第133話 ゲームの続き

「家ついたー。なんだか今日はいつもより学校が長く感じたな……」

「おかえりなさいユウト」

「ただいまー」


 俺はクロへの返事もそこそこに、早速昨日始めたダンジョン&キングダムの電源をつける。

 とはいえ、今日もそんなに時間は取れない。夕食を少し手抜きにして捻出する分の時間が、せいぜいだ。


「お、本当にゲームが進んでいる……これは。ふーん、ベースキャンプなんだ。お、名前がつけれるんだね」


 ディスプレイの中ではあだむといぶの手によるものだろう。簡易的な防衛拠点とでも呼べそうな建造物が出来上がっていた。


「めっちゃリアルだな……。こことか何かのモンスターの骨で壁が組まれてるみたいだ」


 映像の鮮明さと細やかさに俺は感嘆する。最新式のゲームは本当に現実みたいにみえる。

 見ているとちょうど何かのモンスターがやってくる。大型のとかげのようだ。


「ベースキャンプから、いぶが出てきた。手に持ってるのは骨製の槍かな。お、一撃。やるないぶ」


 ゲーム内で槍の一付きで、いぶは自身の何倍もある大きさのとかげを串刺しにしている。

 槍に刺したままひょいっと肩に担いでベースキャンプへと戻っていくいぶ。

 あだむも合流して、とかげの解体が始まる。


「う、うーん。皮をはいでる……。なかなかのグロさだ。ああ、骨だけだった外壁の壁に張り付けていくのか」


 俺は目をそらすと、他に変化が無いか調べていく。

 どうやら周辺地図も見られる範囲が拡大していた。あどむといぶが移動した範囲が表示されるようだ。


「なるほどね、大穴の周囲に横穴状に通路が絡み合うように広がっているんだ。ベースキャンプがあるのはここか……モンスターは、外からも大穴の奥からも来てるみたいだ」


 シュミレーションゲーム的にはベースキャンプの位置はあまり良くないようにみえる。


 どん詰まりにあって逃げ場が無いし、どうやら外から大穴の底を目指す他のモンスターの通路の近くにあるようだ。


「まあ、たぶんこれはまだチュートリアル的なものなんだろうな。ゲームバランスを考えると、いぶが強すぎるし……あ、アイテムが手に入ってる。なるほど、あだむといぶの手にしたアイテムの一部がこっちに回ってくる感じか。ふーん。ここでもMPが使えるんだ。アイテムをMPを使って'祝福'出来るのか」


 MPは7になっていた。これがログインボーナスなのか、他の要因なのかは履歴が表示されないので、現時点では不明だ。ここら辺のシステムの解明も楽しみの一部なのだろう。


 とりあえず今出来そうなことを確認し終えた俺は一つ一つ試して見ることにする。


「ベースキャンプの名前は……ハラン、と」


 ディスプレイ上の表示がハランキャンプに変わる。

 そのタイミングで、あだむといぶが解体の手を止めて両手をあげて喜ぶモーションをしている。

 ゲームとはいえなかなか可愛らしい。


「さて、次はMPだけど、これぐらいなら新しいモンスターを呼ぶ出してもあだむ達の手助けにはあんまりならなそうだよな。やっぱりこの新しいアイテムを'祝福'してみるか」


 俺は手に入れたアイテムから七個、武器を選ぶと、一つ1MPを使って祝福していく。

 そしてその七個をあだむたちへと再び授ける事にする。


 あだむといぶの周囲を取り囲むように出現する七個の武器。

 地面に刺さるようにして出現する。


 ──演出、カッコいい!


 最初、驚いた様子を見せる二匹だったが、それぞれ地面に刺さった武器を一つづつ選んだようだ。


 恐る恐る近づいて、武器を引き抜いている。


 あだむは斧を、いぶはハルバードを選んでいた。

 手にした武器を高らかに掲げて二匹とも喜んでいるようだった。


「お、あだむといぶが装備したみたい。……あーあ。もう時間だ。今日はこれでおしまいかー」


 俺は名残惜しいがオートセーブがされているのを確認すると、ゲーム機の電源を切って日々の雑用を片付けるかと立ち上がるのだった。

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