第227話 いぶとの邂逅
「最後の敵は……あれかっ。──あ、もしかして戦っているのは、いぶかな」
彼女は、このダンジョン&キングダムというゲームで、最も見慣れたキャラといっても良かった。
最初に創造した二体の混沌。
あだむといぶ。
フルダイブして歩き回っていたハラドバスチャンで、実はこっそり会いに行こうと思えば行けたのだが、他にやりたいことを優先していた結果、結局会いに行かずじまい。
で、ずるずると今にいたっていた。
──仕方ない。ご飯が美味しすぎるのがいけなかったんだ。それにしてもいぶ、思ってたより小柄なんだなー
いぶの相対している敵が、いわゆるゴスロリっぽい格好の、一見女性の敵キャラだった。
全身白っぽいゴスロリ服に、こんな雪原なのに、ヒールも高い服を着ているからだろう。
いっそういぶが小さく見えたのだ。
敵キャラは先程のと同じ様に、とても悪臭を放っているようにこのユシの鼻には感じられる。
これまでで一番臭いかもしれない。
鼻が曲がるのを覚悟で、俺は雪上を駆け、一気に敵を倒してしまおうと近づいていく。
接近する俺を見て、腕を振るおうとする敵。
「遅いなー」
その敵の動きは、不思議なほど遅かった。それこそ、本当にあくびをしても間に合うぐらいだ。
もちろん、そんな自殺まがいのことはしない。臭すぎて窒息する危険がある。
俺は息を吸う前にかたをつけようと新聞紙ソードを振るう。
ちょうど敵の振り回し始めた腕と俺の新聞紙ソードが接触するも、柔らかい手応えに、そのまま新聞紙ソードを振り切る。
敵が一気に爆散する。
俺は慌てて後退しようと後ろへと飛び退く。
「あぶなっ。あれ浴びてたら絶対臭くなってたよ」
距離を取ったことで一気に臭いが落ち着く。そのまま黒いもやになりかけて、この敵も空中へ溶けるように消えていった。同時に、悪臭も薄れて行く。最後の敵も、あっけないものだった。しかし、今回ばかりはそれで助かった。
ゆっくりと安堵のため息をつくと、くるりと振り向き、いぶの方を向くと、軽く手をあげて挨拶をする。
「やあ。いぶ、だよね?」
ちょっと、いぶとは話してみたかったのだ。
近づく俺は、いぶは最初きょとんとした表情で見ていたが、次の瞬間、思いもよらない行動に出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます