第7話(由美視点)

(由美視点)


―― ピコンッ!


「んー?」


 今は授業終わりの昼休み。 アタシは友達と一緒にお昼ご飯を食べていたんだけど、その時私のスマホから通知音が鳴った。 どうやら誰かからラインが届いたようだ。 私はスマホを開いてそのラインを確認してみた。 するとそれは……


「……あー」

「うん? どうしたの由美?」


 ―― もし良かったらお昼ご飯を一緒に食べませんか? バレ防止のために空き教室は事前に探しておきますので!


 そのラインの内容は、一緒にお昼ご飯を食べたいという矢内君からのお誘いだった。


「いや、矢内君からのラインだった」

「え、マジで!」

「あはは! あのガリ勉オタクが由美にライン送るとかクソ生意気じゃんww」

「いやマジでそうだよねw 告白されて調子乗ってんなアイツww」

「それで? ラインの内容は何て??」


 アタシが矢内君からラインが届いたと言うと、周りの友達は笑いながらそう言ってきた。


「んー、一緒にお昼ご飯を食べませんかって」

「うわっ! アイツ絶対に調子乗ってるわww」

「うん絶対にそうだよねw アイツ由美と本気で付き合えてると思ってんのかな??」

「いや本気で思ってるからそんなライン送ってきたんでしょw あはは、全然釣り合ってないのにねww」

「いやでもさ、何か最近のオタク界隈でさぁ……“オタクに優しいギャル?”ってのがめっちゃ流行ってるらしいよ??」

「へぇ、何それ? オタクに優しいってどういう事?」

「いや何て言うか、オタク君の趣味とか行動とかに全部理解してあげる優しいギャル的な? 知らんけど」

「は、はぁ!? 何それ馬鹿じゃねぇの?? んなの現実にいるわけないじゃんw オタク君達夢見すぎだろww」

「本当本当ww いやもしオタク君達が私らに相手にされたいってんならさぁ……少しはコミュ力上げろよって言う話だよねww」

「マジでそれなw 話しかけてもアイツら人の顔見ないでずっと俯きながら話してくるし一体何なの?? ふざけとるよなぁ??」

「めっちゃキレとるやんww やばww いやでもさぁ、オタク君はオタク君でも……めっちゃイケメンのコミュ力抜群なアニメオタク君とかだったらどうよ?」

「いやそれはオタク君とは呼ばねぇよww ってかそれなら普通に彼氏にしてほしいわw そんな高スペ彼氏だったらどんなオタク趣味でも全肯定してあげちゃうわw」

「あはは、注文多すぎでしょーww」


 ……とまぁ、こんな感じで今日も私の周りではオタク君トークで盛り上がっていた。 ちなみにアタシは周りに居る子達とは違ってオタク君達の事を馬鹿にしたりする事はない。


 でもそれは決してアタシがオタク君達の事が好きだからとかいう理由では無くて、単純に彼らに対する興味が無いだけだ。 興味が無い人間に対してそこまで熱く語れる程アタシは頑張れないからね。


 だからぶっちゃけた話、アタシが矢内君に噓告白をするというの罰ゲームを受け入れたのも、アタシは矢内君に対する興味が全く無かったからだ。 もし好きだったり嫌いだったりっていう感情があったら絶対に断ってたと思うし。


「それで? 由美はどうするん??」

「んー、まぁ別に断る理由も無いし明日辺り一緒に食べて来ようかな」

「あはは、いいじゃんいいじゃんww オタク君と一緒に食べてあげるなんて優しいねぇw」

「あ、それならアレとかしてあげたら?? 恋人らしくさぁ……あーんとかしてあげればww」

「うは、由美にそんな事やらせるの??w あはは、面白そうじゃん!w もしやるようだったらアイツがどんな顔してたかとか後で詳しく教えてよww」

「んー、まぁ気が向いたらねー」


 という事で友達からは一緒にご飯を食べてきなよと言われたので、アタシは矢内君に“良いよ”と返答のラインを送っておいた。 これで明日は矢内君と付き合ってから初めての二人きりでのお昼ご飯を食べる日となる。

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