第239話 訪問者
「おお! ならほどね、ここまでが実は、一種のチュートリアルだったのか」
俺は、感嘆の声をあげる。
エピソード4にまで進んだことで、これまでのダンジョン攻略と拠点経営、それに加えてフルダイブによるアクション中心だったエピソード3までより、ダンジョン&キングダムは、戦略シミュレーションの雰囲気が強くなっていた。
「途中でゲームジャンルを変えてくるの、実は苦手なんだけど。でも、これぐらい親切設計なら、やり易いな」
俺が混沌たちのうち、貢献度の高いキャラを叙勲したあとから、混沌たちの拠点を襲ってくる敵が強くなっていたのだ。
とはいえ、叙勲して強化した混沌なら問題なく倒せるレベルだ。
「なるほどねー。全キャラを強くさせるんじゃなくて、ユーザーの選んだキャラをうまく運用しないといけない訳か。敵の強さもちょうど良いし、運用がきつすぎない感じで、やりくりさせるる、と」
なかなかバランスが良いせいか、ユニットを運用していくこと自体が面白い。
さらに叙勲させるときに読んだ貢献度に関するフレーバーテキストに則って、混沌たちのスキルが強化されたり変化していて、それぞれ個性があるのだ。
戦闘時のスキルのエフェクトも派手だったり変わっているのが多くて、それだけでも見ていて飽きない。
しかも、フレーバーテキストを読んだことでその背景を知っていてるので、感情移入もしやすかった。
「やっぱりこのエピソード4からが、ダンジョン&キングダムの本番って感じみたいだな。あ、敵の侵攻、隙が出来た。これは反攻して大丈夫、だよな。尖兵にするユニットは……うん。ゴゴにしよう」
ぽちぽちとコントローラを操作する。
中隊程度のダークコボルドを率いて進軍を開始するゴゴ。
画面のなかでは槍を振り上げ、兄弟たるダークコボルドたちを鼓舞している。設定された性格が真面目なようで、煽りが足りないのか、ゴゴの鼓舞はあまり効果を発揮していない。
しかし、ゴゴの真価は別のところにあった。
もともとテイマースキル持ちのゴゴだったが、叙勲に際してそのスキルが変化していたのだ。
そのスキル名が「騎獣召喚」。
ダンジョン&キングダムの画面で、ちょうどゴゴがその変化した新スキルを使用していた。
派手派手しいエフェクトとともに、いくつもの魔法陣が地面に展開されていく。
それも、ゴゴの率いるダークコボルド一体につき、一つ。
そこから、騎獣が現れる。
「ダチョウ──? いや、これはガチョウかっ!」
現れたのは、ダチョウサイズのガチョウだった。ガチョウはガチョウだったが、刺々しい装具を全身にまとい、黄色い嘴からはなぜか鋭い牙が生えている。
そして小柄なダークコボルドたちに比べると、いっそう際立つ、そのダチョウサイズの体躯。
一見してまがまがしく狂暴で、そして何よりも、強そうだった。
ダークコボルド達が身軽な様子でその巨大なダチョウの背へと駆け上がり、羽と羽の間に騎乗していく。
全員がガチョウに騎乗したところで、ゴゴの掛け声とともに、一斉にガチョウ達が駆け出す。
それは壮観の一言だった。
そんなガチョウ騎兵と化した一軍の進撃映像に、俺がみいっているときだった。
玄関の方から、来客を知らせるチャイムが鳴る。
「はーい!」
俺は良いところなのにと、ちょっと残念に思いながらも、時計をちらっとみる。
俺がゲームを始めてから、結構な時間が経っていた。
もしかして目黒さんがきたのかなと、俺は急ぎ玄関へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます