第13話 休日
「明日は、ようやく休みだ……」
自分の席でぐったりしている俺。週末前の昼休みということで、教室はどこかざわざわといつもよりも浮わついている。
「ユウト」
「なんだ、早川」
「週末、予定は?」
「あー。ゆっくり家で寝てるつもりだが」
「相変わらずだな。動画の撮影に、隣町のダンジョンに行くつもりなんだが、どうだ一緒に?」
「ダンジョンって確か、未成年は入れんだろ?」
そういえば行ったこと無いなーと思いながら俺は早川に確認する。
──隣町のダンジョン、確か名前は「赤8」ダンジョンだったっけ。
「ああ、十八歳未満は入れない。外から撮影だ。探索者たちが持ち帰ってくるダンジョンアイテムが撮れるかもだろ。それに、周りの出店をひやかすだけでも面白いしな」
「早川は、行ったことあるんだ」
「あるぞ。というか、ユウトは無いのか?」
「ないなー」
「今時、行ったことのないユウトの方が珍しいと思うがな。だいたい、学校で行くだろ」
「確か中学の時の社会見学は病欠した」
「それじゃ仕方ない。で、どうだ?」
軽い調子で再び誘ってくる早川。
俺はゆっくり寝ている休日に一度思いをはせる。しかし、目の前でこちらを見ている早川は、軽い調子で誘ってたわりには、どこか表情が真剣だ。
「あー。まあ、じゃあ昼前なら」
「よし決まりだ。駅に11時で待ち合わせでいいか?」
にかっと笑って告げる早川。予想以上に嬉しげな早川に、俺は了承を告げた。
◇◆
「それが新しい撮影用機材?」
「おう、いいだろ」
俺は駅で早川と落ち合う。早川が、肩がけしたバッグの中を自慢げに見せてくれる。バッグには動画撮影用の機材っぽい諸々がきれいにしまわれていた。
「ドローン、ないんだ?」
「街中で飛ばしたら怒られるだろ。特にダンジョン周辺は許可を取らないといけないからな。今日は持ってきてない」
「へぇー。さすがに詳しいな」
「いや、一般常識だから」
そんなことを話しながら駅から歩く。
しばらくすると道の左右に食べ物の屋台がちらほらと増えていく。しょうゆや、ソースのいい香りがする。
「もう少し先だな」
「ふーん。こんななんだな。出てるのは、花見の出店みたい感じがする」
俺はキョロキョロしながら告げる。どこかお祭りみたいな雰囲気だ。
「そりゃあな。基本的には、観光客とかの一般向けさ。ダンジョンアイテムは、専門の企業が取り扱うからな。ここも、道一本中に入ればそういうオフィスが並んでる。それでも探索者たちがダンジョンアイテムを持ち出すときに、結構面白いものが見れるんだぞ」
「早川はどんなもの見たことあるんだ?」
「一番変だったのは、ぷかぷかと浮かんだ魚みたいなモンスターの素材だな。紐がついててさ。風船みたいに運んでるのを見たことあるぞ」
「へぇー。それはちょっと見てみたいかも」
「お、見えた。あれがダンジョンだ」
そういって、早川が前方を指さした。
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