本章開始 一章

ヴァテンダ編

1ー1 農村からのクエスト依頼

 現在、朝の7時30分

 新居となって約一週間が過ぎたある日、ツムグはポストを確認した。届いていた手紙や書類達のなかに、少し厳かな印象を与えてくるものが1つあった。消印の箇所を見る限り、どうやらギルドからの書類のようだ。封筒には、このように書いてある。


【革命団 所属:〝拏煥ナガン〟ヘルム・ヴァン・クロニクル様】

【革命団 所属:〝黎明れいめい〟ヒット・フューチャー・ダッシュ様】


 ツムグは、まず魔成マナを送り、連絡状態であると認識させる。

 自身にも流れてきたので、良いの合図だろう。


『ダッシュ、今いいか?』


 外からテレパスを送り、自室にいるダッシュを呼ぶ。


『うん、いいよ。どうかした?』

『ギルドからの封筒が届いててな。ダッシュとクロル宛だ。』

『クエストの依頼?』

『あぁ、多分。今誰がいる?』

『ちょっと待って…』


☆☆☆☆☆☆


 彼からテレパスを受けた。床に手を着け、魔術を発動する。


「『家視中ホームシアター』…」

(ハセラとテインの反応はない…ハセラはトレーニング、テインは礼拝かな…クロルは…多分自室でまだ寝てるのかな…スペルは…あ、テインが挙動不審にならないようについていったんだな多分…)


『クロルはまだ寝てる。他の三人はいないみたい。』

『そうか…クロルはそろそろ起きると思うから、リビングに集まろう。』

『うん…わかった…』


 扉を開け、クロルの部屋の前まで歩く。3回ノックして返事を待つが、返ってこない。


(『テレパス』…)


 魔成マナを送り、連絡状態であると認識させる。

 すると中から静かな足音がする。そして扉が開き、寝起きでフワフワした状態のクロルが「おはよ~」と笑いかける。少し伸びをしてパッと表情を覚まして、「どうかしたの?」と聞く。


「ツム、つ、ツムグ、が…えと、クエスト依頼かなんかで、呼んでる…」

「わかった!ちょっと顔洗ってくるねっ!」

「じゃあ、リビングで待ってる…」

「うん!あっ、ツムグもう朝ごはん作ってくれたみたいだね!」


 洗面所にトテテテと向かっていった。

 この匂いは、たしかミソ汁ってスープと、玉子焼きって名前の料理だったかな。安直な名前だと度々思う。


☆☆☆☆☆☆


 テーブルに着いて、届いた封筒の確認をする。

 封筒にはアタシとダッシュの名前が、二人のとともに書かれている。


「じゃ、開けよ開けよ!」


 彼は封筒をゆっくりと開ける。中には数枚の書類があった。


「“拝啓、革命団の皆様。この度は、ヘルム様、およびヒット様が同パーティーに所属したということをお聞きし、是非ともお願いしたい依頼があり当依頼書を送付致しました。”」


 やっぱり、クエストの依頼みたいだ。


「“内容は下記の通りでございます。どうかご検討をお願い致します。”」

「“送付主:N・O・ギヨウ 記入日 6269年6月10日”」


 依頼内容の下の欄に書かれていた名を述べると、ダッシュが少し驚いた。


「N・O・ギヨウ…ってことは、ネイチャー家?」

「えっ…ツムグ!封筒見せて!」

「はい。」

「えっと…うん!やっぱり、これザボスから届いてるよ!」

「じゃ、じゃじゃ…えっと…ザボスまでいくの?」

「あの、まずザボスについて説明してもらってもいいかな。」


 ザボスというのは、世界で最も農業が発展してる大国だ。彼に詳しく話すのは後として、依頼を確認する。


【依頼内容】

チェンジャーの隣国、ノーミンにある農村にて、“お化けかかし”の発生が相次いでいおり、その討伐、調査、および調査内容の報告を依頼。

村名:ヴァテンダ

村長:ヴァテンダ・パンプ・タンボ

調査内容の送付先:ザボス環境局

移動費・宿泊費:こちらの負担


【報酬】

銀貨シルヴァー20~30枚

調査内容によっては追加報酬あり。


「これが招待状か。」


 彼が取り出したいかにもな紙には、いくつかの文面がある。間違いない、招待状だ。


「ノーミン?首都なら列車で4時間とかだけど、ヴァテンダってどの辺?」

「ヴァテンダは…チェンジャーとプリスト、ノーミンの国境あたりだから…3時間もかからない、と思う。き、今日行く?これ?」


 居ない3人分ご飯を残し、食事を済ませる。

 そして、ちょうど歯を磨き終わったくらいで3人が帰ってきた。


「ザボスといえば、農業大国で有名な所だね…ノーミンは、たしかそこと交易が盛んな国かな。」

「全員で行った方が良さそうですね。」

「ツムグ~…いつ行く~?このあとすぐ行く~?あ、てかおはようのぎゅ~…」


 時計を見ると、そろそろ9時になりそうだ。列車が発車するのは、確か11時頃だった。今日行くとしても、十分時間はある。

 彼はそうだな、みんなは大丈夫かと聞いた。みんなが大丈夫と頷き、もちろんアタシも平気だよと頷くと、彼は早速準備に移ろうと言った。それぞれが自室に向かい、準備に取り掛かる。

 取りあえず3日分の着替えと矢のストックを用意して、荷物に詰める。他にも必要なものをいくつか見繕い、リュックを背負った。


「それじゃ、行くか。」


 アタシ達は、彼と一緒に駅へと向かっていった。

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