プロローグ2 群青の剣豪:ハセラ

 〝ギフテッド〟

 通常の人よりも優れた技術や能力を有している者のことであり、また、言葉の通りの意味合いならば、何者かに『与えられた』存在である。

 何かの天才、特異体質。はたまた改造人間サイボーグか、あるいは人造人間ホムンクルスか…


☆☆☆☆☆☆


 青い髪はローポニーテールになるように結わえられ、静かに閉じられた口とすっとした鼻筋。スベスベの綺麗な肌、深い青の瞳と涙黒子なみだぼくろ。冷たい印象を与えるようにじっと睨み敵を見るも、同時に優しい印象を与え、クロルと同じくらいの背丈や、少しふっくらとした胸元も相まって大人びた雰囲気を醸し出している。

 腰には鞘が携えられており、左に一本、右には二本ある。

(https://kakuyomu.jp/users/milklupia/news/16817330657850610358 )


「さてと」


 さっきよりも一回りほど大きいクモが、威嚇するように鳴きながらハセラに向かい飛びかかる。

 彼女は浅く息を吸うと同時に、左腰の刀を右手で握る。


「〝一刀流・居合い〟、〝海閃かいせん〟」


 右上へと勢い良く、大きく抜く。

 抜刀の軌道上にいたクモは、空中で真っ二つとなった。

 彼女は右下に刀を構えたまま、右腕と両足に力を込める。


「『大攻水だいこうずい』」


 刃の付け根に、一瞬青い魔法陣が展開される。


「〝一刀流〟、〝咆哮衝ほこつき〟」


 右足で地面を蹴りつつ、上半身を捻るように動かす。最後の一匹の方に向かい刀で虚空を突くと、空気中の水分を伝って威力が流れていく。

 クモは振動を受け痙攣し、その場を動かないでいる。

 刀を左に下ろし、両手で握る。数歩近付いて


「えいや」


 と言いながら刀で弧を描き、クモと巣を両断する。


「ごめんなさいっ……」

「ちょっとメンヘラ、早く戻ってきてもらえるかな。」

「あんっ!?んだとコラ脳筋ぼっち!」

「はい?」

「おん?」


 涙目で魘されていたクロルは立ち上がり、ハセラを睨み付ける。

 一方ハセラは「脳筋ぼっち」という言葉に反応して、大きく目を開きながら微笑みを返す。先ほどまでの表情や雰囲気はどこへやら、子どものような口論を始める。

 二人の横――ハセラ側にある通路の奥から、呻き声が聞こえてくる。


「ゔぅ……!」


 皮膚や肉が爛れ、所々に内蔵や骨が露になっている。ボロボロになった衣服に身を包み、血や泥にまみれている。

 そんな風貌の者がぎこちない動きで、ゆっくりと歩いてくる。


「アンデッドだな。」


 純白の少年はその個体を視認すると、二人に指示を出そうと目を向ける……だがしかし、二人とも口論に熱中して冷静ではない。


「う゛ぅ……」

「こんのっ!剣士のくせして人との距離感掴めない奴が何言ってんの!」

「君こそ狙撃手だというのに、やたらと近いじゃないか」

「がぁ…がぁぅ…」

「アタシは全距離対応だから関係ないっつーの」

「僕は基本的に相手とある程度の距離を保っていたいんだよ」

「が、がぁ……がぁ!」


 呻き声を上げるも、一切相手にされないアンデッド。あまりにも反応がないため、落ちているガラス片で自分が実はゴーストなんじゃないかと確認し始めている。


「ウチに任せて~」


 頭から芽が生えた少女が、少年の背中から降りて前に出る。

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