1‐7 魔術について 後編
ツムグがさきほどハチさんから受け取った書類ファイルを開く。
「さっき貰った魔物の報告書。今回はお化けかかしの討伐だから、アウモスの魔術でいい感じに使えるものがあるかもしれないと思ってな。」
そう彼は言う。魔術については確かにスペルとダッシュが詳しい。アタシはそもそも魔術を使わなくても大体どうにかなるから、そこまでしっかりと学んでいない。持ってる魔術も、いくつかの基礎術と簡単な自己強化の呪術、『スコープ』、『キュアー』、そして『ショット』、『クリムゾン』などの共鳴術くらいだ。数自体は多いが、おおよそが同系統だ。
「でさ。すっごい今更なんだけど……」
彼は少し言いづらそうにして、二人に問いかけた。
「魔術のなんちゃら系とか、なんちゃら術ってどういう風に決まんの?」
と。マジか。そこはアタシでもある程度知っているし、あとたぶん
「確かに……この分類はどういう風に決めているのかな。」
おい待て脳筋なんでだよ。お前今年で二十歳だろうが。ツムグは
ダッシュは荷物から本を一冊取り出し、それを見せながら説明する。
「え、えっと……簡単なとこから……魔術は基本、ごご、5種類に分けられる――」
何かを創り出す魔術の総称で、魔法術や召喚術が該当する。
生物の肉体や精神、魂に影響を出す魔術の総称で、要するに
一定の範囲に魔術を機能させ続ける魔術の総称。わかりやすいのは
魔術に干渉する魔術の総称。魔術を封じるものや、魔術の名前を書き換えるもの、魔術の性能を底上げさせるものなど、他と比べて少し定義が難しい。身魂魔術と混合されやすい。
物理的な影響を与える魔術で、これが生物だけに干渉するようになると
「――って感じ……そして、大きく分けられるもう一つの魔術……」
彼女は続けて、別のページを見せる。
「それは秘術……に、人間族以外が使う魔術で、4種類に細分化される。」
秘術:聖なる秘術
精霊種族のみが持つ魔術。『
この秘術はすべて
一説によると、
秘術:
悪魔種族や魔物、魔族のみが持つ魔術。『
一説によると、
「この二つは人間族が獲得できない秘術のこと。亜人みたいにその血を持っているような人間以外は、大体武器とかに魔術を宿して使う。そして――」
秘術:白魔術
人間族が獲得できるようになった聖なる秘術や、聖なる秘術を基に作られた魔術の総称。
『
秘術:黒魔術
人間族が獲得できるようになった邪なる秘術や、邪なる秘術を基に作られた魔術の総称。
ダッシュが創り出した『
「魔術の分類はこんな感じ……優先順位は秘術が最優先で、そ、そこから法治秘術とか、身魂白魔術・黒魔術とかで呼ばれることがある。」
ダッシュの説明を聞くと、彼は少し考えたあとにうん?と首をかしげた。
「待ってくれ。聖なる秘術と邪なる秘術って人間族は取れないのか?」
「う、うん……」
「俺スペルの秘術持ってるんだけど……」
彼はスペルが持つ『
彼の質問に、スペルが答えた。
「それは多分ね~、ツムグがウチと誓約を結んであるからだよ~」
「あぁ、あれか……」
「誓約……?」
「あっ、ダッシュに言ってないんだっけ?」
それは、アタシたちがスペルを仲間にした時の話だ。
この脳筋を仲間にするため、コイツが住んでいる森の方に行った際、そのさらに奥にある樹人族の村で彼女に会った。もともと彼女を誘う予定ではなかったものの、ツムグがなんやかんやで迷子になったときに彼女に攫われた。急展開過ぎると思うが、実際そうだったので割愛させてもらう。
で、ツムグを賭けてアタシ、テイン、脳筋がスペルと激闘を繰り広げたのちに、ツムグがどうにかスペルを説得した。
その時、とある魔術により契約を交わした。
術師と対象の間に縛りを科す法治秘術。
2人の間には、【一日一回ハグをする】という縛りがある。これを条件にすることで、スペルは仲間になることを承諾した。
(まぁもしツムグがそれを破ったら、スペルの許しが出るまでツムグは植物状態になるペナルティがあるんだけど。)
あの時はツムグがどうにか話し合いに持ち込んだからよかったものの、三対一とはいえ森では流石に分が悪すぎた。連携も取れていなかったので、全滅もあり得た。まぁテインは回復能力が高すぎたし、脳筋はほぼ無傷だったんだけど。
「あと、この葉っぱを食べさせたりもしたからね~」
自身の頭から生えている葉を指さす。
「だから秘術を獲得できたのか。」
「うん~、多分だけどね~」
「じゃあテインとダッシュの秘術が取れるのもそのおかげかな?」
「それは知らな~い……」
暫しの沈黙。集まる視線。
「えっ?」
「逆に聞きたいんだけどなんで取れんの~?」
もしかしなくても……本来取れないような秘術を獲得できるのって、ツムグのコミュ力がエグいってだけなんじゃ……
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