プロローグ4 黄泉からの天使:フォーロ・テイン

 〝天使〟

 文字通り、天の使い。つまり、神の遣い。

 現世にいる人々が接触することはほとんどないであろう存在。

 もし接触があるとしたら、故意に呼び出すか、極めて稀有な出逢いか、あるいは死後…例えばそう、天国や天界、あるいは、異世界に転生する瞬間…


☆☆☆☆☆☆


 少年の後ろにいた少女が、スペルとクロルのもとに歩み寄る。


「テイン~、あとお願~い」

「はい!」


 と言ってハイタッチすると、スペルはツムグの方に近づいた。

 ボブカットの金髪はフワフワで、優しい印象を受ける。瞳はキラキラと輝く太陽のようで、実際そんな模様がある気もする。もちもちしてそうなほっぺた。表情は暖かく、柔らかい。スペルと同じくらいの背丈で、服装は白衣と緋袴の上から淡い黄色の外套を羽織り、グレーの朝靴を履いている。

(https://kakuyomu.jp/users/milklupia/news/16817330657851008811 )

 優しく、そっと掌を二人に向けながら唱える。手を添えた場所には、黄色い魔法陣が展開されている。


「『冷静クールダウン』っと。スペルは…『賢者ナレッジタイム』でしょうか?」

「え、そのスキルいろいろと大丈夫か?どこで獲得したの?」

「交番とか役所で無償配布されてますよ?」


 キョトンとした表情で答えたあと、あっと思い出したようにハセラのところにも歩いていく。この洞窟内を照らしている明りも、彼女によるものだ。

 先ほどの通路から、またもやグズグズとした足音と、がらがらとした呻き声が聞こえてくる。


「ゔぅっ……!!」


 アンデッドだ。しかし、先ほどの個体よりも、さらに損傷や腐敗が激しい。


「もう一体か…」

「撃っていい?」


 弓を構えて少年を見る。矢の鋒が向いているのはアンデッドではなく、純白の少年の顔だ。


「それで撃ったら俺死なない?」

「大丈夫!後でアタシにも撃つから!」

「私行きますね。すぅ…」


 両掌をアンデッドの方へ向ける。


「『浄化ヘブンズ』!」


 パッ!と地面に魔法陣が形成され、天に向かうように光の柱が現れる。その光に触れたアンデッドは、静かに呻き声を上げながら膝から崩れ落ちた。先ほど倒したアンデッドにも光が触れている。二体のアンデッドからは、炎のような透けたものが蒸気のように出ていき、肉体は仄かに光る粒子のようになりやがて消えていった。

 その光におびき寄せられたのか、さらに奥からアンデッドたちが歩いてくる。個体たちの損傷や腐敗に具合がまばらである。こういった場合、一度の『浄化ヘブンズ』で昇天させきれない恐れがある。


 彼女が天使だということを除けば、であるが。


「テイン。御呪バフ、頼めるかな?」

「えぇ、良いですよ。」


 右手が握っている剣に手を添え、「『魔除けの祈り』。」と唱える。すると剣は一瞬うっすらと光った。剣を構え直し、アンデッド達を見る。

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