第二部 胎動
第69話 第二部 プロローグ
「クロ、カマキリが、大量発生することなんて、あるの?」
「目の前でいま、起きていると思いますが。ユウト」
「いや、そうだけどさ」
「カマキリは、一つの卵から数百匹の幼虫が産まれます。それがそのまま成虫になったのでしょう」
「そういうもの、なのか。それにしてもさ。やけに攻撃的だよね。なんか鎌もチクチクするし」
早川と一緒にジョゼ三世のオフ会にいって一週間が過ぎた。
オフ会自体は楽しかった。ただ、途中、変な影が見えたり、結局、早川は黒き黒のことについて何もわからなかったが。
そういえばビンゴの後にあったイベントでも、ジョゼ三世の様子もちょっと変だった。早川が会ったときも変だったという事だから、体調があまり良くなかったのかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は無心に庭で新聞紙を振るう。
──せっかくの休みなのに、朝から何してるんだろな。
「適当に新聞紙を振るってもだめですよ、ユウト。もっとしっかり狙わないと」
「はーい」
朝起きたら家のなかに何匹もカマキリがいたのだ。びっくりしてすぐに新聞紙ソードで駆除したのだが、ふと庭を見てしまった。
どうも庭で大量発生して、一部が家のなかまで入ってきている様子だった。
このままでは、またすぐに家のなかまで入ってきてしまいそうだったのだ。
「ふぁー」
俺はあくびをして、慎重に狙いを定めて新聞紙を縦横無尽に振るっていく。
カマキリの固さは毎朝のゲジゲジほどではなさそうだ。
しかしちょこまかと動かす鎌が邪魔で狙いが定めづらいのだ。
それでもとりあえず目につく範囲ではカマキリは見えなくなる。
「ようやく終わったー。ふぁー」
「眠そうですね、ユウト」
「ああ、そうなんだよね。ここ一週間、やけに眠くてさ」
「……そうですか」
「さて、朝ごはん作るか」
俺は家のなかへと戻る。
「クロ?」
「いまいきます」
外でじっと佇んでいたクロに声をかける。
そのクロのホログラムの姿は、まるで何か気になることがあって、考え込んでいるようにすら見えた。
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