第12話 新居

「ついにか…」


 クローバーへ渡した6万。それを引いて彼らの手元には60万。仲間達にそれぞれ10万とするが、その前に渡すべきところがあった。


 図書館の司書、アプルが戸惑いながらも彼を見る。


「ほ、ホントにいいんですか?改修費としてこんな額…」

「えぇ。短い間でしたが、お世話になりました。」

「…寂しくなっちゃいますね。」

「たまにはここに来ますよ。」

「…えぇ、是非来てください!」

「はい。」


 これまでお世話になっていた図書館と、ついに別れる。それぞれの報酬から同額を出し、図書館の改修費とした。


「それじゃぁ、また…アプルさん。」

「はい、またきてくださいね!」


 少しあっさりしているようだが、またすぐに会えるだろうとお互い簡単に挨拶を済ませる。他の五人も同様に頭を下げる。


 森林公園から出て、しばらく歩く。クローバーが待っており、彼らを見ると手を振ってくる。

 彼女はツムグに書類と少し重い箱を手渡す。流れるように箱をハセラに渡す。書類の内一つは地図、一つは間取り。間取りの方は畳まれていて、開けようとすると彼女がそれを止める。


「着いてからのお楽しみね♪」


 というので、『収納インベントリ』の中にそれをしまう。

 馬車まで案内され、クローバーも合わせた全員が乗る。迎え会う形で座る席の、前方にはテイン、ハセラ、ダッシュが座る。

 四人は反対側に座っているのだが、右から順にクロル、スペル、クローバー、ツムグが座る。スペルが前のめりになり、腕を伸ばして彼と触れあおうとするが、クローバーがそれを阻む。クロルは何か言うわけでもなく、不満そうな表情で座っている。ツムグは黙って空を眺めている。

 馬車はしばらくすると止まる。


「え?なにここ湖?」


 馬車から降りると、街中にある大きな湖のそばにいた。彼らは余り来たことがない地区だったが、街並みは今までと同じだ。

 クローバーはツムグの両ほっぺにちゅっ、ちゅっと軽くをして、「それじゃあまた今度ね!」と言って馬車にのり去っていく。


「ね~ね~ツムグ~。どんな家にしてもらったの~?」

「とりあえず資金と、六人で暮らせる場所っては言ったんだよな。」


 【今回の費用割り当て】

 作成担当者:ツムグ、ダッシュ

 報酬総額:六十六万ラプテ

 刀借入費等:六万ラプテ

 図書館修繕費:十万ラプテ

 個人報酬:一人五万ラプテ

 住居購入費:二十万ラプテ


「予算は計二十万ラプテ。まぁ、一括払いだからってクローバーが少し下げてくれたんだけどな。」

「ふ~ん…」


 地図の通りに歩いていく。街から少し歩き、湖の方へ向かう。湖の内側にある小島へと続く道がある。その先には、ポツンと一つの大きな白い円形の屋敷があり、奥には灯台のようなものもある。それらは彼らを待っているようだ。

 二階建てで、石レンガを使った屋敷。大理石の柱や塀もあり、全体的にやはり白く美しい。

 小島は楕円形で、長直径は200mほど、短直径は100mほどだ。


「え、まさかあれ?」

「わぁ、結構広いね。」

「ダッシュ、間取りみーせてっ!」

「う、うん…」

「日当たりとかは…」

「良好かな~?あ、ツムグ~、部屋割りとかは~?」

「それも決めないとな。」


 歩きながら、地図に被せるように間取りを開く。

 備考欄にはいくつも文字がある。寝具が既にある部屋6つ、空き部屋2つ、暖炉つきリビング、台所は充実、風通し良好、日当たりよし、セキュリティーは十分、新築、広い土地、周囲は湖、二階建て、屋上とベランダあり、トイレと風呂は別、倉庫ありと、優良物件だといえる。

 ページを捲っていくと、いくつも零がある額が見える。


【不足分はツムグくんの働きね!いっぱい来てね!あ、この分は現金による返済は受け付けてないよ!】


 綺麗な字が踊っている。彼は静かな溜め息をつくも、仲間達の方を見る。


「ツムグと相部屋!でしょ!?」

「トレーニングルーム…いや、お風呂の近くの部屋がいいな…」

「あ、じゃあウチも相部屋~…庭には植物~!」

「日当たりがいい部屋は…」

(書庫もあるんだ…自室は書斎にもしたいな…あ、研究室とかは…)


 楽しそうな彼女達を見て、まぁいいかと微笑んだ。


 ここが、彼らの新しい家である。

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