うさぎとうっさぎー

「うおおおおおおおおお!!惚れさせるぞおおおお!!」

 ズドーンと俺を置いてうっさぎーが駆けていく。女が出来たらしい。

「はぁっ、はぁっ。」

 あーあ、アホらし。色気付きやがって。俺より少し背が高いからって、

 バカなおかげで仲間作りが上手で。

 お前、たまに空気読めない時あるよな。友人の俺を置いて走る奴があるか?

 俺、別に寂しく無いのに、どうせ暇でしょ?ボクに付ーきー合ーえーとか、

 バイト後で疲れた後に限って、長電話かけてきやがって。

 キラキラした顔で、キミも行くでしょ?って、やめろよ。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 ドスドスと地面に埋もれる足のせいでパンパンだ。筋肉がプルプルする。

 俺のウサギ足はお前より細いんだよ。そんなことも知らずに・・・。



 あぁ、イライラする。



 胸糞悪い。

 つまんねえ。

 許せねえ。

 羨ましい。

 ムカつく。

 バカなくせに。

 人の気持ちも知れねえ、バカなくせに。

 俺よりも、色々、手に入れやがって。

 大体、落ち込んでる奴を、無理やり連れていくなよ。

周りから笑われてんの、わかってないのか?俺なんかに構うなよ。

 俺よりもあいつの方が好きって言われたの、悔しかった。

 ウサギ階級試験だって、付け焼き刃だったのもあったけど、失敗した。

「たいちょう」なんて言葉に憧れなければ、恥なんてかかなかった。

 元担任から将来どうすんだって言葉も聞き飽きたんだよ。

どうせ、お前らには理解できねえよ。こいつは尚更理解できねえ。


「っ、ああああ!!うっさぎー、てめえ!はええんだよ!」





「??」


 遠くで止まって、首を傾げるお前は、俺より小さく見えるのに、大きく見える。


「だからあっ!はえええんだよっ。少しは、はぁ、気ぃ使え!バカやろお!」





「なー!にー!いーー!」


 小さいお前のよく聞こえる大きい声が、俺の小ささを自覚させる。


「チッ、はぁ。もういいよ。さっさといけって。」





「えーーー!きー!

         こー!

            えええええー!

               なああああー!

                  いいいいいいいいー!」


 そう言いながらズドドドと向かってきた。

「うおっ!!?」

「なにっ!うさぎたいちょう!さっきなんて言ったのさ!」

「・・・何でもねえよ。それと!俺をたいちょうなんか呼ぶな!」

「ええ?だってうさぎたいちょうじゃん。ボク、それ以外の呼び方知らないよ」

「あーあー!はいはいそうですか!」

 こいつの顔があまりにもムカつくからそっぽを向く。しかし、こいつはクルクルと俺の正面に来て、

「ねえ、うさぎたいちょう!まだ池一周できてないよ!早くいくよ!」

「こっちみんな!!」

「早く早くはーやーくううう!!」

「うるせえ!だからこっちみんなって!」

「何で!ウサギの顔を見て話すのが常識だって言ってたじゃん!それに、うさぎたいちょうにもお父さんにもお母さんにも顔見て話せって言われたし!」

「ああああああ!!!うぜええ!!!」

「あっ!うさぎたいちょう!」

はあ。ムカつく。あまりにもムカつくから走りたくなった。俺の方が早いんだからな。思い知らせてやる。

「はぁっ!!はぁっ!!」


「あははっ!うさぎたいちょう、フラフラだよ!」


「るせー!!はぁ、色気付きやがって!!」


「あははっ!!だってボク、薄いピンク色の体毛だしね!!あはは!!!」


「はぁっ!はぁっ!あああ!?ちげえわアホ!!」


「何がー!」


「ゲホっ、ふあっ、意味だよお、意味い!」


「声出てないからわかんない!」


「はあっ!い!!み!!っぜえ、ぜえっ!」


「え?い、み?」


「そう!い、み!ぜえっ。」


「うーん、色、色かあ。」

走りながら器用に腕を組んで首を傾げる。何で体がブレねえんだよ。

そんで、若干俺のフラフラ走りに速度合わせてくんな。


「あ!わかった!うさぎたいちょう、ボクみたいに色薄くなりたいんだね!」


ほんと、馬鹿だこいつ。こいつのアホ成分がマシにさせてくるからたまに俺に伝染しないか不安だが、処方箋ぐらいならもらってやる。


「ちげえ!・・・女の子に、モテたくなって、ぜえ、自分磨きとか、女の子に、興味持つことだよ!」


「へー!!そうなんだ!!」


「つまりだなぁ、はぁ、お前が今、彼女を、惚れさせたくて運動するとか、毛並み整えるとかっ。気を引かせたくて、仕方ない、バカになることだ!」


「おおおー!!さすがうさぎたいちょう!物知りだね〜!」


「へっ、へへっ、ま、まぁな!」


「じゃあさ、うさぎたいちょう、自分にバカになろうよ!」


「はぁっ、・・・は?」

全身がバカって単語に反応して止まる。それに合わせてこいつも止まった。


「バカってことは、いろいろ考えちゃううさぎたいちょうとは反対ってことでしょ?」


「は?あぁ・・・いや、まぁ・・・?」


「ってことはさ!頭が疲れるんだよ!ご飯も食べ過ぎたら気持ち悪いじゃん!

それって、なんかあるんでしょ!」


言いたいことはわかる。試験に失敗し、好きなウサギに振られたことを悔やまなくてもいいこと。それまでの努力した自分を見つめ直す時間が必要なんだということ。

亀を待って昼寝するぐらいの余裕さが、必要なんだな。


「へ??何で亀??」

「あ?へ?もしかして俺、言ってた?」

「うん。」

「・・・。」

「それって確か、何だっけ。ん〜〜と、」

「まあまあ!!とりまこの話やめるか!!さすがに色々追い過ぎたな!」

「ん?色々追う??????」

「いや!何でも無い。」

「うーっ!もうよくわかんないよ!うさぎたいちょ!」

「・・・ぷっ。ははははははっ!!」

「あー!笑ったな!きーっ!!」

「悪かったな!うっさぎー!じゃあ、残りの距離、競争だ!」

「フッフー!最高!!」


うっさぎー。ほんと、お前バカだよ。でも、

そんなお前に色々ぶつけた俺も馬鹿だ。

そんな空気の読めない、真っ直ぐなお前だからこそ言ってやりたいことがある。


「はぁっ!はぁっ!はははっ!!」

「あははははーっ!!」


「ほんとっ!お前はっ、最高のバカだよ!うっさぎー!」

「ほんっと!キミはっ、最高の友達だよ!たいちょっ!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エネルギッシュ・シンドローム わたしロゼおば★(ピンクマン) @ROZEOBA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ