プロローグ1 深紅の狙撃手:ヘルム・ヴァン・クロニクル

 〝人間〟

 生まれつき魔力や魔法を練る感覚を有しておらず、かといってなにか特長的な能力を有している訳でもない。

 しかし代わりに、他個体との交流により文明を築き、他種族と肩を並べるほどに発展した存在。

 種族ではないものの、凡才、秀才、そして天才と別られることもある。


☆☆☆☆☆☆


「あ!クモのモンスター!」


 純白の少年の左後ろを歩いていたメンバーが、前方にある壁の上側を左手の人差し指で差す。

 赤みを帯びた茶髪のポニーテール。真っ赤な瞳。目元には少し隈がある。肌は小麦色よりも白く、ピンクライトくらいの色をしている。背丈は少年よりも高く、スレンダーな体型をしている。

 ショルダーバックの付け方で茶色の矢鞘を背負い、右手には弦が1mくらいある茶色の弓を握っている。

(https://kakuyomu.jp/users/milklupia/news/16817330657850512305 )


、頼んでいいか?」

「うん、任せて。」


 彼女の指差す方向には、掌よりも大きいくらいの胴体を持つクモが3匹と、無数の巣や糸の集合物がある。クモは青黒い体に、うっすらと毛が生えてして、手足は指3本くらいの太さと30cmほどの長さをしている。

 1匹は壁に張り付き、2匹は天井からぶら下がっている。クモ達も彼らに気づき、ぶら下がっている2匹は手足を広げながら、シャー、シャーと鳴き威嚇している。

 クロルは弓に矢を掛け、グイッと弦を引く。


「『ショット』ッ!」


 矢は放たれ、ぶら下がっていた一匹のクモの頭に命中する。撃ち抜かれたクモは、鋭い痛みを受けたと同時に視界が回転する。は10秒ほどじたばたしながら徐々に下に落ちていき、やがて動かなくなった。


「全部アタシに任せてね!」


 と、もう一度矢を放つ。しかし、クモは矢を素早く避ける。

 糸疣から糸を出し、手足で纏めたり編んだりしながら壁や天井にくっつけていく。


「ごめんっ!次は当てる!」

「いや、一回ま」

「『ショット』!」


 矢は再びクモに避けられ、糸で作られたものに当たる。バヨンッ!と弾き返され、純白の少年の方へと向かっていく。


「うぉっ」

「おっと」


 蒼い髪の仲間が剣を抜き、飛んできた矢を防いだ。

 クロルは徐々に呼吸を乱し、汗を流し始める。


「あっ、ごっ、ごめっ、ごめんっ!はっ、はぁ!待って!すぐ、撃つ、やる、からっ!はぁ!はぁ!ふぅ、ふぅ…!」

「あーヤバいヤバい。」

「大丈夫、次は、次は当てるからっ!当てる……待って……ごめんなさい……!」


 手足を震わせながらも、弓の弦に矢を掛ける。しかし、腕に力を込められないのかなかなか弦を引かない。


「僕が行こうか?」


 少年が頷くと、彼女はクロルの横を通り前に出た。震えるクロルの手を下ろさせ、「はい交代ね。」と言って互いの掌にパンっとタッチした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る