急展開
「ねぇ!勉強会しようよ!」
「なんだ藪から棒に」
談笑の最中、香がそう提案してくる。
学校では香、俺、透でお昼を食べることがほぼ日常になりつつあった。
「だってさ、テストが一週間後にあって、こんな賢い子が友達なんだよ?教えてもらわなきゃ損じゃん!海斗も教えてもらいたいでしょ?」
こいつは俺が勉強が出来ることを知らないのだろう。 俺にもあるメリットを主張し、議論を有利に進めようとする。
「あのねぇ香。 海斗は前回の学年一位よ?新入生代表も、本来は海斗だったし......」
「え!?海斗って透より賢いの?」
「順位だけを見ればそうなるな。」
「なんで皆勉強できんの~?羨ましい~」
机に突っ伏して不平不満を訴える。
「私は普段から予習復習を欠かしてないからだけれど......海斗ってそんなに勉強をしているイメージないわ。なんで私に勝ててるのかしら。」
「あ~......一時期クイズ形式のゲームにはまってだな......全分野を対策するうちに高校の範囲まで終えていたらしい。」
「なにそれ......」
透が呆れたような顔で見つめてくる。
「だからこの前海斗の部屋掃除した時、ろくな勉強道具もなかったのね......」
「え?」
香が透の言葉に反応する。
「透、海斗の家に行ったの!?」
「え、えぇ。まぁね」
透が勝ち誇ったように言う。 大方、ラクのファンとして先に家に上がった事が嬉しかったのだろう。
「海斗って一人暮らし?」
「そうだぞ」
「じゃあさ、海斗の家で勉強会しない?」
香がそう提案する。
「まぁ、構わないが......」
「やった! 今日の放課後に行ってもいい?」
「いいぞ」
そんな会話を交わしていると透が手で輪っかを作り、俺の耳元に寄ってきた。
「そんなに簡単に女の子を家に入れちゃうんだ......」
からかうように言ってくる。
「あのなぁ.......俺をそんな節操のない奴みたいな言い方をやめてくれ......」
いつもと違う、いたずらっ子のように笑った顔は、透が俺に心を開いていることを示していた。
「おっじゃましま~す」
「どうぞ」
放課後、俺たち三人は勉強会のために俺のマンションに集合していた。
「広いね......さすがラク様!みたいな?」
「そりゃどーも」
リビングにある大きめの机の周りを囲むように二人が座る。
そこに透がお茶を持ってくる。
「どうぞ」
「あれ?透がお茶出すんだ」
そういえば、こいつに家事手伝い関連の話はしていなかったな......へんな勘違いを生むのも面倒だし、隠しておくか......
「あぁ、さっき頼んでおいた。」
「そっか」
そんな会話をした後、勉強会が開始する。
「ねぇ、これってどっちに聞けばいいの?」
「分からない問題があるのか?まぁ......俺でいいだろ、別に俺はテスト対策をしなければいけないわけじゃないからな」
透に視線をやると、香の声が聞こえないほど集中しているようだ。
「じゃあここなんだけどさ......」
そういって分からない問題を見せようとしてくる。
「近くないか......?」
普段人を入れないであろうパーソナルスペースに女子を入れている。意識しない男はいないだろう。 女子特有のいい香りが鼻腔をくすぐる。 しかも、同年代の女子と比べると明らかに大きいその胸が視線を落とさずとも俺の腕を圧迫していることがわかった。
「そう?まぁいいじゃん」
「いいってなぁ......そんなことしてると、男子に『俺のこと好きなのかも?』って勘違いさせちゃうぞ?」
「普通の男子にはしないよ......海斗にだからしてるんだよ?」
こういうセリフも勘違いしてしまう。 香は何にも考えず言っているんだろうが......
「それに勘違いじゃないよ......」
頬を薄く赤らめ、烏羽色の瞳が、俺の目線を捉えて離さなかった。
「私、海斗の事......好き......だし......」
コトッ。
握力を無くした透の右手から、シャープペンシルが零れ落ちる。
「は?」
思わず裏返った間抜けな俺の声が、綺麗になった広い部屋に響き渡る。
「ど......どういうこと?香」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で透が聞く。
「この前、一緒に出掛けた日にいろいろあって......ね?ラク様の事は前から好きだったんだけど......海斗のことが好きになっちゃった......」
手の指と指を合わせ、もじもじしながら答える。
「透も海斗の事......好きだった?」
「す、好きじゃないわよ!私が好きなのはラク様だし......」
そう言って透は否定する。
「よかったぁ.......透と奪い合い...?みたいなことしたくないし......あっ!でも付き合いたいって好きじゃなくて、推し?みたいなもので......これから好きになってもらう努力しようと思ってて.......その許可?みたいな?」
自分が大胆な行動をしたことに気が付いた香は慌てて弁解する。
俺は呼吸を整え、自分の考えを伝える。
「そう言ってもらえて嬉しい。その......恋とかしたことないから、俺をメロメロにさせてくれ」
すごく恥ずかしいセリフを言った気がするが......まぁ当たり障りのない回答だろう。
「......うん......!結構大胆にいってもいい?こ、こんな感じで」
そう言って、腕を組み、豊満な香のソレを押し当ててくる。
「俺、そういうのマジで免疫無いから......」
「えへへ......///」
俺に有効な攻撃が見つかったからなのか、少し嬉しそうだ。
「勉・強・会。よね?」
すこし甘い雰囲気を出していた俺たちに透が渇を入れる。
「そうだな、悪い。」
「ご、ごめん」
距離を取った俺たちはもう一度勉強に戻る。
それからは特に香が大胆な行動を取ることは無く、解散する。
「ふぅ~......なんか大変な事になったな......」
二人を見送った後に玄関の鍵を閉めながら、そんな事を呟く。
「風呂入ろ......」
リビングに来ていた服を放り、お風呂へと向かう前に水を飲もうとキッチンへ向かう。
カチャ......
そんな時、玄関から鍵が開く音がした。
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この作品が初作なので、ヒロインとの関係とか、可愛く書けていないと思いますが、温かい目で見ていただけると幸いです!
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