第130話 ダンジョン&キングダム、スタート

「名前はいつもの、シユ、でいいか」


 俺はゲーム画面できかれた、プレイヤーネームを入力する。

 それはRPG系のゲームをするときは良く使っている名前だった。名字と下の名前の頭文字を繋げただけの、安直なもの。


 まあ、安直な分だけ使い勝手は良くて、愛用している名前ではあった。


「あ、始まった」


 プロローグらしきものが始まる。

 良くある、ナビ用のNPCなのだろう。真っ黒なクロネコが現れて、ゲームの世界観が説明されていく。


『シユ閣下、永らくの封印からのお目覚め、わたくしシュバルツは首をなごうして待ちわびておりましたにゃ』


 真っ黒なクロネコのセリフ。どうやらクロネコキャラの名前はシュバルツらしい。


 ──たしか、黒色って意味だよね。そのままだ。


 シュバルツのセリフを読んでいくとプレイヤーキャラは封印されていた魔王という設定のようだ。何らかの理由で、封印が解けたばかり。

 封印されていた間に、かつての配下はみな居なくなってしまい、魔王自身も体の自由がまだ効かないようだ。


『かつての偉大なる魔王国を再建するためにも、まずは手近なダンジョンを一つ、支配下に治めましょうにゃ。ダンジョンの生み出す魔素が、シユ閣下の力となりますにゃ。ちょうどここから近くに、生まれたてのダンジョンがあるにゃ。シユ閣下、是非とも配下たる混沌を生み出し、ダンジョンを支配して力を取り戻していってにゃ』


 そこでシュバルツの説明が終わったようだ。

 画面が切り替わり、真っ暗な闇の中、金色の糸のようなものがするすると這い出てきて文字を形作る。


『エピソード1 混沌の再誕』


 するすると文字が這って消えていく。


「お、いよいよか……なるほど、この中からモンスターを選んでダンジョンに送るのと。そういうタイプのゲームね」


 シュバルツはチュートリアルキャラも兼ねているようでその説明のままに操作していく。

 ダンジョンに送るのに選択出来るモンスターは今のところ四種類。この配下となるモンスターをゲーム中では混沌と呼んでいるようだ。MPというのを消費して、混沌を呼びだすようだ。今現在、MPは5000ポイントある。


「スライムにゴブリン、コボルト、リザードマン、か。定番モンスターって感じ」


 最新式のゲーム機の性能が良いせいか、グラフィックが凄い。その分、モンスターも結構、どれもグロめ見た目だった。


「細部まで作り込まれてる分、結構、気持ち悪いかも。スライムなんて、特に内容物が浮いてるいのが透けて見えてるよ……。ゴブリンもかなり醜悪……」


 一つ一つモンスターキャラを表示させていく。

 それぞれのモンスターのパラメータにも特徴があるようだ。

 ただ、始めたばかりなこともあってどのパラメータ項目の重要度が高いかは良くわからない。


「リザードマン、ヌメヌメしてる……。ここはもう、これしかないな」


 そう呟きながら、俺は見た目優先でコボルトを選択する。


「ふーん。混沌を呼び出す時に使用するMP魔王ポイントは任意に設定できるんだ。じゃあ折角だから……」


 そう呟きながら、俺は二体のコボルトを2500ポイントづつ使って作成する。


「あ、名前も自動命名だけじゃなくて手動でもつけられるんだ……初モンスターだし、つけてあげるかな──あ、だ、む、と。それに、い、ぶ、と。良し出来た。それじゃあ、あだむ、いぶ。行ってこい」


 俺はこうして、二体のコボルトを大穴へと送り込んだのだった。

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