第144話 父性
「あれ、いつの間にか混沌が増えてる?」
俺はダンジョン&キングダムのゲーム画面をみて、首を傾げる。いまの配下が、あだむを筆頭に並んでいるのだが、その一番最後に見慣れない名前があったのだ。
「『闇』って……」
俺はそのモンスターのパラメータを表示させて見ていく。
「強さは──あだむやいぶには比べるのもかわいそうなぐらいだ……。あ、テキストがついている。何々、魔王シユにより祝福されし武具が変化したもの、その身は手にした者の望みを写し千変万化する……。あ、俺がMPで祝福した七個の武器の一つか。え、それっぽいものあったかな……?」
さっぱり記憶にない。
「付喪神的なモンスター? もしくは、武器の擬人化ならぬ擬モンスター化って感じかね。……まあ、モンスターなら何でもありか。リビングソードとかリビングメイルとかは、有名だしな」
俺はフレーバーテキストを読み進めたあと、その『闇』のステータスを詳細に確認していく。
「ふーん、え……カラドボルグと婚姻関係? え、妊娠中? どういうこと……」
なかなかの衝撃に、情報が頭に入ってこない。ただ、『闇』というモンスターが女性なのは、なんとなく把握した。
その肝心の姿を探して、ハラドキャンプの中の映像を動かしていく。
「あ、この子か……」
ハラドキャンプの個室のように区切られた一室に、『闇』とカラドボルグが仲良くいた。
「確かに闇みたいだな……」
長毛種っぽいモンスターの毛皮がひかれ、まるで巣のようになったその一室の中央。そこに、『闇』と言われれば納得する黒く煮凝った何かが鎮座していた。
寄り添うようにそのそばにいるカラドボルグ。カラドボルグはとても熱心な様子で、その巣を少しでも居心地が良いように調整していた。
カラドボルグの表情はコボルドではあるが、とても優しげで、どこか誇らしそうにすら見える。父性と言うのだろうか。そんな雰囲気すら感じられる。
「……うん。なんかそっとしておいてあげよう。はぁ……早川、いま何してるかな」
俺はなんとなくゲームのコントローラーを置いて、スマホを取り出す。
しばらくその画面をぼーと眺めたあと、画面をスワイプさせていく。
スマホから囁くように響くコール音。
無性に、声が聞きたかった。
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