協力者

翌日、俺は起床してすぐに昨夜から確認していないメッセージアプリを確認すると、一件の通知がきていた。


【今日の放課後に話あるから屋上でまっといて】


「ま、そりゃそうだよなぁ...」


俺は覚悟を決め、用意を済ましていつもの通学路を歩き始める。


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教室に入る前、俺は少しためらった。


白井さんがみんなに話してしまっているかもしれない。


そうなれば俺はもう”ラク”としてやっていけない。


意を決してドアを開ける。


いつもと変わらない風景。


誰も俺を見ていない。


(そう...だよな...誰も俺なんて見ていない。誰も俺に興味がない。)


その時、教室内で唯一白井さんだけが俺を見つけ、目が合った。


白井さんと目が合った瞬間、俺は逃げられなかった。


海のように深い蒼色の瞳が俺をとらえて離さなかった。


「...わぁ!?」


白井さんは驚いたような声を上げ、目をそらす。


『どしたの透、なんか朝からぼーっとしてない?』


『それ私も思ってた!っていうかなんか耳赤くない?』


「いや!なんでもない!なんでもない!ホントに何でもないから!」


白井さんは何やら気分が悪いようだ。


そりゃこんな奴と朝から目があえば憂鬱にもなるよなぁ。


そう思いながら俺は席について放課後を待つ。


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帰りのホームルームが終わり、俺は意を決して屋上へと向かって階段を上っていた。


(そういえばこの辺初めて来たなぁ)


まわりに生徒はおらず、人に見られることもなく屋上へと着いた。


「きたわね」


白井さんは俺より先に屋上についていた。


「単刀直入に聞くわ。 黒崎君、あなたラク様よね?」


...ここまで確信を持っているなら言い逃れはできない。


そういえば配信活動を始めてから親族以外と話すのは初めてかな...


「...そうだ」


「はぅっ」


「え?」


何か聞こえた気がしたが...


「み...耳が...」


「耳?耳がどうしたんだ?」


「な、何でもないわよ!」


「そ、そうか。 でさ、白井さん...」


「透!」


「え?」


「名前よ名前!透でいいわよ。 っていうか透にしなさい」


「じゃ、じゃあ透さんさ...」


「呼び捨て!」


すごい圧を感じる...。


「じゃあ...透。」


「あぅぅ...///」


「大丈夫か?」


「み、耳が...」


「耳?耳が痛いのか?」


「しあわせぇ...///」


あ、そうだった


「こいつ、俺のファンだった」


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「はぁ...落ち着いた。もう慣れたわ!」


「じゃ、じゃあさ透」


「はうっ」


「...大丈夫か?」


「...ぁ...あんまりなめないで!いけるわよ!」


「...わかった。で、頼みなんだが...」


「わかってる。どうせ、黒崎君がラク様だってこと言わないでってことよね?」


「そ、そうだけど...」


「心配しなくても言わないわよ」


「あ、あぁ。 助かる。」


「それに...せっかくラク様と二人の秘密ができたってのにまわりに言いたくないし...」


「なんか言ったか?」


「な、なにもないわよっ!」


「っていうか黒崎君、喋れるんだ」


「?そりゃあ喋れるだろ、一応人間だぞ?」


「それは分かってる。 私が行ってるのは学校で一言も喋んないよねって話」


「あぁ、それは声でばれたくないから喋ってないだけだ」


「え?じゃあ廊下とか人の多い場所で友達と話す時はどうしてるの?」


「話さない。 そもそも友達がいない。」


「え」


「なんか...ごめんね?」


「やめてくれ謝るな!なんか自分が可哀そうになる!」


「っていうか声、変えたら?声マネみたいなかんじで」


「そんな簡単に言うなよ...声の変え方なんてわかんねーよ」


「いつもは低めだから...高めにしてみたら?裏声手前ぐらい」


「ムズイな...ん”っん”ん”...アー」


<こんな感じ?>


「黒崎君、あなた...」


「すまん、変だったか?」


「あなた本当に声いいのね」


「いつもとは違って高い分、幼さが出てて凶悪ね...」


「まぁ、ラク様とはわからないんじゃないかしら?」


<これで声が出せても、もう新学期始まって結構経ってるぞ?友達なんかできねーよ>


「大丈夫!それは私にまかせて!見た目どうりに友達は多いほうだから」


「自覚あって結構なことです」


「それじゃ、帰りましょう」


「おう、じゃあな」


「え?確か家近いわよね?コンビニで言ってたし」


「え?一緒に帰んの?」


「なに?私と帰るのがなにか不満?」


「いえ、全く」


「そ、なら行きましょう」


一瞬すごい圧があった気がするが、友達と下校するというシチュエーションに俺は心を躍らせていた。


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「なんか...黒崎君って地味よね」


下校中、白井がそんなことを言ってきた


「まぁ、バーチャルだしな。 その辺は気を使わなくて楽だ」


「それにしてもじゃない?前髪とか長すぎない?前見えてるの?」


「見えてなきゃ歩けてないよ。 ま、最近忙しくて切れてないな...」


「忙しくてもさ、髪セットして前髪あげてみたら?こんな感じで」


白井が俺の顔に向かって白く、細い腕を伸ばしてくる。


その瞬間俺の視界が広がる


「んー.......ん?///え?///」


「どうした?なんか俺の顔についてるか?」


「いっ、いや?!なんでもない、ほんと!何でもないからッ!」


「顔、赤いぞ?熱でもあんのか?」


(そういえば朝から体調が悪そうだったな...熱があるのか?)


そう思い俺は額を合わせようと前髪を上げ、顔を近づける。


「ん”~~!!ち、近い!///」


「へ、平気だから!」


「でも、耳まで真っ赤だぞ?熱があるんじゃないのか?」


「ないない!全っ然ない!」


「そ、そうか」


あまりの迫力に押し切られてしまった。


「じゃ、じゃあ私ここだから!また明日!」


返事をする暇もなく白井は行ってしまう。


「なんだったんだ...?」


疑問に思いながら俺は自宅へと帰る。


「明日も学校、楽しみだな...」


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バタンッ


勢いよく家のドアを閉め、その場に座り込む。


「な...なにあれぇ...」


色白の肌に太陽のように赤い、何もかも見透かしそうな瞳。


彼が髪を切っていたら学年で一番目立っていただろう。


「明日...黒崎君のこと見れないよぉ...」










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