第161話 支援物資
「あ、もしかしてこれって不味い状況?」
俺はダンジョン&キングダムのゲーム画面をみて、呟いてしまう。
最近はゲームをするときは直接フルダイブしてユシとしてダンジョン探索を楽しんでいたのだ。それこそ、日常生活に少し支障が出るくらいはまっていて、昨日も寝不足で授業中うつらうつらしていたら、早川にその後からかわれたぐらいだった。
そんなゲームプレイの仕方だったせいもあり、見落としていた。あだむ達の苦戦している状況を。
「ダークコボルドの数が半減してる。あだむも部位欠損してるし。おかしいな。途中までは順調に見えてたんだけど」
ゲーム画面で操作して、過去ログを確認していく。どうやら、ダンジョンの途中から難易度が大きくあがっていたようだった。
「どうされました、ユウト」
ゲーム画面を見ながら唸っていると、
ちょっと独り言がうるさかったようだ。
「あ、クロ。いや、実はさ──」
俺はクロに現状を伝える。
「なるほど。ユウトは彼らを助けたいのですか?」
「それはもちろんっ! このままじゃ、負けちゃうでしょ?」
「では支援物資を送られては?」
「支援物資? そんな項目あったっけ?」
俺が首を傾げていると、クロが画面を指差す。
「ここを下かと」
その指差す方向にカーソルを持っていくと、確かに下賜という項目があった。
「これ? あ、本当だ。全然気づかなかった。で、渡せるのは……霊草に英霊草? なんか数えきれないぐらいの数が──あとは、魔素水ってのもある? これは数トン単位であることになってるの?」
俺は画面を見ながら首を傾げる。それらは、なんか前にどこかで早川から聞いたことがあった気がする単語だった。
「下賜自体にも少しだけどMP使うんだ」
「とりあえず霊草と魔素水をこれぐらい送れば良いかと。あとはそれを素材にコボルド達がポーションを作成するはずです」
そういってクロが指定したのは保有量からすると極僅かな数だった。本当にそれだけで足りるのかと思いながらも言われた通りに下賜しておく。
「あとはこうして一旦撤退の指示をしておけば良いかと」
「クロ、詳しいね。オッケー。一旦撤退と。このベースキャンプまで下がってもらって、と」
画面のなかではあだむ率いるダークコボルド達がゆっくりと後退を始めていた。
「ふう。全滅は免れたかな。でもこのままだと戦力不足だよね。やっぱりそこは、何か対策をしないといけない、よね」
「では、これはどうですか?」
「……なるほど。確かにそれなら」
そのクロの提案を、俺は前向きに検討するのだった。
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