第62話 オフ会へゴー 1
「ごめん、待った」
「少し」
「もう。そこは今きたとこ、でしょ」
駅前で、俺は早川と待ち合わせしていた。
「その服、似合ってるね。ユウト」
「え、そうかな」
クロがみつくろってネットで買ってくれた服を、言われるがままに着てきたのだ。
服はまったく詳しくないので、何とも言えないのだが、全体的に黒っぽい色合いの服装だった。
「ちょっと、気張りすぎじゃないかな?」
「うーん。私は好きだけど?」
もしかしたらクロと早川の趣味は似ているのかも知れないな、と思いながら応える。
「早川もその服装、可愛いね。配信用の衣装?」
「そう! 動画チャンネルの『ひめたんのキュンキュンライフ』で最初にきた衣装をアレンジしてきたの! やっぱりオフ会だからね。気合い、いれてかないと」
両手の拳を握りしめ、フンッと鼻息荒く応える早川。その服装はダンジョン配信者を意識した、お洒落と実用性が半々のような服装だった。さすがにピンクのバールは持っていない。
「黒き黒」という謎のワードを追う、という目的はともかく。いつも見ているダンジョン配信者のオフ会に行くこと自体に、早川のテンションがあがっているようだ。
「そうだ、これ」
俺は準備していたものを早川に手渡す。
最近はまっているハンドメイドのうちの一品だ。これも実はクロに言われて準備していたりする。
なぜか今の早川の探索者風の服装にはよく合いそうだった。
「これは?」
「ほら、最近の趣味の……」
「あっ。ユウトの手作りなんだ」
「うっ。いや、いらないなら……」
「もちろん、いる。ダンジョン産
そういって腕を伸ばしてくる早川。
俺はその細い手首にそっと手作りブレスレットを付けていく。
早川の言う通り、ネットで調べて、ダンジョンで良く産出するらしい装備品を模したブレスレットを作ってみたのだ。庭で採取した細い蔓を編み込んで、それをクロの助言に従って処理をしていった。
どうしてそうなったのか自分でも不思議なのだが、仕上がってみると、全体に滑らかな光沢と、うっすら金色の輝きがある。一見、まるで金属製かと思うような見た目になっていた。
「綺麗なのに、軽い。ありがとね。あ、時間っ。急ご、ユウト!」
俺の手をつかむと、小走りで駆け出す早川。その口調は、なんだかとても楽しそうだった。
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