第6話おまけ【 ブライト観察日記 】
しおん
おまけ 【 ブライト観察日記 】
こんにちは、みなさん。
暇を持て余しているジュアリ―よ。
ここは革命軍の基地、目の前にはブライトがいるわ。
あの子、一体いつも何をしているのかしら。
イデアムさんの付き人みたいなこともしてるし、っていうか、自ら進んで付き人になってるような気もするけど・・・。
可愛い顔して、結構しっかりしてるのよね。
そこで、今日はブライトを尾行して、観察したいと思うの。
「イデアムさん、今日のご予定は?」
「ん~?そうだな・・・。やること無ぇし、俺は寝てるよ。」
「そうですか。では、少し出かけてきても良いでしょうか?」
「あ?珍しいな。ま、いいぜ。遅くなんなよ。」
「はい。」
まずいわ・・・。非常にまずいわ・・・。
馬に乗って追いかけることも出来るけど、これじゃあ尾行するのがバレちゃうし、ただでさえ勘の鋭い子なのに、どうやってこの先追いかければいいのよ。
全く・・・、イデアムさんも勝手に許可出さないでよね。(イデアムは悪くありません。)
どうしていつもそう勝手なことばっかりするのかしら。空気読めて無いわね。(今回はイデアムは悪くありません。)
仕方ないわ・・・。距離を取って、馬で追いかけるしかないわね・・・。
「何してんだ、お前。」
「何よ。空気読めない男が。」
「あ?なんでいきなり凹むようなこと言われなくちゃいけねぇんだよ。」
「五月蠅いわね。あ、行っちゃう。邪魔よ、どいて。」
「・・・・・・・・・何だ?ありゃ。」
なんとか上手く尾行することが出来たわ・・・。
市場に来たのはいいけど、ブライトはさっきからフラフラ馬を歩かせているだけで、目的が見えないわ。
あ、馬から下りた。
手綱を持ちながら、店先で売ってるパンみたいなのを買って、それを食べてる。
美味しそうにほっぺたを膨らませている姿は、とても可愛い・・・。
はっ。ダメよ、惑わされちゃ。でも、美味しそう・・・。
あ、女の子に声かけられてる。そうよね。意外と顔立ちいいからね。
あら?断ったのかしら?
今度は仔犬が足下に擦り寄ってるわ。動物に懐かれる臭いでも発しているのかしら。
仔犬を抱き上げて、自分の鼻と仔犬の鼻をすりあわせてる・・・。
・・・可愛いッ!!!!!!
結構動物好きなのね・・・。仕方ないわ・・・。今度、おばちゃんが(←自分のこと)、あの空気を全く読めない男に言ってあげるからね!
犬派なのかしら?猫派なのかしら?まあ、どっちでもいいわ。馬派かもしれないし。
オクタティアヌス家にいたころには分からなかったけど、ブライトって単体で見ると、男としては十分立派よね。
大体イデアムさんが隣にいたから、そっちにばかり気を取られていたけど、可愛いし、しっかりしてるし、可愛いし・・・。
ああ、でも、マリアとは一体どうなってるのかしら。
マリアは少し意識してるみたいだけど、ブライトは微妙よね・・・っていうか、そういうことには意外と鈍いような気がするのよね。
でも、男がリードしなくちゃダメよね、やっぱり。
ブライトは面倒見がいいから、たまに勘違いしちゃう市場とか街の女の子もいるのよね・・・。というか、いたのよね、実際に。
イデアムさんに近づく女は、大人のフェロモンたっぷりの女が多いけど、ブライトは年上からは可愛がられるし、年下からも頼られるし・・・。
ま、別にどうでもいいんだけど、イデアムさんのような大人にはなってほしくないわ。
あんな女癖の悪い男になんて、私が育てないわ。剣以外の事は、絶対に学ばせないようにしないと!
あら?余計なこと考えているうちに、ブライトを見失ったわ・・・。
「買い物ですか?」
「!!!驚かさないでよ、ブライト。」
「すみません。基地を出てから、ずっと気配を感じていたので・・・。」
すっ・・・鋭いわね。でも、このくらいで白状しないわよ。
「ブライトの方こそ、どうして市場に来たの?」
「ああ、それは・・・。」
「ここです。」
「・・・わぁ・・・。」
それは、ブライトお気に入りの草原だそうで、自然一杯に囲まれた、なんとも空気の美味しい場所。
いつもいる基地は男ばっかりで、正直汗臭いのよね。でも、汗臭いのは嫌いでは無いのよ?人工物を身に纏った場合、例えば香水とかは、臭いに敏感な私にはキツイ。
汗は誰でもかくものだし、色っぽい男の人の汗の臭いなら、何時間でも耐えてみせるわ!
小さくガッツポーズしたの、ブライト気付いてないわよね?
「ここで一日のんびりと過ごすんです。」
「のんびり?」
「ええ。」
ブライトとは程遠いような言葉ね。でも、確かに気持ちいいし、寝てしまいそう。
あ、ブライトが寝転がった。
どれどれ、私も・・・。
おお。気持ちいい。
しばらくしてからブライトの方を横目で見てみると、すでに寝入ってしまったようで、口を少し開けてる・・・。
こうしてみると、やっぱりまだ幼くて、なんとも言えない気持ちになる。
でも、可愛い・・・。(まだ言うか。)
ほっぺたを触ってみるとぷにぷにしてて、髪の毛は思った以上にサラサラしてるのね。
一応言っておくけど、ショタは趣味じゃないわよ?
これでも大人の女なのよ?私。大人の男が好きに決まってるでしょ。
ただ、なんていうの・・・こう・・・近所のおばちゃんみたいな気持ちっていうか、こんなに大きくなったのね、っていう感じ。それだけよ。
ついでに言うと、好みのタイプはワイルドな感じの人で、だけども紳士的な部分も持ち合わせている人・・・。
例えば・・・例えば?あれ、残念。思い当たる人がいないわ。
それから、そんなに顔が良くないクセに、周りからキャーキャー言われて、それを鵜呑みにするような人は嫌いよ。癪だわ。
それにしても、本当に可愛い寝顔・・・。
あ、私も眠くなってきちゃった・・・。
「ジュアリ―さん?・・・ダメだ。起きない。」
夕方になり、ブライトが目を覚ますと、隣でジュアリ―が自分の髪の毛を握りながら寝ていることに気付く。
先程から何度も呼んではいるのだが、一向に起きる気配が無い。
肩を揺らしてみても、耳元で大きめの声で呼んでみても、頭を叩いてみても(酷い・・・。)、鼻をつまんでみても、起きない。
ブライトはため息をつき、頭をかく。
―寝つきがいいとは聞いていたが、まさかここまでとは。
「しょうがないな・・・。」
ブライトはジュアリーを自分の馬に乗せ、ジュアリ―を包むようにして自分も跨り、馬を奔らせる。
ジュアリ―が乗ってきた馬も後からついてきて、なんとか暗くなる前に、基地に到着することが出来た。
ジュアリ―を抱えたまま馬から下り、基地へと入る。
すでに食事の準備は終わっていて、イデアムは一皿平らげてしまったようだ。
「お~、帰ったか・・・って、なんでジュアリ―?」
「市場の途中で会いまして・・・。」
「ああ、そういうことな。また昼寝してたのか。」
「はい。そしたら、すっかり寝入ってしまったようで・・・。」
やれやれ、と頭をかき、ジュアリ―をブライトから引き取ると、女部屋まで連れて行き、ベッドに寝かせる。
荒く投げつけても良かったのだが、一応女性のため、イデアムもなるべく慎重に運んだようだ。
着痩せするジュアリ―は、意外とむっちりしているが、身長に対しての体重は軽くも無く、重くも無い。
筋肉がついているということもあり、同じ身長の街娘がいたら、きっとその子より体重はあるのだろうが、決して重くは無い。
それは、イデアムが鍛えているということもあるし、先程も言ったように、慎重に対しての体重は平均くらいだからだ。
なんのトレーニングもしていない男性が軽々と抱っこ出来るかと聞かれれば、難しいかもしれない。
実際、以前酒に酔い潰れたジュアリ―を部屋に運ぼうとした若手は、プルプルしていたそうだ。
その現場を見ていたマリアは、イデアムが犬でも運んできたかのように軽々と運んでいるのを見て、部屋で剣を磨きながら目をぱちくりさせていた。
そこへ、馬を小屋へ入れてきたブライトが戻ってきて、なかなか起きないジュアリ―を見て、呆れを通り越して感心している。
「ったく・・・。こいつに見張りは頼みたくねぇな・・・。」
「そうですね。」
寝返りを打つと、置きっぱなしにしてあった本に頭をぶつけ、流石に起きるかと思って見ていても、やはり起きない。
ここまで起きないと、清々しいくらいだ。
「なんで寝顔はこんなに幼いんだ?こいつ・・・。」
「いつも自分は大人だって豪語してますもんね・・・。」
「あ、本当だ。可愛い。」
三人がこんな会話をしているとも知らないジュアリ―は、結局皆が寝静まる頃に起きだし、ブライトの可愛さを思い出していたとか・・・。
「おい、今日もブライトの寝顔覗いてたぜ。」
「え・・・。」
ブライトは休日、きっといつもの忙しさを忘れるために、一日中ぼーっとしている。
しおん maria159357 @maria159753
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