人気Vtuberの俺ですが、ひょんなことから身バレしてしまいました。

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始まり

 最初は軽い興味だった。


 一人でゲームするのにも飽きたし、最近流行りのVtuberという形でゲームとか、雑談とかを小さいコミュニティの中でできればいいと思っていた。


 しかし、活動を続けていくうちに少しづつファンは増え、活動期間が半年も超えないうちに登録者100万人越えのイケボ系Vtuberとしてメディアに取り上げられるまでになってしまった。


「はぁ~...誰もこんな見るからに陰キャな奴が大人気Vtuber”ラク”だと思わないよな~...」


 街中の巨大な電光掲示板に映る自分のアバターを見て思わず呟いた。


『ねぇ!今ラク様の声しなかった?!』


(まずい!ばれる!)


『電光掲示板からでしょ~?』


『あぁ~そっか!』


 とまぁ、声だけでバレそうなことが多々ある。


 でも絶対にバレてはいけない。 


 なぜなら”ラク”はもはや国民の憧れの対象のアイドルなのだから。


 その夢を壊すわけにはいかない。


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 俺、黒崎 海斗(くろさき かいと)は私立北神きたがみ高校に通う高校一年生だ。


 

 入学式が終わり三か月がたとうとしている中、俺は声でばれるのを警戒し、まともにクラスメイトに話しかけることもできず友達の一人もできないでいた。


「ちょっと、黒崎君?三者面談の日程希望の紙、まだ出てないの君だけなんだけど?」


 こいつの名前は白井 透(しらい とおる)クラスの委員長、新入生代表、しかも超絶美少女とてんこ盛りのステータスの女の子だ。


 俺は教室で声も出すわけにもいかないので無言でプリントを差し出す。


「なんだ、持ってるじゃない。 次からは早く出してよね」


 俺は軽く会釈し会話を終わらせる。 流石に自意識過剰と思われるかも知れないが、今も教室では昨夜の”ラク”の放送の話で持ち切りだ。 


(俺はいつになったら友達ができるんだ...)


 放課後、俺は一人で家路につく。


 家は配信に家族の声が乗るといけないので高校入学と同時に一人暮らしになった。


 妹は少し寂しそうだったが、親は応援してくれて月に一度様子を見に来てくれるので生活の心配はなく、気ままな配信ライフを送れていた。


 確かに、現実世界で不自由なこともあるけれど、俺は視聴者と気さくに関われるこの時間が心の底から好きだった。


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 「おーっと、もうこんな時間か...じゃ、配信終わるね。今日もみんなありがとう。明日もがんばってこ~」 


 そう言って俺は配信を閉じる。


「もう11時前か~...寝る気分じゃないし、コンビニでスイーツでも買ってこよっかな。 やっぱ配信終わりにはコンビニでスイーツだよなぁ」


 そういって住んでるマンションのすぐ近くにあるコンビニへと移動する。


 夜遅いということもあって人気が少ない店内には見覚えのある美少女がいた。 


「あれ?黒崎君?」


 白井だった。俺は軽く会釈をする。


「家、近くなの?」


 俺は無言で頷き、最近お気に入りのスイーツを手に取り、足早に退散しようとした。


「あれ?なんか急いでる?って黒崎君、そのスイーツ...もしかしてあなたもラク様のファンなの!?」


 突然食い気味にそう聞かれたので俺は思わずうなずいてしまう。


 そうか、そういえば俺はさっき配信で最近お気に入りのスイーツの話をしていたっけ...というか、白井は俺のファンだったのか...


「やっぱり!配信直後に買いに来るなんて黒崎君、もしかして相当ファンね?っていうかその靴、ラク様のグッズのやつじゃない!?抽選で倍率1000倍ともいわれてたのによく持ってるわね!いいなぁ~」


 本人なのだから抽選とかいう話ではないのだが...


「ここまでの熱心なファンは周りにいないからなんだか嬉しいわ!そうだ!LIMEやってる?友達になりましょ!」


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「じゃあね!黒崎くん!」 勢いに押され、連絡先を交換してしまった...


 しかし初めて親族以外の連絡先が画面に表示されているのを見て、なんだか俺はうれしくなってしまっていた。 


 それから数日間学校でのかかわりは少ないものの、配信終わりにその日の配信の感想などをメッセージアプリを通して言い合う中になっていた。


 ファンの感想を直接聞くのは聞くのは少し照れ臭かったけど、参考にもなって活力にもなった。


 いつもどうり配信をしていると一つのコメントが目に入る。


『いつも配信お疲れ様です!日々の活力にしてます!よければ「大好きだよ、トール」っていってもらえませんか』


 ファンサービスのつもりで「愛してるぜ、トール。応援ありがとうな!」と発した。


 するとスマホが大音量で鳴り出す。


 白井さんからのメッセージの通知だった。


 【やばい!】

【まじやばい!】

【コメント読まれて】

【愛してるって】

【言われちゃったぁぁあぁぁぁ!!!!れ!】というメッセージが何十件も。


(あれ白井さんだったのか!トールって...透って意味か!)


 とつぜん鳴る連続通知にコメント欄も混乱している。


俺は『ごめん!また後で!』と打とうとして指を走らせる。


その瞬間着信が来た。


白井さんからだ。


メッセージを打っている最中だったので思わず指が通話のところにあたってしまう。


「ねぇねぇ!くろs....」


俺は焦って通話を切る。


「ごめん!親がたまには親戚が来てるから家に来て話そうってうるさくて!悪いけど今日の配信はここで終わりね!明日は長めに配信するから!」


無理があったかと思ったが、コメント欄は


【了解!】【家族大事だもんね!】【おつ!】


など気にしてはいない様子だった。


それに安心して俺は配信を終了する。


「ヤバイ...白井さんの声載っただろうし、白井さんにバレてる....よな、流石に...」


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「ねぇねぇ!黒崎君!」


そういうと電話は切れてしまう。


「あれ?切れた...立て込んでたのかな?せっかく喜びを共有しようと思ってたのに...」


『ねぇねぇ!くろs...ごめん!家族が.........』


「あれ?今ラク様の配信から私の声が聞こえたような....」





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