第17話 もう我慢できない
「涼也、やっぱり私達の事を全然疑ってない」
「普通は渡された飲み物に睡眠薬が混ぜられてるなんて思わないからね、仕方ないよ」
私とお姉ちゃんはベッドの上ですやすやと眠っている涼也を見下ろしながらそんな会話をしていた。今回私達が涼也を眠らせた理由は2つある。
1つ目の理由は涼也の部屋にスマホで映像と音声の確認ができる小型の監視カメラをバレないようにこっそりと設置するためだ。
24時間365日しっかりと稼動するよう配線まで組むといった大掛かりな作業をするため眠らせる必要があった。
2つ目の理由は言うまでも無く涼也とエッチするためだ。あの夜涼也に処女を捧げた私達だったが、あんな快感を一度知ってしまった以上我慢する事などはっきり言って不可能だった。
風呂場で涼也の勃起した下半身を見て私もお姉ちゃんも激しく興奮させられたし、正直その場で押し倒したい気分になった事は言うまでもない。
だが私達はそれを必死に我慢した。なぜなら涼也の意識がある時にする初めての行為はもっとロマンチックなシチュエーションが良かったからだ。
私達も一応女の子だからその辺にはこだわりたかった。お姉ちゃんと2人でどんなシチュエーションがいいか日々話し合っているが、中々結論はでそうに無かった。
やはり双子の姉妹でもその辺りの好みは違っているらしい。だから涼也が本当の意味で初体験を迎えるのは間違いなくまだかなり先になりそうだ。
「とりあえず監視カメラを設置しよう」
「早く終わらせて涼也君といっぱい愛し合いたいな」
それから私達はあらかじめ目星を付けていた場所数カ所に監視カメラを仮置きして映像の見え方を確認し始める。その結果私達の身長よりも高い本棚の上に設置する事が決定した。
「ここならまず涼也君に見つかる事はないと思うし、結構いい場所だと思う」
「上手くカモフラージュすれば完璧」
監視カメラを本棚の一部に見えるよう上手く偽装を施してから設置する。そして本棚の裏に電源ケーブルを通して床まで下ろしていき、空いていたコンセントの穴に差し込む。
ルーターなど常にコンセントへ差しっぱなしにしなければならない物が密集している場所を選んだため、涼也に引っこ抜かれる心配は恐らく無いはずだ。
「……やっと終わった、里緒奈お疲れ様」
「結構時間かかった」
気付けば監視カメラの設置を始めてからかなりの時間が経過していた。多分それだけ集中して作業に取り組んでいたのだろう。
「じゃあここからはお待ちかねの時間だね」
「もう我慢できない」
私とお姉ちゃんは着ていたパジャマを脱ぎ捨てて生まれたままの姿になる。そして満足するまで3人で愛し合った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「めちゃくちゃ怠いし、それになんか体がやけに重いな……」
強い倦怠感と凄まじい寝苦しさを感じて目を覚ました俺だったが、異様に体の両脇が重い事に気付く。
腕を動かそうとしても全く動きそうに無かったためとりあえず右を向くわけだが、なんとそこには俺にしがみついて満足そうな顔で眠る玲緒奈の姿があったのだ。
「……って事は左は」
今度は左に顔を向けると幸せそうな顔で眠る里緒奈の姿があった。1人用のベッドに3人も寝ているのだから寝苦しいのは当然に違いない。
「2人の体、めっちゃ柔らかいな」
玲緒奈と里緒奈は俺の体に胸を押し当てた状態で寝ており、その柔らかさがダイレクトに伝わってきていた。ちなみに女の子特有の良い匂いまでしている。
普段なら興奮して下半身が元気になってしまいそうな状況だったが何故か全然勃ちそうにない。まるで何度も自家発電した後のような反応だった。
「そもそもこれは本当に現実か……?」
美少女2人と同じベッドで寝ているなんてあまりにも非現実的過ぎだ。そもそも2人には好きな相手がいるはずなのだから俺にこんな事をするはずがない。
「……そうか、これは夢だ」
俺はそう強く確信した。どうやら俺は今夢であると自覚しながら見ている夢、いわゆる明晰夢を見ているに違いない。
胸の柔らかさを感じたり匂いまでするなんてやけにリアルだなと思いもしたが、俺にとってあまりにも都合が良すぎるため絶対に夢だ。
「そっか、夢なら好き放題してもいいよな……」
彼女達の胸を揉んだりキスをしたり、もっと過激な事をしてもどうせ夢なのだから何も問題ないだろう。何をしようか最初はワクワクしながら考える俺だったが、だんだん虚しくなってくる。
「……こんな童貞の妄想がそのまま形になったような夢まで見て俺は何がしたいんだろう」
例え夢の中で玲緒奈と里緒奈に好き放題できたとしても、現実は何も変わらない。陰キャでぼっちでスクールカースト最低辺の俺が2人のような美少女と付き合えるはずが無いのだ。
「寝よ」
夢の中でさらに寝ようとしている自分に馬鹿馬鹿しさすら感じる俺だったが、とにかく寝る事にした。
それから結局、昼過ぎまで寝ていたせいで玲緒奈と里緒奈から起こされる事になったのはまた別の話だ。
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