうせ最終的に振られるのはわかってるから、それなら少しでもこの恋人関係を長く続けていきたいじゃん??
(いやでもお昼ご飯を一緒に食べたいって言っただけで調子乗ってるって思われてたらどうしよう?)
う、うーん……まぁそん時はそん時って事で。 まぁぶっちゃけ俺も自分の事を調子乗ってるなって思ってるしさ。
という事で話を戻して、今日は水瀬さんと初めて一緒にお昼ご飯を食べる事になったので、俺は久々に学校に持っていくお弁当を用意した。 しかも冷凍食品やお惣菜などは使わずにちゃんと手作りのお弁当だった。
今日のお弁当の内容は豚の生姜焼きにほうれん草のおひたしと卵焼き、あとは彩りにプチトマトを入れたシンプルなお弁当にしてみた。
「まぁ久々に作ったにしては上出来じゃね?」
俺は自分で作ったお弁当を眺めながらそう頷いた。 俺の両親は共働きで夜遅くまで働いているので、俺は子供の頃から家事については一通り出来るようにしていたんだ。 だから料理に関しても俺はそれなりには出来る方だった。
流石に料理が趣味の山田とかと比べたら料理の腕は全然だけど、まぁでも平均以上には料理は出来ると思う。
(後は一緒に食べる場所だけど……)
水瀬さんとお付き合い(嘘)をしている事は誰にも言えない秘密となっているので、学食や普通の教室を利用する事は出来ない。 だってそんな所を利用しちゃったら他の生徒に見られちゃうからな。
(ここはやっぱり部室を使うしかないよなぁ)
という事で今回は俺が入部している“文芸部”の部室を使わさせてもらう事にした。 文芸部は俺が入っている部活なんだけど、部員は俺と三年生の先輩の二人しかいない部活だった。
しかも三年の先輩は最近引退したので今現在は俺一人だけの部活となっている。 だからこの部室なら一緒に入ったりしない限りは絶対にバレる事は無いはずだ。 という事で俺はお昼ご飯を食べる場所についてをラインで水瀬さんに伝えた。
「……うん、よしこれで準備はオッケーかな」
これであとはお昼休みが始まるのを楽しみに待つだけとなった。 そういえば水瀬さんは普段学食では見かけないから、いつもお昼はお弁当なのかな?
(水瀬さんのお弁当か……いやめっちゃ気になるなっ!!)
水瀬さんの見た目はとてもスレンダーな体型をしているから小食そうだよな。 それだとお弁当も可愛らしい感じなのかな? それとも逆にガッツリと食べるタイプだったりするのかな?
そして欲を言えば水瀬さんのお弁当を一口くらい頂けたら最高なんだけど……いやそれは流石に調子乗りすぎですよね。
(……うん、まぁ今日は初めての二人きりでのお昼ご飯なんだし、あまり余計な事は考えずに今日を楽しもう!)
俺はそう思いながら先ほど作り終えたお弁当箱を鞄に入れて、そのまま学校へ行く準備をどんどんと進めていった。
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