第13話 なあ、2人とも。ひょっとして俺と一緒にいたら迷惑か……?
「……なんかクラスの居心地がめちゃくちゃ悪いな」
4時間目前の休み時間の現在、俺は教室に居づらくなったため自動販売機のスペースに避難していた。居心地が悪い原因は単純で周りからの視線が凄いからだ。
「まあ、ここ数日で悪目立ちし過ぎてたからこうなりそうな気はしてたけど……」
今までぼっちだった俺が学内のアイドル的な存在である玲緒奈や里緒奈と一緒に登下校をしているのだ。はっきり言って悪目立ちしないはずがなかった。
俺が2人と関わるようになったのは例の事件がきっかけだが、そんな経緯があった事など当事者である俺達くらいしか知らないはすだ。
だから恐らく周りからはある日突然俺が彼女達と仲良くなったように見えてしまっているに違いない。
「なんか俺の陰口みたいなのも周りから聞こえてくるし、マジで憂鬱」
自分よりも下だと思っていた奴が急に美少女2人を侍らすようなれば面白くないと感じるのも無理ない話だとは思うが、ひそひそと陰口を叩かれるのは勘弁して欲しかった。
チャイムがなるギリギリまで教室に戻らないようにしよう。そんな事を思いながら適当に時間をつぶしていると突然誰かに話しかけられる。
「おい、八神。玲緒奈さんと里緒奈さんに付き纏うのはやめろ」
俺に絡んできたのはクラスメイトの
「えっと……別に付き纏っては無いと思うんだけど」
「嘘をつくな。八神が朝と帰りに玲緒奈さんと里緒奈さんに付き纏ってるのは知ってるんだぞ」
どうやら登下校中の様子を見てそう判断したらしい。だがどちらかと言えば通学路で待ち伏せされたり家まで押しかけられているため、俺が玲緒奈と里緒奈から付き纏われていると言った方が正解な気がする。
「いやいや、玲緒奈も里緒奈も自分の意思で俺と一緒にいるんだけど」
「2人がお前みたいなぼっちと一緒にいたいわけないだろ、適当な事を言うのも大概にしろよ。それに呼び捨てにするのはやめろ、お前みたいな奴が気安く呼んでもいい名前じゃないんだよ」
正直色々と突っ込みたいところがあったが、指摘するとかなり面倒な事になりそうだったのでやめておく。
「マジで迷惑だからもう金輪際玲緒奈さんと里緒奈さんに近付くなよ、分かったな」
倉本は一方的にそう言い残すと俺の前から去っていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なあ、2人とも。ひょっとして俺と一緒にいたら迷惑か……?」
昼休みにいつも通りベストプレイスに押しかけてきた2人に対して俺はそう尋ねた。すると玲緒奈と里緒奈は驚いたような表情になって口を開く。
「えっ、急にどうしたの?」
「涼也、何かあった?」
「俺のせいで玲緒奈と里緒奈が迷惑してるんじゃないかなって思い始めてさ……」
2人から理由を聞かれた俺はそう答えた。先程の倉本から言われた迷惑という言葉が自分の中で引っかかっていたため質問をしたのだ。すると2人の顔からすっと表情が消える。
「私達が迷惑してる? そんな事あるはずないじゃん、だって私達姉妹を命懸けで守ってくれた救世主なんだから。私も里緒奈も涼也君と一緒に居たいからこうやって過ごしているんだし、迷惑に感じる要素なんてはっきり言ってゼロだよ。むしろ私達が迷惑かけてるんじゃ無いかって心配なくらい。それと涼也君は自分が思ってるよりも魅力的な男の子なんだからもっと自信を持っても良いと思う、そしたら迷惑かけてるなんて考えにはならないと思うし……」
「一緒にいて迷惑なんて思うはずがない、私もお姉ちゃんも涼也の事を心の底から信頼してるんだから。命を救ってくれた涼也に迷惑なんて思う方が絶対おかしい、あんまり自覚は無いかもしれないけど涼也はそれだけすごい事をしたんだよ。もしあの時涼也がいなかったら私達姉妹は今頃死んでたかもしれないし、はっきり言って感謝してもしきれないくらい。これから一生かけてお姉ちゃんと一緒に恩を返していくつもりだから、覚悟しておいてよね……」
玲緒奈と里緒奈はめちゃくちゃ早口でそんな事を話し始めた。その姿はちょっと怖かったが、それと同時にそこまで俺の事を信頼してくれているんだと分かって安心した気持ちにもなっている。
「……オッケー、よく分かった。やっぱり俺の勘違いだったみたいだな」
「じゃあ涼也君の疑問も解消された事だし、お昼ごはんにしようか。はい、涼也君の分」
「今日も朝から2人で一生懸命作った」
2人がお弁当を作ってくれるのはこれが3回目になるが、もう既に俺はすっかり胃袋を掴まれかけていた。本当に彼女達と将来結婚する相手が羨ましくて仕方がない。
それから俺達は3人で仲良くお弁当を食べ始める。今日はウィンナーとゆで卵、生姜焼き、ミニトマト、白米という中身だった。
ウィンナーにかかっていたケチャップから鉄のような変わった味がしたものの、それ以外はめちゃくちゃ美味しかったため箸がどんどん進んだ事は言うまでも無い。
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