第136話 異邦の探索者たち
「なになに、異邦より訪れし探索者たち。かの者たちはともにダンジョンを探索し、その深淵へと至る謎に挑むことを望む者たちなり。かの者達と手を取り合うもよし。拒絶しおのが道を進むもよし。ただしゆめゆめ気を付けよ。その中には裏切りを懐に抱きし者たちも混じることあれば、か……」
俺は新たに現れた文字を思わず読み上げてしまう。
メッセージの下に現れる選択肢。手を取り合うか、拒絶するか選べるようだ。
「このダンジョン&キングダムは外からもモンスターが来るから、人間の探索者もいるって設定なんだろうな。……だとすると拒絶すると探索者たちも敵、みたいになるのかな。とはいえ、手を取り合うの方も、わざわざ裏切り者が混じりますよと書かれてるし……」
俺はこのゲームの制作者はなかなか性格が悪そうだと思いながら、どちらを選ぼうかなーと悩む。
とはいえ、ゲーム的にはこちらの方が面白そうというのは決まっていた。
「'手を取り合う'と」
俺が選択肢を選んだタイミングで、画面が切り替わる。それはゲームを始めた時と似た演出の映像。
真っ暗な闇の中、金色の糸のようなものがするすると這い出てきて文字を形作る。
『エピソード2 混沌の拡散』
するすると文字が這って消えていく。
早速大穴の入り口に現れる探索者たち数名。
同じタイミングで、あだむがクンクンと鼻を動かす仕草をすると、斧を肩に担ぐ。かわりにいぶと、子供たちがハラムキャンプの中へと引っ込んでいく。
それを見届けたあだむが、まるで探索者たちを出迎えるかのようにハラムキャンプを出て、大穴の入り口へと向かって行ったのだった。
side タロマロ
「全く、とんだ貧乏くじだぜ……」
噎せ返るほどの高濃度の魔素。これでも大穴へと魔素が吸収されて、かなりましになったとハードラックの姉御は言っていた。げんに、完全気密の魔素防護服を身につけなくてもぎりぎり何とかタロマロは呼吸が出来ていた。
「しっかし、この場所で本当にあってるのかね……」
大穴のふち、指定された場所で周囲を警戒しながら引き続き愚痴を呟く。
先程から時たま現れる、特殊個体モンスター。しかしどの個体もタロマロたちに興味がないとばかりに現れては一直線に大穴へとつき進んでいく。その様子は、まるで火に誘われる蛾のようだ。
そうして何体目かの特殊個体モンスターが目の前から消えたタイミングで、タロマロはまた、こっそりため息をつく。それはともにこの大穴のふちで待機している他のメンバーの顔ぶれについてのものだった。
──寄留=グスダボ=久遠と孔雀蛇乱子はまあ、いいさ。どちらも国内ランカー三位と一位の実力者。どっちもすげえ変人だが、少しばかりかは一緒に戦ったことがあるしな。連携も少しはとれるだろ。問題はその他のやつらだぜ。
そのタロマロの視線の先にいる、三名の人物。佇まいだけでも強者であることははっきりとわかる。探索者の世界ランクの上位を占める真の高ランク探索者たち。当然その名は、タロマロは聞き及んでいた。
──いくら実力者だからっていきなり現地集合させられてそのまま、はいどうぞ探索してくださいとか、馬鹿かよ。しかも黒案件のダンジョンだろ。ゆうちゃんねるでいくら内部情報が限定公開されてるからって。しかもこいつら、一人として連携をとろうとかいう気が無さそうだしっ!
実際にタロマロは最低限の連携だけでもと彼らに声をかけたのだ。しかしそこは変人揃いの高ランカーたち。全く話にならなかった。
そうして何度目かのため息をついた時だった。わずかに大地が揺れる。見ると大穴の縁に、せり出すようにして階段が現れていた。
それを嫌そうに見つめるタロマロ。他の探索者たちは各々勝手に階段を下り始める。最後に大きくため息をつくと、タロマロもそのあとに続くのだった。
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