第155話 ファーストコンタクトは襲撃から
「緊急入電! コードブラック、虹の地平、大穴、観測班Bより!」
「回してくれ──ああ──わかった」
一言告げ、受話器をおく双竜寺。その顔色はどす黒い。
何日も満足に寝ていないのがわかる、血走った目で周囲を見回すと、いま聞いた内容を告げる。
「考えうるなかで、最悪の事態だ。『
その言葉を遮るように再び着電。
「案内人からですっ! 衛星電話のため、暗号化不十分です」
「回せっ! ──それは何より──ご苦労」
真剣な顔で、電話からの声に耳を傾ける双竜寺。最小限の返事を返すと、受話器をおく。
そのまま、どさりと椅子に座り込む。
「──課長、孔雀蛇さんはなんと?」
「下手人はすべてイサイサにより確保。イサイサは条件付きでの下手人の引き渡し交渉を望む、とのことだ。下手人は、セドゴア条約加盟国にして我が国の最大友好国の所属。
ダンジョン公社に、流れる緊迫感の質が、一気に変わる。国名を明言しないでも、どこの国のことを言っているのか共有される。
「まさか! あり得ませんっ。彼女はユニークスキルの暴走で完全に沈黙したと、確かな筋から……」
「詳細はわからない。これは案内人からの裏付けもなにもない、未確認情報だが、彼女はユニークスキルの匂いをかぎ分けられる、らしい」
しん、と室内が静まり返る。それも当然の反応と言える。
現人類にとって、ユニークスキルに関するイサイサのその情報は、それだけのものだった。
「
「みな、まずは目の前のことに集中だ」
動揺の走る室内の課員にむけて、双竜寺が告げる。
「何よりも、イサイサの個人での脅威度がいまだ未知数に過ぎる。そして交渉は孔雀田乱子が取りなしてくれたものではないのだ。イサイサからの自発的な提案を、孔雀田が仲介してくれた形になる」
「──その状況で、話し合いを提案してくれるのは、少なくとも、とてもありがたいことに思えますが……」
「甘いな。我々はよき隣人であらねばならないのだ。そして襲撃をしたものは先方からみれば同じ人間だ。所属の違いは理解してくれているようだが、心証としてはどう考えても最悪だろうよ。ヘリを回してくれ。俺が現地へ向かい、イサイサと会いまみえる。あとは緑川を寄越すように、手配を頼む」
「かしこまりました。それで、場所はどちらに」
「観測班の簡易キャンプ、だそうだ」
にやっと、無理やり笑う双竜寺。それは、観測班の存在ばかりかその拠点もイサイサには筒抜けだということ。
それを聞いてダンジョン公社の職員たちは、さらに顔がひきつるのだった。
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