グイグイ来るタイプも好きだったりする


「おはよう。 透」


「っ///...」


「どうかしたか?」


「何でもないわよ!お・は・よ!黒崎君」


食い気味でそう挨拶を返される。


そんな何気ない朝の一幕だが、今まで友達などというものとは無縁だった俺は

何とも言えない喜びを感じていた。


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朝のホームルームが終わると同時に、白井がこちらへと歩いてくる。


「今日も一緒に帰るから、校門で待っといて。 あと、学校では透っていうのやめたほうがいいかも...さっきも友達にどういう関係って聞かれたし」


「あ~...それは悪いことをした。 気を付けるよ」


「なんで謝るのよ...別に、二人っきりだったらいつでも透って呼んでいいから...」


「お、おう」


その時、校内放送が流れる


『一年B組 白井 透さん。至急、職員室まで』


「あ~たぶんクラス関連のことね。 じゃあ、放課後のこと忘れないでね?黒崎君」


「おう、わかった」


そういって彼女は足早に教室をでていく。


(クラス委員も案外大変なんだな...)


そんな事を考えていると一人の女の子に声を掛けられる。


「おっは~黒崎君♪」


その子には見覚えがあった。


いつも透と話しているクラスの中心人物だ。


クールなイメージの透と違って明るく、活発なイメージがある。


(たしか...)「花咲さん?」


「え~私の名前知っててくれたんだ!なんかうれしいかも」


花咲 香。(かざき かおる)透と同じ仲のいいグループにいて、クラスの中心人物だ。


クールなイメージの透と違って明るく、活発なイメージがある。


「っていうかさ...ぶっちゃけ、黒崎君は透とどんな関係なの?」


「...えっ!?」


「いや、なんかさっきも透って下の名前で呼んでたし、黒崎君は気づいてないかもしれないけどさ、透のやつ、ずっとちらちらみてるよ?」


「あ~多分それは...」


それは...俺が”ラク”だから...


「お、俺が授業しっかり受けてるか気にしてくれてるんじゃないかな!クラス委員長として!」


「あ~そういうことか~... あーあ、透に春が来たかと思ったんだけどな~」


「あはは...白井さんが俺みたいな冴えない奴とあるわけないでしょ?」


「いや、私の見立てによると、しっかりセットすればいい線行くと思うよ?黒崎君も」


「あはは...ありがとう。 お世辞でもうれしいよ」


「いやいや!お世辞じゃないよ!私の家が美容室やっててさ、なんとなーく分かるんだよねぇ雰囲気みたいなのが」


「例えばねぇ...まず髪をこーんな感じであげて...」


そう言ったところで花咲さんの動きがフリーズする。


「あれ?花咲さん?どうかした?」


「あっはは...これは想像以上かも...」


「なにが想像以上なの?」


「黒崎君...ワンちゃんあるね!!」


理解が追い付かない。


「ま、とりあえず今度うちの家に来て!私が切ればいい感じになると思う!」


「へぇ~花咲さんもそういうこと出来るんだ」


「親には及ばないけど、そこそこの腕前はあると自負してるよ!」


(どこかのタイミングで髪は切りたかったし助かるな...)


「じゃあお願いしてもいいか?」


「もちろん! じゃあ黒崎君、LION教えて?その方が日程とか決めやすいし!」


「あぁ、わかった。」


なんとか冷静を保ったが、二人目の友達、しかも女子ということもあって俺の心はおどっていた。


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時間はあっという間に放課後。


俺は約束どうり校門の前で透を待っていた。


「お待たせ!まった?」


「あぁ、それなりに」


「む、そこは「今来たとこ」とか言って気を使うもんでしょ?」


「そうなのか?次から気を付ける」


「友達を作るのには気を遣うのは必須スキルよ?そんなんじゃ私以外とは話せそうにないわね」


「いや、できたぞ?友達」


「え?いつの間に?」


「今日、朝にお前が職員室に行った直後に花咲さんとLIONを交換した」


「ふーん...そーなんだ~?」


「...なんか怒ってる?」


「別に~?黒崎君は声が出せるなら直ぐに女の子と仲良くなるんだとか思ってません」


「人聞きの悪いことを言うなよ...」


まずいこのままなんか不機嫌で、俺がラクだとバラされることは避けなければ...


「で、でも気兼ねなく話せるのは白井さんかな~...とか」


流石に気持ち悪かったか...?


「そ、そうよね!黒崎君は仕方ないな~もう!大丈夫!私がしっかり話せるようにサポートしてあげるから!!」


なんとか機嫌をとれたようだ


「じゃあ、明日は土曜だから...また月曜日ね!黒崎君バイバイ!」


「おう、じゃあな」


白井と解散した後、花咲さんからメッセージが来ていたことに気づく。


『うちで髪切る件なんだけど、明日の土曜でも行けるかな??急でごめんね!><』


(明日は特に用事はないな...)


OKの返答をしてメッセージアプリを閉じる




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その日の夜、俺はいつものように配信をしていた。


「あ、そうそう。 リスナーに聞きたいんだけどさ、美容室とかで一対一になった時ってどんなこと話せばいいの?相手は若い女性な」


『下着の色を聞く』 『彼氏持ちか確認する』


「あのなぁ...がちで気まずいの嫌だから教えてくれ!たのむ!」


『腕前をほめる』


「それいいな!使うわ」


『女性なら服とかの容姿褒めろってばあちゃん言ってた』


「なるほど...そういうのも大事か...」


『そのままデートに誘う』


「会話に困った時のジョークとしてはアリ...なのか?」


「よし!何となくいける気がしてきた!ありがとなリスナー!」


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配信が終わった後、俺はベッドで明日のことを考えていた。


正直、うまく喋る事が出来るか不安だが...そこはリスナーを信じよう。


「学校で話せるくらい仲良くなれるといいな...」


そんな願望を呟きながら、俺は瞼を閉じた。











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