第328話 猫の日の、猫も杓子

2月22日は、猫の日。

猫も杓子も記念日の、それもずばりの猫の日。


ひとつ成功例のようなものができてそれに目をつけた自由の森。

猫も杓子も、定時制高校を利用させることに。

かの少年が、進学校の受験に失敗したのがきっかけ。

ただし、彼の例が他の児童の参考にならないことは明白だった。


この期に及んでかの理想に泥酔していた児童指導員は、

仲間ごっこに一縷の望みを持つ言動を繰り返していた。

群れさせることにおいては天下一品のこの自由の森。

そんな手法など、既に破綻に瀕していることに、

酔いの冷めない彼は、まだ気づいてもいなかった。


家族の家庭の学校の、そんな言葉をまぶしまくる。

御自身、結婚して子どもも生まれ、幸せの絶頂?

我が子がかわいいの、家庭や家族が素晴らしいの。

どうせなら、みんなと一緒に卒業を目指したらどうの。


そんな言動は、前園長や老保母のいた時代ならまだ通用したか知らんが、

かの青年の生きていく世界では、通用しないのだ。

彼だけでなく、時代も、その方向に動いていた。


そのことに彼が心底気付いたのは、かの青年が大学を卒業する頃。

実は彼、うすうす気づいてはいたみたいだが、もう止まらない。

テメエのきれいごとなど、彼の人生においては業務妨害にしかならない。

そうどやしつけられた方が、彼も救われたかもしれぬ。

だが、かの青年は、あえてそれはしなかった。

下らない無駄な争いをするヒマなど、かの青年にはなかったから。


猫も杓子もの手法は、その後もぼちぼち通用したようであるが、

あの対応は、理想酔いの覚めた彼には生涯の十字架となったであろう。


三流教師も見抜けぬ無能!


総括されるのには、その後数年かかった。

かの青年への言い訳はもう不能。免罪符も使えぬ。

静かに黙って、人知れず、涙を流すしかなかったのでしょう。


かくして、覆水は盆に返ることなし。

猫も杓子もは、彼には通用しなかった。

以上

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