第12話 そこは女の勘って奴かな……

「……もう朝か」


 部屋中に鳴り響く大音量のアラーム音で目を覚ました俺はゆっくりとベッドから起き上がる。昨日の夜よりは多少マシになっていたが、相変わらず体がだるかった。

 制服に着替えてからダイニングへと移動した俺はテーブルの上に用意されていた朝食を食べながらソシャゲのアプリを開く。

 そしてログインボーナスを受け取ってから適当なダンジョンを周回し始める。寝ていた間に全回復したスタミナを消費するのが毎朝のルーティンだ。

 朝からこんな事をしているせいでいつも学校に着くのがギリギリになってしまっているわけだが、どうせ早く行っても雑談する友達もいないため別に良かった。

 ちなみに父さんや母さん、澪は既に家を出てそれぞれ職場や学校に行っているため、この時間帯まで家にいるのは俺1人だ。


「へー、やっぱり今年も水着ガチャやるのか。そう言えば8月が近いもんな」


 ダンジョン周回後に運営からのお知らせを見て俺は夏休みが近い事を思い出した。きっとリア充達は楽しい夏休みを過ごすに違いないが、俺のようなぼっちにとっては長い土日くらいの感覚しかない。

 実際に去年の夏休みは基本的に普段の土日と変わらないような事しかしておらず、夏休みらしいイベントなどほとんど無かった。

 強いて言えばお盆の時期に中国四国州の倉敷市にあるおばあちゃんの家に家族4人で行った事と澪に誘われて近所の夏祭りに行った事くらいだ。

 俺も友達と海や山で遊んだり、彼女と花火大会に行ったりするような夏休みに憧れはあったが、ぼっちな時点で絶対無理だろう。


「今年の夏休みも去年とそんなに変わらないだろうし、多分適当に課題をやりながらアニメとソシャゲの周回でもして過ごすんだろうな」


 そうつぶやく俺だったが、いつの間にか家を出なければならない時間が迫っている事に気付く。

 出席日数がギリギリな今の状況で授業に遅刻する事は割と洒落にならないため大急ぎで朝食を流し込む。それからカバン持って家を出ようとしていると、突然インターホンが鳴り響く。


「こんな朝から一体誰だ……?」


 想定外の来客に戸惑いつつもとりあえず玄関に設置されていたインターホンのモニターを見る。よく分からない相手なら無視しようと思っていたが、そこにはよく見知った人物が映っていた。


「……えっ、玲緒奈と里緒奈じゃん!?」


 家の場所を2人には教えてなかったはずなのになぜここが分かったのだろうか。そんな事を思いつつ俺は扉を開けて彼女達に話しかける。


「2人ともおはよう、急にどうしたんだよ?」


「涼也君、おはよう。迎えにきてあげたよ」


「一緒に学校行こう」


 玲緒奈と里緒奈は平然とした表情でそう口にした。どうやら俺の事をわざわざ家まで迎えに来てくれたらしい。


「……なあ、何で俺の家が分かったんだ? 2人には教えてなかった気がするんだけど」


「涼也君の家族に助けてもらったお礼を言うために一回パパ達と来てたから知ってるんだよ」


「うん、涼也がまだ入院してた時だけど」


 俺はその理由を聞いて色々と納得した。それから俺達は3人で並んで歩いて学校へと向かい始める。


「それにしてもマジでちょうどいいタイミングで俺の家に来たよな。早く来過ぎたら待たせる事になってたし、逆に遅過ぎたらもう家にいなかった可能性があったのに」


「そこは女の勘って奴かな……」


「……うん、たまたま」


 俺の言葉を聞いた2人はほんの一瞬だけ黙り込んだが、すぐにそう答えてくれた。その様子を見て俺は何か違和感を覚える。だが結構眠かった事もあってあまり深くは考えなかった。


「そう言えば涼也君は修学旅行の行き先はどこにする予定なの? 確か希望調査の提出日って今週の金曜日だったはずだけど」


「ああ、俺は京都にしようと思ってる」


 修学旅行の行き先は北海道と沖縄、京都の3択だったわけだが、歴史好きな俺としては京都を選ぶつもりだ。

 ちなみに修学旅行は9月にある文化祭が終わったすぐ翌月にあるため、夏休み明けはイベントが盛りだくさんとなっている。


「へー、そうなんだ。伏見稲荷とか嵐山とか行きたいところがいっぱいあるから、私も京都にしようかな」


「お姉ちゃんが京都にするなら私もそうする」


「まあ、まだ時間はあるしゆっくり考えよう」


 そんな話をして盛り上がっているうちに気付けば学校の校門が見えてきた。学校の近くという事もあって周りには俺達と同じように登校する生徒の姿が多く見られる。

 そして昨日や一昨日同様めちゃくちゃ視線を集めてしまっていたため、かなり居心地が悪かった。その上男子生徒達から嫉妬や憎悪の混じったような視線まで向けられていたため本当に勘弁して欲しい。


「……ごめん、ちょっとトイレ我慢できそうにないから先に行くわ」


 プレッシャーに耐えらなくなった俺は一方的にそう言い残すと彼女達のそばから離れる。そして靴箱で上履きに履き替えた後トイレの個室に駆け込み、授業開始のチャイムが鳴るギリギリまで適当に時間をつぶすのだった。

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@rorilove様から文字付きレビューをいただきました、ありがとうございます!

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