第11話 事後処理


 魔王幹部、【騎屍ナイトゾンビ】アウモスを討伐した…といっていいのかわからないが、魔王軍侵攻の阻止に貢献したということで政府およびギルドより特別報酬が僕達に贈与されることとなった。


 さてそれはさておき現在。

 ツムグの写真を売ったダッシュが、彼に尋問しています。

 目の前に正座するダッシュ。彼はその後ろに座り、耳元に顔を寄せる。


「何あれ新手のSM?」

「多分。」

「へ~…いいな~」


 あぁ、ツッコミ不在か。


「違うと思うよ。」


 彼の写真を何かしらの情報と引き換えに、交換条件として渡したそうだ。おそらくダイヤ…いや、彼女のリーダーかもしれない。まぁともかくとして。


「で、なんの情報?」

「え、えっと、えと…だ、ダンジョン…の…」


 ツムグが珍しく威圧的だ。

 ダッシュは緊張感で震えているのか、それともくすぐったさか、はたまた両方か。


「でん、伝承、された、されてきっ、たた…伝説のあい、てむがある…とこ…」

「ほう。」

「剣とかっ、遠距離武器とか…あった…から…その、み、んなに…あげ、れる…かなって…」

「…」 

「か、勝手、に…写真…売って……ご、ごめん、なさい…」


 目を合わせず座ったままだが、震えた声で謝罪する。

 

「ん…次からは俺にいうように。好きなだけくれてやる。」

「えっ…」

「ん?どした。」

「怒って、ない…の?」

「は?怒ってるわ。」


 売った相手によってはもう泣くわ、と続ける。


「でもな、仲間のためにやろうとしたんなら、自分の写真売られようが俺は本望だ。」


 嘘でも出任せでもない、ダッシュの本心の言葉なんだ。彼はそれを受け入れる。

 が、壁の方に歩いていき、両手で頭を掴みなんだか悶えている。


「さ、ダッシュ!立って立って!」

「今回の書類、結構あるのでお願いします!」

「あっ、え、えっと…」

「ん~…ぎゅ~したあげよっか~?」

「い、いい!いい、いや、あっ…うぅ…は、恥ずかしっ、待って…」


 スペルがむぎゅーと優しく抱き締める。ダッシュは顔をうっすら赤らめジタバタするが、抵抗に意味はなくぎゅーっとされる。


「さて、話は終わったみたいだから」

「次はハセラな。」

「…え。」

「借り物、砕き、やがったろ。」


 数秒の沈黙。彼の方から振り返り、扉へ駆け抜ける。


「待てぇい!!」


 その後、僕のことを(スペルが)取っ捕まえ、ダッシュと共に広場に向かった。

 スペル、テイン、メンヘラは図書館にて待機だ。


☆☆☆☆☆☆


 受付の女性が、硬貨が乗ったトレーを自分達に向ける。


「はい、こちら政府からの報酬ですね!白貨プラチナムが6枚と金貨ゴォルデンが5枚、戦闘記録の報酬が10,000ラプテです!他にもいくつか届いてますので…」

「はい…ん?白貨プラチナム?」


 銅貨ヴロンズが100ラプテ、銀貨シルヴァーが1,000ラプテ、金貨ゴォルデンが1万ラプテである。つまり…


「…え?10万?ってことは…」

「10万が6…え?」


 受付の女性はハキハキと頷いた。


 さて。テーブルには10枚の紙幣、5枚の金の硬貨、そしてすごく存在感がある6枚の白い硬貨。

 流れる沈黙。それを破るのは、当然彼。


「え、どうする?」

「いや、うん…その…うん……」

白貨プラチナム…硬貨でこの額見るの…久しぶり……」

「僕も……」


 彼は、えっと驚き、見たことあるんだというような目を向ける。


「こんなにまとまって入るとな~…」


 ハセラがはっと思い付いたように口を開く。


「あ、お金が入ったってことは、図書館の司書さんに恩返しできるんじゃないかな?」

「あっ、そうだな。」

「それに僕たち用の家を買うのはどうかな?そろそろ全員が纏まれる拠点を…」


 確かにそれはいいかもしれない。自分もいい加減、実家を出た方が良いだろう。


「ただ、それよりも先に…」


 自分とハセラはキョトンと首をかしげる。彼はそのまま左の席を見る。


「~♪」


 となりに、ニコニコこちらを見つめている女性がいる。

 名をクローバー。ダイヤ達のリーダーであり、おそらくハセラが砕いたあの刀を貸してくれた人。


「こんにちは、ツムグくん♪」

「おう。」


 彼女はそのまま此方を見る。


「ダッシュさん!この前は写真ありがとうございました!」


 二人が勢いよく自分を見る。ヤバイ。ツムグが凄い顔してる。

 彼女は構わず話を続ける。


「貸した剣の手続き、しよっか!」


 次はハセラがそっぽを向く。

 自分もハセラも申し訳なさで居たたまれなくなり、今すぐにでも消えたい。本当にごめんツムグ。


 彼女はそのまま自分達を外に連れる。一台の馬車があり、自分達を迎える。

 向かい合う形で座る座席で、前側の席に自分とハセラが座る。一方で、後側の席に彼とクローバーが座る。彼女はニコニコして、やけに彼に詰め寄る。なんかクロルみたい。

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