第135話 子供たちと新イベント
「お、今日のログインボーナスのMPはいつもよりも多めだな」
高校から帰ってきて、部屋に出た数匹のハエを新聞紙ソードで軽く退治したあと、ダンジョン&キングダムを始めた俺。
「やっぱりこのMP、一日にもらえる量が変化してるよなー。規則性がわからないし、ランダムなのかね」
ダンジョン&キングダムを始めて数日が経っていた。だいぶゲームシステムにも慣れてきて、面白さもわかってきたところだ。
当初考えていたより、MPの使い道は多岐に渡っていた。先日、ゲーム内で地震のようなものがあって、ハラムキャンプに被害が出てしまったのだ。
たまたま、ちょうどその時はいぶが出産直後ということもあって、俺はMPを使ってキャンプの緊急修復を選択したのだった。
地震直後、生まれたての子犬のようなコボルドを三匹抱えたいぶと、そのいぶを守るようにしていた、あだむ。
俺のMPで崩れたキャンプが一瞬で修復された時のあだむといぶの二匹の感謝の表情は、ゲームのキャラとは思えないほど真に迫っていた。
それもあって、俺は今では出来るだけMPは節約するように心がけていた。
そしてやはり基本的にはダンジョン&キングダムは放置ゲームなのだ。ただ、まるでゲームの中で、実際にあだむ達が生きているかのようなリアルさは、ただ眺めているだけでも今のところは全く飽きることは無かった。
今もちょうど、いぶが息子たるコボルドたちと戦闘訓練をする様子が映っている。
大人のコボルドの半分ぐらいの背丈まで育った子供たち三匹。ゲームの都合なのか、はたまたそういう種族設定なのか、その成長ぶりは目覚ましい。
そんな子供たちが、あだむの手作りの武器を持って、いぶへと挑んでいるところだった。
その動きは、どこか子犬がじゃれつくような可愛らしさと、訓練とはいえ激しい立ち回りが同居していて、目が離せない。
「そういえば、三匹の子供たちは種族がそれぞれ違うんだよな。戦う動きにもそれが反映されてるのか……」
長男で、ちょっと他の子より凛々しい顔立ちをしているのが、コボルドナイト。武器はあだむの手作りのショートソードを持っている。
次男で、落ち着いた雰囲気を漂わせ額にメッシュのような色ちがいの毛が生えているのが、コボルドモンク。武器は長柄の棒だ。
三男は、ちょっとかた太りしていて、三匹の中では一番やんちゃな様子。種族はコボルドメイジで、杖を手に魔法を使っていた。
今も三男のコボルドメイジが放った草の蔓のようなものが、いぶの背後から迫っていた。それに合わせて、挟みこむように撃ちかかる長男と次男。
素人目にはとても良い連携に見える。
しかしいぶはかなり手加減した様子でハルバードを一振りする。それだけで長男と次男は吹き飛ばされ、迫っていた三男の魔法の蔓は細切れになっていた。
「いぶさん、つえー」
子供たちはそれでも楽しそうに起き上がると飽きることなくいぶへと挑んでいる様子。
俺はほのぼのとした気分でそれを眺めているときだった。画面にポップアップでメッセージが表示される。
「うん、なんだろう。新イベント発生? 異邦の探索者たち?」
俺は新要素にワクワクしながら、そのメッセージを読み込み始めるのだった。
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