1ー2 列車に乗って、いざ農村へ

 

 自分達は荷物を抱え、とある建物の前にいる。

 大理石やグラニットなどの堅牢な建材で作られ、彫刻の装飾的などが施されることもありました。屋根はドーム状で、綺麗な時計や看板が取り付けられている。

 建物の奥の方からは、黒い煙が立ち上ぼっていて、鉄や石炭の匂いがする。


「なにこれすご~い!」

「あれ?見たことなかったんだ?」


 初めて見るのか、スペルがワクワクしている。テインも、知ってはいたそうだが見るのは初めてらしい。

 ここは、蒸気機関車の駅。ノーミンに向かうため、自分達は列車を使うことにした。


「ツムグはありますか?」

「俺は何回かあるな。」

「岩手んとこのとか、北海道の湿とか。あととか。」

「後ろ2つは嘘ですよね?」

「無限列車はな。」

「トーマスはあるんですか!?え、い、イギリスでしょうか?」

「静岡。」


 詳しく聞いたことはないけど、この2人は昔馴染みなんだと思う。最初はこの二人でパーティーを組んでたらしいし。


「シズオカ?ってどこ?」

「あぁ、地元の…っつーか、母国のっつーか。故郷にある地域。ここからはかなり遠いけどな。」


 クロルの問いに、彼はどこか曖昧な答えを返す。まぁ、遠い地域だというのは何となく分かっていた。2人とも名前の綴りがいち区切りだし、少なくともこの辺じゃない。とはいえ、どうやってここまで来たのだろうか。


「そこから来るとき列車乗らなかったの?」

「え?あ、あー、そうですね……」


 歯切れが悪い。話しにくい内容なのだろうか。


「テインで飛んできた。」

「へ?」

「テインで、飛んできた。」


 皆ポカンとなり、テインに視線が集まる。


「あっ、は、はい!実は……」

「えっ、マジ?」

「うん。海を越え山を越え。」


 どんな体力をしているのだろうか。まぁ、流石に休み休みではあったんだろうけれど。まぁ、体力や持続力という点ならあり得なくはないか。テインは天使との亜人で、自己治癒速度は凄まじい。納得はいく。


(納得より理解ができないなんてことあるんだ…)



 高い天井や大きな窓などの開放的な造りになっている。待合室や改札口には、ベンチ、新聞スタンド、喫煙室などが備えられている。また駅舎内には、ちょっとした食事処や売店などの商業施設もあり、快適性や利便性を向上させている。

 美しい建築デザインと機能性を兼ね備えた場所として、人々に親しまれている。


「切符は入ってたっけ?」


 彼に言われ、腰のポーチから封筒を取り出す。書類には交通費等は負担してもらえると書いてあったものの、切符は二枚しかない。おそらく自分とクロルの分だろう。

 招待状には鉄道会社の印が記されたカードがあり、追加用申請書と書かれている。彼は窓口に向かう。クロル、スペル、テインは売店の方に向かい、自分はハセラと一緒に壁の方で存在感を消して待っている。


「どうなさいましたか?」

「えっと、こちらの招待状なんですけど。」

「はい……えぇ、かしこまりました。少々お待ちください。」


 駅員さんは招待状を受け取ると、公共系ピクセルの認証技術が施された魔具に設置し、印が刻まれた箇所を読み取らせる。


「はい、認証が通りました。ザボスの依頼ですね。お客様は、パーティーの代表者でよろしかったですか?」


 駅員は彼の魂札ライセンスを受け取ると、先程と同じ魔具で読み取り認証を行う。


「ありがとうございます。切符の追加でよろしかったですか?」

「はい。」

「何枚ご所望でしょうか?」

「四枚の追加をお願いします。」


 駅員は新たに四枚、切符を用意して彼に渡した。彼は控えと共に受け取り、礼を言ってからこちらに戻ってきた。


「次のノーミン行き列車は、あと5分くらいで来るってさ。」


 ハセラに切符を渡す。他の三人はと聞くので、売店に言ったと伝える。

 現在、11時5分。遅れがなければそろそろ来るはずだ。そう考えていたら、ちょうど列車の音が聞こえてくる。

 車輪の大きな音と、汽笛の甲高い音と共に、黒く輝く列車が来る。

 彼はテレパスを使い、三人を呼ぶ。テインが並んでる弁当を睨んでいたが、スペルが両方取ってレジに進んだ。


 改札を通り、ホームに来る。

 そこで、蒸気機関車を見たスペルが一言。


「わぁ~!環境に悪そ~!」


 そんな明るく言うことじゃない。それはさておき、列車に乗り込む。

 列車の中は外見のような機械的な造りとは反対の、木製の造りになっている。中にある座席は赤いクッションが付けられている。

 片側にはカウンター席のような座席が一列にあり、もう片方には対面席が一列にある。対面席は真ん中に机があり、前後三人ずつ座れる広さでちょうど六人座れる。

 乗客はそれなりにいたものの、奥の席にちょうど誰もいないところがあった。全員でその席に向かう。

 前(進行方向)側に、窓側から順に自分、テイン、ハセラが座る。後側には同じ順でスペル、ツムグ、クロルが座る。


「スペル、窓側こっちに座ってくれるか?」

「ん?いいよ~?」

「あ、クロルは平気か?」

「平気だよ~」

 

 スペルは初めてで、よく分かっていない様子だったが、そのうち分かるだろう。ハセラは三半規管強そうだし、テインは酔いとかに強いだろうし、そもそもよく飛行してる。

 ただ、自分はちょっと苦手だ。引きこもってる時間が多すぎたし、機関車は馬車とは比較にならない。


(移動中、弁当食べるんだった……)


 自分は若干の不安を抱えているが、列車は無事に走り出した。

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